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自前の文化の味わい方を、僕らはまだ知らない

こんにちは。秋田県由利本荘市でごてんまりを作っています〈ゆりてまり〉です。

○名前とビジュアル以外何も知らない

ごてんまりの活動を続けて4年ほど経ちますが、未だに多くの人にとってごてんまりは謎あふれる未知の存在なのだよなぁと思います。
知名度自体は決して低くないのですが、名前以外の何かを知っている人はほとんどいません。

つまり、

・誰が作っているのか
・どこに行けば教えてもらえるのか
・歴史
・柄の意味や種類
・作り方
・材料
・なぜ”ごてんまり”という名前なのか、名前の由来

を、ほとんどの人がまったく知らないのです。

名前とビジュアルだけまかり通っていて、その素性は一切知られていません。
まるで幽霊みたいです。
私たちは由利本荘市というごてんまりの聖地に住んでいながら、ごてんまりが実はどんなものかよく分かっておらず、とくに「それをどうやって楽しんだらいいのか?」という点に関しては、悲しいくらい何も知りません。

せっかく地元に素晴らしい芸術・文化があるのに、名前以外何も知らず、味わい方がよく分からないというのは非常に残念なことだと思います。


○なぜ知らないのか、その原因

これはごてんまりの作り手が減ったということも一因だと思いますが、ごてんまりに関して語ることの出来る存在がいないことに最大の原因があると思います。
というのも、ごてんまりは見た目と名前に関してだけは、由利本荘市ふくめ秋田県民にかなり広く認知されています。
全国ごてんまりコンクールなど、まりそのものを見る機会はあるからです。

問題はその展示方法です。

※ぜひリンク先をご覧下さい。これが一般的なごてんまりの展示風景です。

大小様々なごてんまりが吊され、あるいは展示ケースに並べられています。
ポスターは貼られていますが、キャプションや解説など一切用意されていないことが分かるでしょう。
ごてんまりの展示は、このように鑑賞を手助けしてくれるような副材が用意されない場合がほとんどです。
展覧会といえば、作品の下の方に作品名と作者の名前も一緒に掲示されるのがふつうですが、ごてんまりの展示にはそれすらもありません。
(なぜか全国ごてんまりコンクールだけは作品名と作者名が掲示されます)
展示されているモノは本当にごてんまりだけ。
鑑賞者にとって、ごてんまりの展示はビジュアル以外得られる情報がゼロなのです。

そしてこれまた非常に不思議なのですが、ごてんまりの展示には関わった人が情報を出さないというか、自分たちに繋がるような痕跡を極力残さないという特徴があります。


これでは、市民にビジュアルと名前以外のことを知ってもらえないのも当たり前です。
仮に展示をご覧になり興味を持っていただけたとしても、ごてんまりを「学びたい!」「欲しい!」という気持ちがスムーズに満たされることはありません。
なぜなら作り手も展示の責任者も誰一人名前を出さないので、どこに連絡したらいいか分からないからです。

あぁ、なんてもったいない…。

先に紹介したフォンテAKITAの展示も、「企画 由利本荘市観光協会」とありますが、すぐ連絡が取れるような電話番号やメールアドレスなどは書かれていないですね。

ごてんまりの展示を見れば分かるとおり、ごてんまりは作る人間もいるし、展示をする人間もいます。
しかし責任を持って”語れる”人間がいません。
そのことがごてんまりの存在を認知しながらも、味わい方が分からず見る人が関心を持ちにくい、あるいは関心を持ったとしても熱が冷めやすい構造を生んでいるのだとしたら、大変不幸なことです。
しかもこれは不幸な”事故”ではなく、”人災”です。
人によって生み出され、人によって解決できる問題です。

だからこそ、わたしはごてんまりを”作れる”だけでなく、”語れる”ようになりたいです。
自分自身でもごてんまりを作れるし、きちんとごてんまりについて勉強していて、文献なども触れながら筋の通った説明のできる人間になりたい。
そういう”語れる”人間がいたほうが、人々の関心をひきますし、地域の文化レベルを確実に上昇させます。
ただポンとまりを見せるよりも、いろいろと言葉を使って説明した方が知的好奇心が刺激されて、
「ではこれはどうなっているんだろう?」
「ここをもっと詳しく教えて欲しい!」
と、ごてんまりにより興味を持ってもらえるでしょう。

それこそが”文化を味わう”ということです。
「自分でもやってみたい!」
「この作品を自分の目で実際に見たい!」
と思う気持ちは、ごてんまりを広めると同時に、観光にも直接結びつきます。
文化について語れる人間のいるほうが、地域経済にとっても有利なはずです。





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