東京ステイ総集編「東京、日常の巡礼」
2月23日(土)、ときおり北風が吹きつつも、日向は春らしさを感じる日に、NPO法人場所と物語などが主催した「東京ステイ総集編『東京、日常の巡礼』」に参加。AM6:19の日の出の時間にプログラムがスタートし、終了は17:30という丸一日かけ東京の日常を移動し続ける参加型のアートプロジェクトだ。この日は朝から自分の主宰プログラムがあったため、AM9:30から始まる第二部のプログラムからの参加となったが、それでも合計で8時間の長丁場。恐らく、丸一日かかるプロジェクトに参加するのは、国東半島を舞台に演出家・飴屋法水、小説家・朝吹真理子らが制作した『いりくちでくち』以来だと思う。あれは素晴らしかった。
本来は自分以外に誰かを連れて来てその人とペアになって行動しなければいけないのに、恥ずかしながらちゃんと読み込まずに申し込んだため、連れを見つけることができなかった。前日に事務局からメールが届き、慌ててFacebookにポストしたものの、誰からもDMが届かずただただ自分の非力さに嘆きつつ、1人で参加することになった。ただ、幸いにも僕と同じようにちゃんと読み込まずに来ていた方もおり、めでたくペアとなって参加することができた。いやー助かった。しかも、個人的にはこのプログラムは初対面の人とペアでやったほうが色々と面白いんじゃないかなと思うもので、結果的には良い結果が手に入ったように思う(いや、申込み前にはちゃんと内容を読むことは大切だからね)。
プログラムの内容をざっと説明すると、両者の「インタビュー」というプロローグに始まり、船に乗り東京の夕焼けを眺めるというエピローグまでの間、ペアになって東京の日常を巡礼(≒散策)し様々な偶然や日常の意識の外にあるものに出会っていくというもの。どこに行くか、何をするか、どこを歩くかなど全ての内容はそれぞれのペアに委ねられる。運営側から求められることとしては途中、11:00, 13:00, 15:00に「点呼」という形で運営側からインストラクションが届き、そのインストラクションに従った行動を取りインスタグラムに写真/動画をアップすること。そして、プログラム中に自分の心が動いたものを写真/動画で撮影しインスタグラムにポストすること。最後に、ある指示に従い手紙を書くという3点が求められる(・・・だったはず。すでにうる覚えなのでもっとあったかもしれない)。
そんなこんなで初めましての37歳のぶくんと東京を歩きました。歩き始めてしばらくすると路上で鳩じゃないデカ目の鳥が路上の真ん中で死んでいたり、二人で不動産を見にいったところ最初の物件に入ろうとしたところでニット帽被った強面のお兄さんにメンチを切られ開始早々ストリートファイトな展開かと思い、その全てをのぶくんに託そうと思ったところ、のぶくんの仕事の同僚(なーんだ!)だったり、巡礼には身を清めないと思い立ち近くの銭湯に入ったところ、なんだか自分自身が「巡礼」という言葉もちゃんと引き受けず軽々しくこのプログラムに参加していることがとても情けなくなり、銭湯に浸かりながら考えていたものの、出てきた答えが「人が皆人生を巡礼しているのだとすれば、同じ巡礼者同士困っていたら手を差し伸べるべきだ」という、勝手な「巡礼」の理解とこじつけ、かつ、幼稚園生が入るプールの底くらい浅い答えしか導けない自分自身に心底辟易しながらも、銭湯後に神社の前で着物を着た美女2名に声をかけ二人の撮影を喜んで引き受けたりしてみました。そして終盤には、初対面のおっさん二人で強風の中不忍池でスワンボートをこぎ、その様子をインスタライブで配信したところ世界80億人のうちなんと3人もの方々に視聴頂くことができました(ありがとうございます!)。その後、ボートに乗りながら手紙を書き、その様子をキャッキャする埼玉(だったか千葉)から着たカップルに面白がられたり、強風に煽られ自分たちのボートが流され外国人観光客が乗ったボードに衝突してしまったところ「oh, F◯◯K!」のような感じですごく怪訝な顔をされ、危うく国家間の賠償問題に発展しかねない危機を迎えました。ただ、ここは日本海ではなく不忍池だったということに気がつき、東アジアの安定を乱すことなく無事に地上に帰れたことがこの日の最大の成果だった言っても過言ではありません。強風の日にはスワンボート危険です。
16:00に浅草の桟橋に集合し「東京の夕焼け」を見るべくTOKYO WATER TAXIに乗船。浅草から浜離宮庭園あたりまでをぐるっと周り、最後は勝どき橋で下船。船から降りた時は日も沈みあたりが少しづつ暗くなってきていました。
プログラムを体験していない人が読んでも、正直僕の書く駄文ではほとんど伝わらないかもしれないのですが、僕の東京の日常の巡礼はこんな感じでした。それぞれのペアは全く異なるコースを選んでいるし、体験や発見をしているからあくまでこれは僕の「巡礼」として捉えていただければ。
体験した感想としては、初めましての人と明確な目的もなくその場所や見つけたもの、状況に身を委ね歩いていくという時間だからこそ見つけられたものは色々あってそれは純粋に楽しめた。また送られてくる指示も、Vito Acconci「Following Piece」を想起させるものや、コンセプトは違うが求められる行為としてはcatherine d'ignazio「Corporate Commands」などにも通ずるところがあり、普段とは違う身体の動かし方によって日常では持ち得ない視点をもって、日常を観察することは面白い試みだと思った。
その上で、このプログラムがもう少し参加者を深みに連れていくための提案はできるように思う。個人的には、参加者それぞれが「日常の巡礼」を通じて発見してきた「日常の断片」を元に一つのフィクションとして即興的に見体験してみたい。参加者によってリアルタイムでアップロードされるインスタグラムの写真/動画や、投稿されるコメントや文章などは移り変わる東京の瞬間をこの世に留める1つの行為だとすると偶然性と個人の意思によって残されたその瞬間を繋ぐことで、そこに個人の意思や思考を超えた一本の道が切り開かれるような気がする。プロジェクトのますますの発展を願って。(おしまい)
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