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10・28(文芸会のこと)

はい、日付詐欺です、、、

でもしょうがない。
この日の文芸会は何時にも増して濃厚な会になって、
その後の絵本カフェくうねるんでの『推しを語る会』も盛り上がり、
帰ったら眠気との戦いを繰り広げたくらいなので。

今回の文芸会では、
私が久しぶりに司会役(といっても、私はほんの少し進行の口添えをするくらいなのですが、、、)をやりました。
それには狙いがありまして。
いや、一応一巡して私以外の人は二回やっている状況だったというのが前提であって、ああ、じゃあ今回はいつもに増して好き勝手なものを書こう!とか思ったのが始まりでした。

今回は、『ホラー』を書こう!
そう思って書いたのが、
こちら。

このお話は、
もともとはちょっと違っていて、
この揺れていたものが“首つり死体”なのですが、
そんな幽霊が出ると有名な近所の神社がある、というのを主人公の目線から話はじめ、その幽霊を見たことがあるわけではないのに、
何故か顔を知っているような気がしている主人公。
実はその首つり死体は彼の母親で、
その第一発見者だったのが主人公だった、と。
ショックでその記憶を失くしている主人公ですが、
それでもなんだかぼんやりとどの枝に幽霊が揺れているのだとか、
どんな音なのだとかを知っていて、
それを夢に見てしまう。
そんな日が続き、母親(この人が本当の母親の妹さんか、双子でもいい)に夢の話をするのですが、母親は「そんな前の怪談で悪夢をみるなんて繊細だね」なんて誤魔化します。
そうだな、自分は近所での幽霊話に敏感になっているだけなんだろう、なんて考えている彼ですが、夢の中では毎晩少しずつその首つりの死体の顔が明らかになっていって、、、
という話を考えていたのですが、
それを短く書くことが難しく、
外郭だけを残して、あとはこれだけでもなんとか推測できる、、、かな?
くらいに書いてみたのが『揺れていたもの』です。

司会者が最初に読む人を決められます。
こんなちょっとぐちゃっとした話は最初に読んでもらえる確証がある時にしか書けない!
というわけで、司会者権を無事奪取し、
最初の一人として読み上げたのでした。

読むまでは和やかな皆さんの近々のお話で空気がほっかりとしていたのに、
私の一作で“しーん、、、”とさせてしまいました、、、。
一応、読む前に
「これは、本当に軽い気持ちで、頭で想像しよう!とか思わなくても大丈夫なやつなので、ふわっと聞いてください」
と言ったのですが、
どうやら思った以上に重たい一撃として受け取ってくださったようです。

最近、ホラーというのか、
落ちが怖い要素で締めるお話を書くというのが続いていて、
それも『ホラー』が書いて見たくなった理由でした。

その何作かの中で、「としさんのが一番怖かったわ!」と言ってもらい、
密かにガッツポーズしました笑
他の方にも
「意外に合う。もっと怖いのを書いてみて欲しい」と言っていただき、
よかったなぁ~と。
でもお一人に「いや、これ以上のが来る日は休みます」と言われたので、
ちょっとどうするかは考えます笑
言葉のつなぎ方や、表現方法に対しても、
「もうとしさんはこのまま行ったらいいと思う」
と言われました。いつもちょっと読み解くのが面倒なものを読んでくださる皆さんに感謝です。

そんな私の次の方は、
小説でした。
定年を前にして妻に離婚を突きつけられて出ていかれた男が、
うまくいかない家事に疲れ、
公園でぼんやりと時間を過ごしていると、
季節外れの蝶々を捕まえようとする男の子とその祖父らしい男性が視界に入ります。
男自身にも男の子がありましたが、
仕事にかまけて関係を築くことなくきたことを思い出します。
過去を振り返っていた男の前で、
男の子は蝶々を捕まえますが帰る前にそれを籠から出してやりました。
「ママのもとにお帰り」
そう言って。
その姿を見ながら、
男は行く当てのない自分を憐れみながら、自分も誰も居ない家に帰り始めるのでした。(本文では蝶を追いかけてみようか、という言葉で終わっていますが、果たして追いかけたのか。きっとそんなことを考えたことを笑って、家路を辿るのではないかと思います)
これを書かれた方は、本当に細部にまで言葉に意味を持たせようと考えて書かれていて、自分はそんな細やかな描き方ができないなぁ、と毎回驚きます。
舞台の脚本を書かれていた方なので、映像が先にあるのかな、と勝手に考えています。

