人と組織.17 - 経営者の合理的判断こそが会社を弱体化させる
経営上の意思決定は、全てトレードオフ。
そこには様々な矛盾がある。
例えば、短期的利益と長期的利益のどちらを優先するか。
大方の経営者が、口では長期的視点や全体最適等といった発言はするものの、現実の判断や意思決定は短期利益の追求そのものである。
勿論、上場企業であれば、株価や投資収益性等を市場から問われるということも否定はしないが、本質的に短期的視点しか持ち得ていないのである。
例えば、人間の合理的判断の代表的なものとして、
①「全体最適」と「個別最適」の不一致により生じる矛盾。
例えば、個人或いは組織が全体最適を捨てて、個別最適を追求し結果的に失敗するというパターン。
②「長期的な利益」と「短期的な利益」の不一致により生じる矛盾。
例えば、個人或いは組織が長期的な利益を捨てて、短期的利益を追求し、結果的に失敗するというパターン。
人財への教育投資等も全くこのパターンにあてはまる。
教育に投資しても、教育に時間を費やしても、業績向上や新規事業開発等の個別合理性や短期的利益には、結びつかないというのは自明の理である。
人は、予測出来ないこと、見えないことは、リスクと捉えるのである。
何故ならば、長期的な活動はやってみなければわからないからである。
長期的な帰結や利益というのは、誰の目から見ても明らかになっていなければ、現状の「やり方がうまくない」「非効率である」と感じていてもなお、現状を維持した方が合理的であるという、いわゆる限定合理性という不条理に陥ってしまうのである。
こうして本来は、改革しなければならない課題が、改革されることなく放置され続けるのである。
将来のこと、長期的なことは、どんなに分析しても予測は出来ない。
然しながら、分析しても予測出来ないことだからこそ、経営に携わる人間の考え方や能力がまさに問われるのである。
経営者が構想する「将来の我が社の在りたい姿」に帰結させるために、「見えないこと」や「予測出来ないこと」にどれだけ自分の思いを持って推進出来るかどうか、そして、その前提は、短期的にはマイナスであったとしても、長期的には我が社の将来により良い結果をもたらすいい循環に結びつくような意思決定が、出来るかどうかが問われるのである。
経営とは、目に見えないものを見るということではなかろうか。
逆説的にいえば、短期的利益を無視して、目に見えない長期的な成果を追求するという判断は経営者にしかできないことであろう。