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結局、ライカって何が良いんです?

今回は、数年前まで僕のハートを鷲掴みだったライカについて書いてみたいと思います。ただし、デジタルのライカではなくて、フィルムカメラのライカについてです。現行のデジタルのライカでも、M型のレンジファインダータイプのライカは、1950年代に登場したライカM3の流れを汲んでいますし、大昔のライカレンズも使えますから、全く無関係という話でもなかったりしますが。

ライカというと「カメラの王様!」とか「いやいや、別にライカじゃなくても同じ様な写真撮れるでしょ。」とか賛否があったり、M型ライカのボディやレンズはなんだか神格化されて、宗教っぽさまで感じるくらいファンが多いカメラですが、僕もクラシックカメラ趣味&実用カメラとして、フィルムを使って写真を撮っていた最後の時期に数年使った事があります。

ライカで写真を撮っていた時は、モノクロフィルムの自家現像にハマっていて、暗室プリントのワークショップに参加してみたりとか、そういう面でも前のめりだったんですが、今思うと、もう少し早く入手して、せめて10年くらいはライカで撮った写真を自分でプリントしてみたり作品にして楽しみたかったと思っています。

撮影の終わったフィルムを自分で現像するワクワク感と、スキャンした画像を見る楽しみは格別でした。

話を、「結局、ライカって何が良いんです?」に戻すと、これがなんとも曖昧というか、ライカで撮れる写真が国産一眼レフカメラで撮れないっていう事はありませんし、むしろ、接写が苦手とか、望遠レンズを使うにしても、頑張っても135mm、一般的には90mmくらいが実用範囲ですし、機能面で言えばむしろ劣るくらいです。

しかし、カメラの構造として、一眼レフは、レンズを通した光景をペンタプリズム経由で映したファインダーを覗く事で、「良い構図」を考えたり「どんな絵作りにしよう?」という心理が働きやすい面があって、それは一眼レフの長所なんですが、反面、考え過ぎちゃったり、悪い意味で写真にあざとさが出たりっていう事があると思います。

一方、ライカ型のレンジファインダーカメラというのは、ファインダーの機構上、厳密なフレーミングが出来ないので、どこかでそういう「絵作り」的な事は諦めるしか無いんですね。又、一眼レフカメラはシャッターを切ると一瞬画面がブラックアウトするのに対し、ライカは素通しの光学ファインダーなので、撮影対象を観察し続ける事ができて、状況を眺めながらシャッターを切る事が出来ます。

ライカのピントを合わせる機構は、フレーム枠の中央に二重に画像が重なるエリアがあって、そこを使ってピントを合わせる訳ですが、こういったファインダーを使っていると、厳密な構図作りというよりは、一瞬のシャッターチャンスに強くなるという利点があります。

ライカのレンジファインダー(使うM型ライカ / 赤城耕一著から引用。)

昔の写真家や現代の写真家でも、ライブ感を感じさせるスナップを撮る人や、ポートレイトでもモデルさんとの気楽な親密さや何気ない一瞬を上手に掬っている写真を撮る人にライカを使っている人が多い印象です。有名なライカ使いの写真家のハービー山口さんのポートレイト等を見ると分かってもらえると思います。

ライカの距離計に合う焦点距離のレンズとなると、望遠系よりは、広角レンズ〜標準レンズが無理なく使えて、かつ、レンズのサイズも小さいので、一眼レフよりも威圧感が少ないスナップ写真向きなカメラという感じです。こういうカメラの構造的な利点は、カメラを使って慣れていく中で感じる事で、そういう面が「ライカって何が良いんです?」という話の一つの要因だと思います。

もう一点は、カメラボディの工業製品としてのクオリティの高さ、そして、数あるライカレンズの魅力が最大の要因だと思います。カメラのクオリティの高さは「一度触ってみてよ!」っていうのが手っ取り早いんですが、レンズに関する話となると、長いライカレンズの歴史の中で生まれた様々なレンズそれぞれに個性があって、もちろん性能の高いレンズもあるんですが、同じドイツのカール・ツァイスレンズが大昔から高い光学性能を評価されていた事に比べると、ライカレンズは完璧という感じでは無い印象もあって、でもそういう曖昧で感覚的な所があるからこそ、伝説になっている面があると思います。

大好きなライカ。M5とM3。

さて、僕のライカ遍歴なんですが、最初に入手したのは、M2という少し機能を簡素化したモデルで、たまたま安価で入手できた事がきっかけでライカ沼にハマってしまいました。次に入手したのはM3という、M型ライカの初代機でありながら、最高の完成度を誇るライカです。

