【書評】PSさくらももこ先生、この本ブラックジョークが過ぎますよ 『さくら日和』
1999年、この本の第一版の年。裏表紙を開いて確認するとそんな年に出版された本だったらしい。
それより以前、さくらももこ先生のエッセイは欠かさず読んでいました。
しかし、その年、僕はチャリンコで世界一周するんだ!という野望を抱いて韓国にフェリーで渡り、カナダに飛び、ガチャガチャペダルを回しながら南下してた年。この本が出版されたことは知りませんでした。
その後、1年2ヶ月チャリンコ旅行に費やして、金尽き、女の子に溺れて世界一周はおろか、カナダから中米のコスタリカ迄しかたどり着けなかった僕は、なんとなくやりきれなかった気まずい思いで帰って来て、さくら先生のエッセイの事はすっかり忘れて普通のサラリーマンとして、日本社会に組み込まれて行きました。
さくら先生、こんな本を出していたんですね。冒頭、最初のエッセイを読んで、思わず本を閉じてしまいました。なんとなく、さくらももこのエッセイを読みたいと思って、大人買いし、この本を最初に開いたのですが、辛すぎます。
ネタバレだけど書きます。
さくら先生はこの当時、友人だった賀来千香子さんの兄の助けもあり、なんとか離婚を成功させていて、そのお兄さんの鮮やかな手腕から自分の会社にそのお兄さんを引き入れて働いて欲しいと考えていました。
千賀子さんもそれに大いに賛成して、なんとか一部上場企業のお兄さんを2人で呼び出して、説得を試み、転職させようとします。
その顛末が面白可笑しくさくらももこ文体で書かれているんですが、お兄さんを口説き落とす文句が、辛い。
「もし私が死んでも会社は安泰です。なぜなら印税というありがたいものがあるからです。もし、私が死んだら、各書店は追悼記念の企画をすると思います。その時にお兄さん、あなたの手腕が必要なんですよ!」
辛すぎて一旦本を閉じました。当時、本人も賀来千香子さんも、口説かれてるお兄さんも、誰もさくら先生が若くして亡くなるなんて事、想定してなかったでしょう。
今、本屋さんで追悼企画を見てしまったら、賀来千香子さんのお兄さんの頑張りなのだろうかとか考えられずにいられません。
そして本屋で号泣してしまう変なおっさんになりかねないので、本屋には近寄れません。
勿論、こんな話だけではなく抱腹絶倒のエッセイが詰まったこの本。お買い得ですよ〜!
この文章はHIU書評ブログに寄稿したものを再編集して掲載しています。