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Enter the Battlefields,〜TCGで学べる7つのビジネステクニック〜

#創作大賞2024 #ビジネス部門

はじめに

 本書は、トレーディングカードゲーム(以下TCG)経験者向けに書かれていますが、未経験でも理解することはできます。しかし、実際にプレイしているのと、そうでないのではその実感度に差が出るでしょう。まずは、ホビーショップ、玩具店などでスターターキットなどを買ってきて、触ってみることです。そういった、実際にやってみるマインドも、ビジネスパワーの向上に不可欠な脳のムーブです。

 この本はできるだけさらっと読んで、日々のビジネスワークの負担軽減、効率向上、成功率アップなど、どうしても肉体疲労や他者との軋轢などでダウンスパイラルにハマりがちな現代のビジネスパーソンを、やればやるほど仕事がラクになるアップスパイラルに切り替えていただくためのエッセンスを提供します。なるほど、と思ったら遠慮は要りません。実践して自ら証明してください。そして、お友達にも教えてあげましょう。本書をコピーしたり、貸したりしてもOKです。著者が許可します。なんならこの内容を複製して増やして転売しても構いません。ただ、私や私たちの仲間が書いたものだということはわかるようにしておいてくださいね。

 前置きはこのぐらいでいいでしょう。さっそくページをめくって、本当にTCGがビジネスの助けになるのかどうか、確かめてください。
 さあ、まずはアンタップからです。

イントロダクション

トイをウェポンにチェンジするマインド

 トレーディングカードゲーム(TCG)はホビーです。ただのレジャーグッズのはず。そんなオモチャは神聖なビジネスの場にそぐわない。けしからん、と考える方も多いことでしょう。イグザクトリー! そのとおり、オモチャはビジネスに必要ありません。
 ビジネスに必要なのは、トイではなく、ウェポンだからです。TCG自体はトイですが、そこに秘められたいくつかのメソッドが、あなたのマインドに組み込まれるとき、愉快なトイは強力なウェポンになる、という話をしていきます。

TCGは本当はトイではない

 まず、TCGに対する思い込みを捨てるところから始めましょう。TCGがトイであり、ホビーなのは、玩具店で売るためです。その本質に気づいたとき、あなたはTCGがホビーショップの店頭に置かれていることに大きな違和感を覚えるでしょう。これは、本当は銃砲店で売るべきではないのか、と。とはいえ、TCGのカードパック単体ではそこまでの危険性はありませんから、これらはホビーショップやトイザらス、コンビニエンスストアなどの店頭に置かれていても構いません。

TCGはマジック:ザ・ギャザリングや遊戯王などが有名

 TCGには、元祖であるウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の「マジック:ザ・ギャザリング(MTG)」、その弟分たる「デュエル・マスターズ(DM)」、コナミ社の「遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム(遊戯王)」などがあり、このあたりは30代以下であれば、ミニ四駆やポケモンと同程度か、それに次ぐぐらいにはプレイ経験があるでしょう。40代の団塊ジュニア以上の年齢層であれば、一度お子さんや友人と(もちろんソロでお試ししても構わない!)試して、どんなものか触れてみるといいと思います。ポケモンといえばポケモン社の「ポケモンカードゲーム」もコンビニで見かける商品ですし、プレイした人も多そうです。もう少し踏み込んだ人であれば、ブロッコリー社の「アクエリアンエイジ」やバンダイ社の「バトルスピリッツ」、ブシロード社「カードファイト!! ヴァンガード」などもご存知でしょう。本書ではだいたいMTGかDM、遊戯王あたりの内容をベースに話を進めますが、他のTCGでもそう大きくは変わりませんので、理解の妨げになることはないと思われます。なお、各商品名は各社の登録商標です。

TCGはカードセット(デッキ)の内容を自分で決められる

 カードゲームといえば、まずトランプを思い浮かべる大人は多いでしょう。他にもマテル社の「UNO」などもよくプレイされるゲームです。日本の花札もそうです。これらのカードゲームは、プレイヤー全員が仲良く1つのカードセットを、毎回分け合って使い、遊び終わったら元に戻す、のが基本です。まあ、ごく当たり前のことを言っているだけですか、ここは少し大事かもしれません。
 TCGの場合、これが少し違います。TCGでは、プレイヤーは自分専用のカードセットを保有します。他のプレイヤーと分け合ったりはしません。このカードセットを「デッキ」と言います。デッキを構成する内容はTCGの種類ごとにいくつかのルールはありますが、基本的に自由です。プレイヤーは、自分のデッキに自分の好きなカードだけを入れてよいのです。トランプでいえば、ハートが好きだから全部ハートだったり、スペードのエースだけ4枚揃えたり(多くのTCGでは1つのデッキに同一のカードは4枚程度しかいれることができません)、などなど、自分なりの戦略でデッキを組み上げることができます。ここがトランプなどの一般的なカードゲームとは、本質的に異なる部分です。知っておいてください。
 TCGはスターターセットなどの初心者向けセットを、5枚〜15枚程度がランダムに封入されたブースターパックを買ってだんだん強化していきます。カードはプレイヤー間で交換して育てていきます。これが「トレーディング」の由来ですね。TCGのカード単品を売買するショップやWebサイトもあります。

