#創作大賞感想『ダイヤモンドより無価値なわたしは』 岩月すみかさん ~「ぼくらの創作大賞2024」紹介作品
先日、創作大賞2024の中間発表がありましたね。
残念ながら秋しばは全敗しましたが、それをきっかけに、Uさんというクリエイターさん主催の『ぼくらの創作大賞2024』という企画に参加させていただきました。
こちら、言ってみれば「他薦による創作大賞」。惜しくも中間選考突破とならなかった膨大な作品群の中から「とにかく自分のイチ推しを挙げよう」という趣旨です。
たとえ選考には通らずとも「このまま埋もれさせるのは忍びない」という読者の想いが込められた作品群を見るうちに、私はある記事に目を留めました。
む、このタイトル、間違いなく大賞期間中に見かけたことがある。
でも私が今回新たに気づいたのは、そのタイトルの陰に小さく表示された著者名です。私は慌ててとあるサイトを確認しました。
――間違いない、彼女だ。
第一回 あたらよ文学賞『夜』にて、見事優秀賞となった作品
『こはねに勝てないなら死ぬ』の作者、岩月すみかさんです。
『こはね……』のストーリーについては、ネタバレになっちゃうのでここには書けません。
ですが、あたらよ文学賞の最終選考に残った大賞を含む作品群の中で、この物語が私に途轍もなく強烈なパンチを見舞ってくれたのは間違いありません(褒めてる! 褒めてるんですよ!!)。
ものすごく失礼を承知で言えば、『こはね……』も、そして今回の『ダイヤモンドより無価値なわたしは』も、万人ウケする話とはちょっと路線が違うかもしれません。岩月さんが描く主人公のどことなく斜に構えたような(と見せる)語り口に、違和感を覚える方もいるかもしれません。
(特に人生を謳歌し、軽やかに毎日を歩む人にとっては)
でも読む人によっては、間違いなく「刺さる」と思うのです。
人生を不器用に、泥臭く生きるしか術がなく。
世間でもてはやされる人やモノへ冷めた視線を注ぎつつ、かすかな憧れと羨望を諦めで包むしか手段を知らなくて。
己の中に潜む望みなど叶うはずがない、と悟った顔をして、その願いが微塵に砕かれようとも、泣くことすら自らに許さないような意固地な人々。
そんな人々の声にならない声、流したくても流せない涙、吐きどころを間違えた怒りは、私のものであり、またあなたのものでもあるかもしれない。
そんなことを思うわたしは薄情でしょうか。死にたがりの男の子みたいに、母の死から命の尊さを学ばんと、母の死を悼んだことにはならんのでしょうか。(第1話)
読むほどにちくりと刺さる言葉の数々は毒と涙の塩梅が絶妙で、読む人の心に強烈な揺さぶりをかけてきます。ちっぽけな、でも確固たる己のスジを通すために突っ張り通す人々に、幸あれ救いあれと願わずにはいられない。
それが岩月さんの物語です。
そんな独特の世界観に惹き込まれてつい忘れがちになりますが、比喩や描写の仕方にも卓抜した個性と魅力があり、岩月さんの世界を構築する重要な要素のひとつと言えるでしょう。
森川は生まれながらの委員長みたいな人で、眼鏡のフレームも目じりの際もどこか角ばり、この学校で一番つまらない制服の着方をしとります。
(第2話)
世の中の常識やルールからは外れるような設定も時には出てくるのですが、それを見事に物語へ惹き込む求心力として書きこなせる筆力は、まさに圧巻です。
全八話ですが、読み始めたらあっという間(笑)
ぜひぜひ岩月さんの世界を覗いてみてくださいませ。
さてそれでは恒例(?)の最後に一言。
タイトルのつけ方がかっこよすぎ!!!
*参加させていただいたのはこちらの企画です。マガジンには素敵な作品がたくさんありますので、ぜひご覧ください!!