#創作大賞感想『ドシャえもん』 はそやmさん
はそやmさんと言えば、やはり何と言っても
骨皮筋衛門!!!
という方も多いのではないでしょうか。
あの伝説の必殺技「ヒラリ・クルリ・プルン・ボスン」を引っ提げて帳面町を闊歩する骨皮筋衛門の捕物譚のアレコレは、まさに脱力系ユーモアの金字塔。
そのはそやmさんが、『創作大賞2024』の締切まで残すところあと1週間を切った……! というタイミングで突如として電撃投下されたのが、この『ドシャえもん』です。
このタイトルを見て、あの国民的、いや世界的なコミック(及びアニメ)を思い浮かべない方はいないでしょう。
でもそれと同時にある程度の年齢の方ならば、水死体を意味する「土左衛門」を思い起こす方も多いのではないでしょうか。しかもサムネイルは美しくも不穏な空気をまとった川の画像。
もう、このタイトルからしてやられました。
国民的人気キャラと、水死体を表す隠語の不吉不穏なマリアージュ。
果たして読み始めたら……どこにも「ヒラリ・クルリ・プルン・ボスン」の影すら見当たりません。
狂気です。物語全体が、うっすらと狂気の膜で覆われているのです。
それは確かなんですが。
――これは、誰が狂っているの?
読者がフォーカスしたところは、なんか正しい気がするんです。
「ああそうよね、辛いよね」と。
でも何か、どこか変なんです。
同じ子どもでもこんなに扱いが違うなんて。その不公平さに、私の心の中の不安が黒いものへと変化します。ドロリ。(第3話)
世の中にホラーのジャンルは多々ありますけれど、ユーモアがホラーに変化したものというのは、また妙にリアリティを感じさせるということに気づきました。
「ドシャえもん!ドシャえもん!」
と激しくバケツをかき回し始めたのです。いや、かき回しているというより、激しくつついています。水がビシャビシャとそこら中に飛んでいます。(第4話)
読んでいるうちに、私はいつの間にか息を詰めていたようでした。
第5話の主人公のこの場面で、思わずつられて息を吐いてしまったことを覚えています。
「ぶはぁっ!」
なぜか私は長く潜った時のように息を吐き出していました。いつの間にか息を止めて心愛ちゃんの行動を凝視していたようです。(第5話)
この時代、みんな多かれ少なかれ、心の奥に闇を抱えているのかもしれません。それでもみんな、何とか平衡を保って生活しています。
でもその制御システムが、何かのきっかけで壊れてしまったら……。
その心の奥の闇がじわじわと洩れ出してくるのかもしれない。
そんな人たちの受け皿になろうとした大家さんもまた、どこか何かを抱えているのでしょうか。怒涛の最終話では、救いと混沌が混じったような不思議な感慨を覚えました。
とにかくはそやmさんの、この短期間での見事な走りっぷりに脱帽しかありません。
ご本人によると「人生初のホラー挑戦」なんだとか。
……そうですか。初挑戦でコレですか。
ホラーに関しては読むのも書くのも超絶苦手なワタクシからすると、信じられない思いです。もはや嫉妬心も湧きません。
ぜひまた、はそやmさんの「こっち系」を読んでみたいものです。
最後に一言。