次はいつもは紀行文を書かれる方なのですが、
久しぶりの詩を披露してくださいました。
お母様が結核で入院された時、
その病院での少年だった作者の目に映ったものが選ばれた言葉で語られる前半、
そして下のまだ小さな弟さんを母親の実家に預けることになり、
送り届けたあと、
父親と船で家に戻る場面が描かれる後半で、
色味がどんどんと増していき、
夕暮れに沈んでいくさみしさや心細さや、
残される弟たちへの申し訳なさが書かれていて、
思わず胸が締め付けられるような詩でした。
ああ、こういうのが人に伝わる詩なのだな、
とこの方の詩は二回目なのですが心底思いました。
その上文字列の形で作る形まで気を回されていて、
もう「凄い」の一言でした。

お次も詩で、
いつもは「お店番シリーズ」を書かれているカイさんの、
行きつけの場所で知り合った男の子のことを、
その子の見つけるこの世界のいいものの姿を追いかける言葉が、
とてもやわらかで、
こんな風に子供を見ていられることに尊敬が湧きました。
自分の子供を見ていた記憶も呼び起こされたり。
ああ、こんなきれいな映像で記録されていたんだな、
とびっくりもしました。
他人から見た子供という視点として、
こんなにいい詩が書けることに人間性が出るなぁと思います。
これもまた、私には書けない詩でした。

次が主催者さん。
今回は友人が勧めてくれた本の話。
それが芥川賞を受賞した『ハンチバック』のこと、
またその作者のことを紹介し、
そこから思い出された彼の思い出を書かれていたのですが、
この一作、内容もですが、
よりこの作者さんのことや、作品に対してのそれぞれの考えで感想が熱くなり、いろんな面がまた見えた気がして、とてもいい時間だったと思います。

次は絵本も書かれている方で、
今回は図書館への愛を語った一作でした。
作者さんが図書館へいくと、まずどこを見るのかというと、
書架と配架なのだそう。
そして並べられている内容やイベント棚でその地域の予算の具合や、
どんな本屋さんと取引をしているのか、
司書さんの力量なども把握してしまえるのだとか。
そんな彼女は色んな道を歩んで司書資格を持ち、
今も地域の図書館と関わりをもつ仕事をされていて、
旅行のときなどは必ず図書館へ足を運ばれるのだとか。
趣味も仕事も兼ねたいい立ち寄り処だ。
図書館が単なる貸本屋さんではないのだと、
色んな人に知ってほしいと締め括られたエッセイは、
本当にためになる内容でした。
内容がしっかりあるのに、
語り口が軽やかだからすんなり読めるのが凄い。

お次の方は、
再び詩でした。
樹液を見て思いつかれた詩だということでしたが、
この方のエッセイやお人柄から感じるやわらかな空気とは別に、
時折覗かせる鋭い視線が発揮された詩で、
言葉で作ったリズムや、
繰り返しで空気をふくらませるような工夫が効いていて、
面白い詩になっていました。
最後にはきっちり前向きに持っていくところに、
作者さんの気持ちの持ち方への信念が感じられました。

最後は、
今まで『古時計シリーズ』を書かれていた方。
そして今回は新シリーズが幕開けに。
今度の舞台は女子高。
そこでひとりを満喫したい女の子が、
母親の目を誤魔化したり、
同級生からのやっかみを跳ね返したり、
一話目にしてキャラが立ち、
軽妙でここからの話の転がりが楽しみになる第一話になっていました。
個人的に、山本文緒先生のコバルト時代の小説のような雰囲気を感じてとっても楽しく読んだのでした。


と、こうして二時間(と十分くらい、、、だったか)の文芸会はとっても濃い回になったのでした。

本当に濃くて、めちゃくちゃ楽しかったです。
そして10・28(推しを語る会のこと)へと続きます。

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