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絆創膏
ははの背中を抱きしめると、水色の雲と白い空のパッチワークが見えた。懐かしくて嬉しくて、にゃーにゃー鳴いてるのが面白くて。そしたら、とっといたかったのに、大きな黒ひげの猫がボゥアボゥアと吠えてきた。私からいつも愛を奪う黒猫だ。はやくはやくにげなきなまゃ、はしって、あっあついでも、かあさんを置いてはいけないよ
あつい この軟膏を持って、小指に沢山つけて逃げなさい
治りが早くなるから治りが早くなるから治りが早くなるから
これはね、しってるよ。かあさんごめんかさい。はやくよくなってね、わたしはこへじゃなおらないかもしれないけれど、どうか母さんは元気になってね。
やまおく、どくどくどっぐどと、喉がなる。
指先で、どこに塗るんだっけ?鼻が熱い、そらなら鼻かな?すぅとして目がしばしばする。あぁ、足だ、足に行く。最近酷かったから。ん?違う、かただ、肩に塗りたかったんァ。あつまれあつまれすーすーすーすー。うでもあしもかおもあつまれ首と肩を塗ってやろう。あーすーすーすーすー。顔から川がドゥーさらららと流れていくる。ここは山の奥にある細いほそいちいさなかわ。さららりさららり。すすしいね。こわいものは、こないんぁよ。ここには。
ぐるるるるるるふぐるるるるふふるふと喉がなる。
あぁ、まだいるみたい。ここまででね。