ただ、ライカM3は、50mmレンズと90mm、135mmといった標準から望遠レンズの使用を想定していて、35mmレンズ等の広角レンズを使うとなると、前述のM2、その後継機のM4、異色なデザインのM5、さらに近代化したM6という、M3以外のモデルの方が使いやすいんですね。そんな時、浅草の有名な某カメラ店でライカM5を触らせてもらい、個性的なデザインに反してとても使いやすく、露出計も使いやすかった事からM2からM5に乗り換える事になりました。

一方、ライカM3は、50mmレンズを使うには本当に見やすいファインダーや、クラシックカメラとしての魅力や昔のドイツの工業技術の結晶みたいな完成度の高いカメラで、50mmレンズオンリーで行くならM3が良いですし、ピントを合わせる、シャッターを切る、フィルムを巻き上げるといった一連の感触の良さは、M3ならではです。

レンズについては、比較的安価なものから、高嶺の花レベルの高価なものまでピンキリなんですが、僕が入手した事があるレンズは、ズミクロン50mm f2 、エルマー50mm f2.8、エルマー50mm f3.5、ズマロン35mm f2.8、エルマー35mm f3.5でした。一回、高価なアスフェリカルレンズのズミクロン35mm f2 を入手した事もあるんですが、写りが良すぎて、「あぁ、自分は、ライカレンズになんか情緒的な雰囲気を求めるオタクになっちゃったんっだなぁ…」という思いで、大して使わずに手放した思い出があります。どうかしてますよね?

大好きなエルマー50mm f2.8。ライカレンズは工芸品的な美しさがあって危険です。

個人的に好きなレンズは、エルマー50mmの2本と、レンズにコーティングもされていない、古くて小さなエルマー35mm f3.5で、ズマロン35mm f2.8は、レンズのデザインと描写の安定感のバランスが好きなレンズでした。欲を言えば、神話化している、8枚玉ズミクロン35mm f2とか欲しい気持ちもありましたが、僕の散歩写真用途には、前述のレンズで十分で、むしろエルマーのシンプルさと柔らかいトーンが好きでした。

ライカM5に装着したエルマー35mm。M5はボディが大柄なので大きいレンズが似合いますが、意外と小さいレンズの組み合わせも良かったりします。

以下に、ライカで撮った写真を添付します。どれも、他の記事に貼っている写真と大して変わらない内容ですが、それでも自分的にはライブ感があるスナップにも思えたりします。何となく、ライカってこういう感じの写真に向いたカメラなんだという事を感じてもらえれば幸いです。

ゴシックな子 / ズミクロン50mm f2
古書市にて / ズマロン35mm f2.8
無病息災 / ズマロン35mm f2.8
Siteseeing / ズマロン35mm f2.8
父と娘 / ズマロン35mm f2.8
パフォーマー / ズマロン35mm f2.8
青砥橋から臨む / エルマー50mm f2.8
昼下がりの住宅街 / エルマー50mm f2.8
すりガラスに光 / エルマー50mm f3.5
井戸端会議 / エルマー50mm f2.8
一品買っとく? / エルマー50mm f2.8
時計 / エルマー50mm f2.8
水面 / エルマー50mm f2.8
旧車 / エルマー50mm f2.8
パーツショップ / エルマー35mm f3.5
西陽差す道 / エルマー35mm f3.5
羽子板市 / エルマー35mm f3.5
木材屋 / エルマー35mm f3.5
絵師 / エルマー50mm f2.8
孫と祖父 / エルマー50mm f3.5
シューズショップ / エルマー50mm f3.5

別にライカだからどうとか言う程の写真でも無いんですが、何となくスナップ写真に向いたライカの魅力が伝わったでしょうか?

僕がライカを買った時は、今程ボディもレンズも値段が高騰していなかったのですが、それでも随分高価なカメラとレンズで、果たしてそれを使ったからどうなの?とも言えるんですが、自分の感覚としては、ライカを使った写真は他と少し違う様に思った事と、たまたまモノクロフィルムの自家現像にハマっていた時期とも重なって、「高価な経験を買った」という事にしています。でもやっぱり楽しかったな(笑)この辺りがライカならではの良さとしておきましょう。

今のM型ライカは、フィルムカメラのM6が復刻という話題などありましたが、大体はデジタルに移行して、主に価格面で完全に自分が手に取れるカメラでは無くなってしまいましたが、おそらくデジタルのライカにも、最新の国産ミラーレスカメラとは違う魅力があるんでしょうね。

では、また次回の記事で!

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