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父、おばあちゃんになる。心温まる家族の物語|映画「ミセス・ダウト」

「料理をしていたら、変装用の胸がコンロで燃えてしまった!」
子供の頃に観た映画の中でも上位に入る、印象的だったシーン。
鍋の蓋をバフバフと押し当てて消火する姿は強烈なインパクトだった。

映画のタイトルは「ミセス・ダウト」

お父さんが変装して家政婦になるコメディだ。
子供の頃は楽しんでいたけれど、大人になってじっくり観ると
「あれ?ドタバタ喜劇じゃなくて、結構シリアスな家族の話?」
と印象が変わったので、発見があった部分を書き留めたい。


あらすじ

俳優のダニエルは失業中。子煩悩な父ではあるが、妻ミランダは一人で家計を支え、彼が勝手に行った盛大な誕生日パーティー(動物園を自宅に呼ぶ)の後片付けをしたある日、とうとう離婚を切り出す。裁判所から面会は週に1度と定められたダニエル。審議は継続されるものの、その状況に耐えられず、特殊メイクアーティストの手を借りて60歳の女性と偽り、家政婦となって家族のもとを訪れる。

noteに書くなら、アマプラで見られるものをと思っていたけれど、今回の作品はアマプラ無料対象外。ご了承ください。(アマプラのレンタルなら300円)
Amazonで安くなっていて、思わずBlu-rayを購入してしまったのです…。

原題は「Mrs.Doubtfire」
主演 ロビン・ウィリアムズ

ダニエルの失業

昔、観た時の記憶は「仕事の無いお父さんが子どもに会えなくなって女装をして家政婦になるけど、家事も下手でドタバタするコメディ」だったけれど、大人の目で見れば、気がつくことが多い。

まず、彼は働く意欲がないとか、技術がないわけではない。

この映画は冒頭から、かなりの時間、彼が声優としてアニメーションにアフレコしている様子が流れる。歌あり、アクションあり、コミカルなシーンを実に巧みに演じる。

しかし、キャラクターがタバコを吸うシーンに
「子どもに喫煙をすすめるようなものだ」
と抗議して、失業するのである。

彼がいたのが、もう少し先の未来だったら……!
と歯がゆくなってしまった。

家政婦になった方法

家を出た後、妻が家政婦を探していると知ったダニエルは、求人原稿の電話番号を書き換えて他の応募が届かないように細工をし、何人も「異常な応募者」を演じて電話をかける。
そして嫌気が差した頃、最後にミセス・ダウトとして登場する。

妻のミランダは、喜んで採用。
……怖い。

この計画性と執念で仕事を掴んでほしかった!

シーンは駆け足でポップに進むけれど、正直、ちょっと引いてしまった。
この時点で主人公は正常な人ではない。と感じてしまう。

子どもはどちらの肩も持っていない

ダニエルには3人の子どもがいる。そして3人共、妻のもとで暮らしている。
父親が大好きな3人の様子に、子どもの頃は「みんなお父さんが大好きなのに離れてかわいそう。」と思ったけれど、この映画はしっかりと
父が一人で暮らす荒れた部屋での食事に嫌な顔をする子どもたちや
「ママにやさしくして。」とダニエルに語る子どもたちを映している。

一方で、家政婦を雇うときいて「パパに頼めばいい。」と言うシーンもある。
娘も息子も、どちらかの全面的な味方ではなく、でも両親共に愛していたのだ。

この映画の結論

とにかく家に戻りたいダニエルは、ミセス・ダウトとして家族と接するうちに少しずつ変わっていく。裁判所での訴えも裁判官の胸を打つ。
だからこそ、子供の頃は、この結末に「なぜ?」と思っていた。

でも、今ならわかる。きっと、最終的な裁判所の決定や妻の決断は妥当。
これ以上の結末であってはいけないのだ。そして、ダニエル自身もそれが良いと納得している。だから、誘われても家に入らなかった彼は笑顔なのだ。

特典映像

Blu-rayには、本編に採用されなかったシーン集が入っていた。
ここには様々なエピソードが含まれていたけれど、個人的には
「ダニエルの好感度が下がるシーン」が除かれた印象を受けた。
冷静に見れば、ダニエルは養育権を争う者として、かなり分が悪い。
ちょっと、これは良くないね。と思う部分が少しでも多ければ、本編の最後があの形では納得できなかったかもしれない。かなりバランスを意識して作られたのではないだろうか。

まとめ

最後まで観た後に、子供の頃は「ダニエルかわいそう」「応援したい」気持ちが強かったことに気がついた。
映画としても、裁判所が養育権を与えなかった男だけれど、観客には「子どもに会わせてあげたい」気持ちで見て欲しいと工夫されていて、それを素直に受け取っていたのだろう。
そこにロビン・ウィリアムズの演技や、憎めないキャラクターが一役買っているのは明らかで、家族が見破れないような女装をしていることを除いても、かなり難しい役柄なのだなと、改めて彼の演技に感動してしまう。

掃除をしながら踊りまくったり、ダブルブッキングして早着替えしたり
記憶の中ではポップな映画だったけれど
見返してみると、離婚を選択する家族を繊細に描いた映画だった。

一つの映画でここまで印象が変わったのは初めてだれど、
昔も今も心が暖かくなる物語であることは変わらない。
子供の頃は全力で子どもを思う姿に。
今は少しずつ変わっていく姿に胸を打たれた。

ラストでミセス・ダウトが語る家族の話。
実は特典映像内のミランダのセリフが絡んでいる。

あの時の言葉が、ダニエルに響いているのだろう。
今の家族を受け入れている彼の姿は
やっぱりハッピーエンドだと思う。

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