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幽霊の鉛

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#海

とっくに殺して欲しかった
いつも瀬戸際で目が覚める
砂浜から持って帰ってはいけないと教えられた
でも、言いつけは破ったよ
君の電話番号が知りたかった
いつでも呼び出してくれるだろ
いつでも待っているんだろう
サラサラうねる黒髪に
ベタつく風を纏っている
帰りたい
君の胸元へ

全部がプランクトンらしい
それなら、好き嫌いだってあるはずだ
東の海はいいけど西の海は嫌だとか
奴ら、てんで顔を変えやがるから
放課後に呼びつけたあいつは
俺にとって都合のいい顔しか見せていない
だけどその水面に惹かれてるのは
遠いむかしに一緒だったからかな

溺愛

溺愛

みな等しくタンパク質の塊なのに
世間はくさい社会の匂いがするのに
あの子は甘く優しい香りがして

みな等しく皮がくっついて
世間は安い剥がれたもの纏わって
あの子はふわふわ柔らかい

みな等しく脳みそ詰まって
世間は量産された蟻の線路を歩くのに
あの子は広く海を漂う

目が合ってから息が出来なくて
酸素も届かず頭も回ってない
思考に水が入って沈んでく
でも自ら飛び込んだ海だから
後悔は微塵もない