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デザイナーという肩書きの呪い

こんにちは。タイミーでプロダクトデザインをしているAkitoです。
今回は、デザイナーの呪いを解くお話を書きました。
ちゃんと言うと、組織に属するデザイナーが、その環境の中で活躍するために大事かもしれない考え方と、そのマインドを手に入れる方法についてです。

この記事は Timee Product Advent Calendar 2024 の9日目の記事です。

優秀なデザイナーとは

デザイナーの優秀さってなんだろう。難しい問いです。
さまざまな観点があるかと思いますが、私の考える優秀なデザイナー像は、「事業成長への貢献度が高い人」です。
どんなにスペシャルなデザインのスキルを持っていようと、どんなにデザイナーとして有名になろうと、関わっている事業の成長にそれらが寄与していなければ、その組織においては優秀なデザイナーであるとは思えません。
もちろん誰もが優秀であることを目指す必要なんてないですが、仕事での活躍を通して、やりがいや充実感、自己肯定感を持つことは、心身の健康にもつながるはずです。

誰もが健康ではあってほしい。

というわけで、そんなデザイナーライフを送るにはどうすれば良いのか。その考え方について、先日参加したDesignship2024にて登壇されていた、塩月慶子さん野口友幸さんの講演にとても共感するところがありましたので、振り返りながら、自身の考えも織り交ぜて書き綴ってみたいと思います。

“デザイナー”をやめよう

何に共感したか。まずは、塩月さんが説かれていた、「デザイナーをやめよう」というメッセージについて。
デザインは、手段である。人々の課題を解決する道具であって、目的ではない。
これはデザイナーに限った話ではないのですが、目の前の課題に取り組もうとするときに、人は自身の職種に固執してしまうことがあるように思います。

私はこれを、肩書きによる呪いのように感じるのです。

まるで呪縛であるかのように、自分の起こす行動の打ち手が、デザインに関するものしか考えられなくなってしまっているイメージです。
もちろん、自身の立場や求められている役割・責任を全うすることは大切です。
ですが、職種やスキルというものは、自分が持っている道具であり、武器であるに過ぎません。必ずしもそれを使用しなければいけないわけではないと思うのです。

デザイナーは“デザイン”に囚われている

世の中の多くのデザイナー、とりわけ過去の自分もそうですが、「自分はデザイナーである」という考えに囚われているように思うことがあります。

  • 「これはデザイナーの仕事ではない」

  • 「この仕事ではデザイナーとして成長しない」

  • 「デザイナーとしてこれくらいできるようにならなきゃいけない」

そんな考えに囚われ、デザインそのものが仕事になってしまっている、なんてことはありませんでしょうか。
組織に属している以上、我々はデザイナーである前に、その組織の一員です。その事業を成長させることが第一の目的であり、デザインをすることが目的ではありません。
事業成長への貢献を第一に考えたとき、自分が今やるべきことは自ずと見えてくるはずであり、それは必ずしもデザインである必要はないはずです。

良いデザインとは

決して、「デザイナーはデザイン以外の仕事もしよう」と言いたいわけではありません(そうとも言えるのですが)。
これは、デザイナーが良いデザインを行うためにも大切な考え方だと思うのです。
デザイナーが心から事業の成長を、目の前の課題解決のことを考えたとき、自ずとデザインのアプローチは変わるはずです。

このデザインが、なぜ必要なのか、そもそも必要なのか、他に優先すべきことはないのか。そんな考えを持って取り組むデザインは、きっとその事業に本当の価値をもたらすものになるはずであると考えています。

ですが、このようなマインドを持つことは簡単ではないと思います。モノづくりが好き、デザインが好きという気持ちからデザイナーという職種を選んでいるはずですから、デザインの仕事がしたいと思うのは当然のこと。デザインのスキルを磨きたい気持ちや、デザイナーとしての未来を不安に思う気持ちでいっぱいになることもあるかと思います。

夢中になれるものに出会えるか

では、何が必要なのか。
それは、自分が夢中になれるものに出会うこと、と、私は考えます。
デザイナーをやめる、とまではいかなくても、デザイナーであることを忘れるくらい、その組織のビジョンに共感し、心からその事業の成長を望むくらい、自分が夢中になれるものに出会うことができれば、自ずと考え方は変わるはずです。

  • あなたが解決したい世の中の課題は何ですか?

  • あなたが救いたいのはどのような人々ですか?

この問いに対しての答えを持つこと、そしてそれに取り組める場所を見つけることが、デザイナーとして真に輝くことができる第一歩であると考えています。
繰り返しになりますが、デザインは人々の課題を解決するための道具です。デザインという枠を超えて、常に自分が救いたい人や解決したい課題に向き合うことで、行動やデザインのアプローチが変わってくるかもしれません。

デザイナーの”願い”

同じくDesignshipにて登壇されていた野口友幸さんは、これからのデザイナーに必要なこととして「願いのデザイン」という考え方を提唱されておりました。
作り手である私たちデザイナーが、ユーザーにどうあって欲しいか、その未来を願ってデザインすることが大事である。短期的にその場を解決するのではなく、長期的な未来の状態を考えたデザインアプローチが重要であると。こういった考え方も、自分が救いたい人や解決したい課題に出会うことで、手に入れられるのではないかと思いました。

未来の理想の状態を心から願うことができたとき、デザイナーが主体的になり、関わる事業に対して貢献度高く、その環境の中で活躍できるようになるのではないでしょうか。

加えて野口さんは「デザイナーがさまざまな経験をすること」の大切さについても説かれておりました。〇〇なものをデザインしたくても、自分が実際に〇〇な経験をしていないと難しい、ということです。
これは、夢中になれるものに出会うためにも大事なことだと感じました。
自分の足で現場へ行き、自分の目で見て、触れる。そんな実体験を伴ったさまざまなコトを経験することで、自分の興味のあることやしたいこと、夢中になれるものが見つかるのではないでしょうか。

おわりに

冒頭で私は無意識に、「誰もが健康ではあってほしい。」と書いていました。
これは私の”願い”なのかもしれません。

デザイン、そしてデザイナーは、世の中の課題を解決しうる、極めて強大な力を秘めていると信じています。
世の中の全てのデザイナーが、”夢中になれるもの”に出会うことを、そしてその未来に対しての”願い”を叶えようとすることで呪いが解かれることを、祈っています。

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