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「かたさがはこぶ遠さ」から「頷く」までの詩の解説

果たして、
「詩の解説」なんてものはまだ読みたいひとがいるかしら、
と思いつつ、
もしもそんなひとが居たときの為に書いたっていいかな、
と思って。
書きます。

私に降り注ぐ水玉
たくさんのたくさんの祈りだったら
みんな割れて汚濁と混ざるよ

私に降り注ぐ水玉
あられのように甘ければ
幾万という子を喜ばせてあげられるかしら 
それとも 続く幸に飽くかしら

私に降り注ぐ水玉
ありあまるものからの施しならば誰もが拾ってもいいかしら 
どんな拒めぬ覚悟かしら

私に降り注ぐ水玉
涙より少し固いことが 
何かを運ぶのかしら
哀しみよりほんの少しでいい
遠くへと運ばれていくのかしら

「かたさがはこぶ遠さ」

この詩は、
詩学舎で自分が出した「水玉」というお題に対して書いてみたもの。
涙に含まれる感情は様々。
丸は一番遠くまで遠くまで何かを運ぶだけれど、
もろくあったって、きっと届くものはあると思う。
でもだからこそ、
少しでも固ければその可能性を上げることができるのかな、という詩です。


花に背を預け 
汚れがすべて風に溶け
流れの力があらゆる澱をとるのなら
私はもう無為に寝転がり
全てに手足も首も髪もつかまれて
割れてあげよう
ゆるしてあげよう
わたしをわたしのまま腹に入れ
わたしをわたしのまま空気を吸わせ
互いの中の私と共に繋がりを持って生きるといい
その闇の隅々を
わたしは負いに生まれたのです

「わたしの王」

死は解かれていくことだと思います。
おそらく生きている間だって、
どこかは解かれ、どこかを縫い付けているのでしょう。
そのあとは世界の好きに解かれてあげよう、という詩です。

キラキラ星を探して

君はそういった

ながれ星ではだめよ
キラキラ星よ

夜は迫り
列車は夜に追いつかんばかり

がたんがたんと揺れる客車で
小さな膝を沈めた君は
一心に
キラキラ星を生み与えようとしていた

夜へ

「きらきら星」

長男の写真に詩を付けたもののひとつ。
夕暮を走る電車に、
女の子がつよきに夜空を見つめる様子を思い浮かべました。
少し離れた誰かに、
自分に言い聞かせる言葉を話しかけてしまう女の子は、
愛おしいように思えるのです。

無音が湧き上がって
私の耳を割ろうとする

それに抵抗して
私はうつくしい歌を回す

無音の不明瞭な光の中を
音がさっ、さっ、と咲いていく

私は安心して歌に沈みながら
より密度の濃い花の蜜の方へと鼻をむける

「無音の不明瞭」

音のない世界は、
きっと穏やかでしょう。
けれど減った刺激の分、
私は得られるものよりも、
もう少しこの聞こえる世界にいたい。
花の咲く音よ。
小さなその音に澄ませる耳でありたい。
そう言う詩です。

心が 燃えてもいいですか
大火事です
すべてのこだわりと自信を
塵と化してもいいですか
それでも私は私を選びますか

遠く澄んだ火を思う
その中で ひとつひとつが
弔えたなら 抗えたなら
私はやっと私を許すでしょう

山は遠くて そばになく
月は明るく そばになく

「炎」

自分の粉々になる、火に崩されるそのときに、
私は私の負ったもの、折ったもの、追ったものたちに許してくれと言えるだけのことをしているだろうか。
それを持つまで、
山は遠く、月は明るい。
という詩です。

見つめられるものの手を
はなしていいだなんて
なんてこと

目に見えないものにばかり
名前を与えてはいませんか
あなたにはひとつのことを

私の腕は風にあおられます
遠い日々が私の胸を赤くします
あしたが言葉を求めず
この肩を抱きしめるので
私は沈黙を与え 目を呑み込みます

見つめられる
手で触れる
そのものの遠いなにかを
私は今に居たとして 愛します
名はありませんが
それらはやさしく触れる術を繰り返し
教えてくれるのです

「ふれる」

「見えないもの」が大事になることはさておき、
「見えるもの」さえ大事にできなくてどうしましょうか。
それはきちんと育てていかなくてはいけない干渉でしょう。
そう思って書きました。


吐息は
溜まっていた息?
それなら白い手よ 
放してあげなさい

灯火を吹く息は
ためらっているの?
それならやわらかな頭を撫でて
頬に息を吹いてやり

やさしいため息は
ただそのままの姿を
見つめていてあげられたらよいのです

それはとてもうつくしい
瞬きなのだから

「息を吹く」

息を吸い、吐く。
それだけの行為さえ愛おしいことがあります。
それは自身のものでも、
誰かのものでも。
そっとみつめてあげましょうよ。
そんなことを言った詩です。


教えられるかしら
あなたの愛が
わたしを何色に染めたのか
それは一色に見えるかもしれないし
ただ一度の色に見えた後は暗く沈む色になっているかもしれない
それをひとつの唇で
言えるのかしら

そっと
風は尻尾をまいた静寂
ぱくりと開いた暗黒に
ぽっかりと浮かぶ
あなたの愛

「唇の奥」

あんたは私を何色とも言い難いものに磨く。
それを誇るには大きすぎ、
ただぼんやりと、
その上で浮かんでいるばかりなのです。


雷鳴が花一つに恋をする
それが純粋かどうか
ふたつのあいだに関わりはなく
ただ濡れた花弁のはじく肌を
ただならぬ光量で照らし出す
それだけのひとつ影絵の語る物語

「花と雷鳴」

純粋に愛を描いて見たかった詩です。


舌を縫い
口を閉じ
覚えなさい
頷くということを

「頷く」

こういう彫刻を見たことがあるように思うのです。
とても難しく、
そして堅苦しく、
それなのにきっといつか強いられるもの。
それを語りたかった詩です。

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