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「水脈」第63号

北海道の「川柳グループ水脈」が出している同人誌「水脈」63号が発行されました。巻頭は浪越靖政さんによる「高橋蘭川柳句集『縷縷』を読む」です。

脳味噌もお好み焼きもかきまぜる  高橋蘭

「水脈」誌については以下に連絡先や会費が記されています。

水脈

今号は飯島章友が同人作品評「危機の時代の川柳を読む」を寄稿しました。期せずして時代批評や文明批評を絡めた作品評が多くなり、このようなタイトルをつけてみました。いちおう七七になっています。以下、あまり堅くない評を一部抜粋。

ベクトルはあの日のドラゴン・ロケット   坪井政由
 プロレスラー藤波辰巳(現在は辰爾)の得意技を二つ挙げるとすれば、ドラゴン・スープレックスと掲句にあるドラゴン・ロケットだろう。この技の正式名称はトぺ・スイシーダというメキシコの技。名レスラーだったブラック・シャドーが考案した。スペイン語でトぺは頭・頭突き・衝撃、スイシーダは入水自殺。その名の通り、リングの外に落ちた相手へ助走をつけて頭から当たっていく捨て身技だ。万一かわされたら椅子やフェンスに頭を直撃して大流血することがある。私も何度か、トぺをかわされた選手が滝のような血を流している試合を観た。
 そんな技だけに、藤波選手が初公開した昭和53年当時、その衝撃は凄まじかったようだ。おそらく掲句の語り手は若かりし藤波選手のドラゴン・ロケットを知っている世代だろう。「あの日の」という措辞からは、そこに強烈な思い出が込められていると思う。もしかしたらトぺをかわされて大流血した藤波選手の記憶かもしれない。
 語り手が捨て身で何かをやろうとしている決意を川柳にしたのだろうか。尤も、この十七音だけでは分からない。立て続きに発射される北朝鮮のミサイルや、去年日本の排他的経済水域内に落下した中国人民解放軍のミサイルも頭をよぎる。ただただ平安を願うばかりだ。

「水脈」63号より