TCGのルールは厳密にして厳格

 トランプとは違って、TCGは基本的に1つのルールでプレイします。ババ抜きだたりポーカーだったり神経衰弱だったり、そういういろんな遊び方をするものではなく(やるのは自由ですが)、MTGのカードならMTGのルールで遊びますし、遊戯王なら遊戯王のデッキ同士で戦います。カジュアルに異種TCG戦とかやっている人々がいないとも限りませんが、それを言い出すときりがないので、本書では触れません。興味はありますが。
 それぞれが自分の考えたさいきょうのデッキを持ち寄って、バトルを繰り広げるのがTCGなのですが、それを成立させるためにルールが厳密になっています。そして、プレイヤーはそれを遵守します。TCGのプレイヤーにとってTCGのルールは絶対的なもので、解釈を巡っての議論も日夜行われていますし、オフィシャルな改定もよくあります。デッキが自由である以上、ルールを厳格にしなければ、そもそも遊びとして成り立たないのです。

TCGはプロフェッショナルたちの世界でもある

 MTGをはじめ、いくつかのTCGは公式または非公式で大会が開かれていて、中には賞金がでるものもあります。またプロ制度を実施しているものもあり、世界にはプロのTCGプレイヤーという人々が存在し、賞金を稼いで暮らしています。
 そういうプロの世界を支えるバックボーンとしても、ゲームルールが重要になりますが、TCGの場合はゲーム進行の基本的なもの以外のルールは、カード上に記載されていて、どんどん拡張されていきます。ブースターパックは年に数回も新しいセットが発表・発売され、次々と新ルールが追加されていきます。ここに、ゲームデザイナーの脳漿がだだ漏れになるような努力が結晶となってこめられています。
 このカードの新ルールは、ゲームのバランスを壊すほど強力すぎないか、あるいは、ゲーム自体が不成立になるような不具合を抱えていないか、など、何万種類もの既存カードとのマッチングが考えられています。そしてそれは、世界中のプレイヤーが驚き、喜び、興奮するようなものでなければなりません。TCGはそういったたくさんのプロフェッショナルが、遊びを超えて、人生のリソースを全力で注ぎ込んでいるという、そういう世界なのです。

ビジネスより過酷な世界からエッセンスを引き出す

 TCGのルールは世界中のどこのプレイヤー同士が戦っても成立するように、深く考えられて作られています。そこにファジーさはありません。決まった手順、決まった解釈、決まった対応。これらが繰り返されて、ルールの下に全てのプレイヤーは平等でいられます。先輩プレイヤーだから本体に攻撃できないとか、ベテランならダメージ二倍とかそういう忖度は存在しません(接待プレイなどという多層的で厄介なものがある場合はこの限りではありませんが)。
 TCGのルールやマナーのいくつかは、ゲームの世界を飛び出して、この現実世界のリアルなビジネスで役に立ちます。優秀なブレーンが全身全霊で考え抜いたルールのさらに頂点にあるようなルールですから、その価値は普遍的であるというのもうなずけます。そして、そのエッセンスは、凡人たちが後付けで建て増しを繰り返した、この不完全な現実世界を補強し、潤滑油となり、強力なブースター、時として事態を決着へと導く切り札にもなりうるものなのです。

7つのエッセンスで現代ビジネスのバトルフィールドを渡り歩け

 この本のタイトル「エンター・ザ・バトルフィールド、」は、MTGのカードで多く使われる言葉で、あるカード(の生物、戦士など)が場(ゲームのテーブル)に出されたとき、何かが起こる場合に示される言葉です。
 あなたが、会社に出たとき、電話に出たとき、客先に着いたとき、会議室に入ったとき、必ずなにかが起こっています。メールが届いたときも、送信したときも、なにをしても、それはすべてビジネスのバトルフィールドでのできごとです。現実ではルールを守らなくてもプレイは続行されますが、そこには見えないペナルティが課されています。見えないペナルティは見えない小さな失敗を生み、いつしか取り返しのつかない強大なトラブルとして、突然出現するでしょう。それは目をつぶって丸木橋を渡るほどのリスキーな行為です。
 まず、目を開きましょう。そして、この本の先を読んでください。ターゲット、コスト、パーミッション、スタック、トランプル、アンタップ、ターンエンドの7つのエッセンスをあなたに伝えます。うまく使ってください。


7つのエッセンス!

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