【実写レビュー】ライカQ2を買って写真の表現は広がるのか?“オマケ”で付く約80万円レンズがエグい描写力と万能性
突然ですが、「Leica(ライカ)」を買いました。多くのカメラマンが憧れると言われる高いカメラです。SONY、Canon、Nikon、富士フィルムなどの日本のカメラメーカーよりも歴史が古い、1914年にドイツで生まれた「ライカ」は世界中のプロカメラマンが愛好する特別なカメラです。
「ライカでしか撮れない絵がある」、「ライカで撮ったら良い写真」など絶賛するライカマンは多く、トロフィー的権威を感じさせるため、個人的には敬遠していました。しかし、尊敬する写真家のuhimaru氏に強く推薦され、熟考の末に購入したのが「ライカQ2 "Reporter"」オープン価格84万7000円です。
結果として、確かにライカでしか撮れない絵はありました。しかし、AF(ピントを被写体に自動的に合わせてくれる機能)、手ぶれ補正、瞳オートフォーカス、ノイズ除去などのサポート性能に優れた国内メーカーのデジタルカメラの利便さと比べると扱いにくい。国内メーカーよりも値段が高いのに、撮り方を間違えるとそこまで差別化した絵が撮れないこともあります。購入してまだ1ヶ月あまりですが、ライカ社審査制フォトギャラリー「LFI」でもポートレート2作品が認定されましたので、ポートレートでの使用感をお伝えします。
開封の儀
おすすめアクセサリー
(1)予備バッテリー(2万2000円)
遠征時や1 日撮影だとバッテリー1個では心もとないので。
(2)ライカ純正のレンズ保護フィルター「フィルター E49 UVA Ⅱ ブラック」(1万6500円)
約84万円のレンズだと考えるなら、保護フィルターは付けたい。純正じゃなくてもいいんですが、ライカのロゴが入った純正のほうがカッコいい気がしました。
(3)リングカバー付きストラップ アルティザン&アーティスト「ACAM-306N」(1万9250円)
購入時付属のストラップはリングカバーがないので本体に傷をつけないため、リングカバー付きのストラップに付け替えましょう。こちらも様々なメーカーから多種多様なものが出ています。私はライカQ2と同じカーキ色にしました。
(4)ボディプロテクター 「リムズ LC-Q2DBK1」(2万6620円)
もちろん、剥き出しのままの外観を楽しむのもいいんですが、グリップによる片手持ちの安定度を高めてくれたり、三脚に取り付けやすくしてくれたりするプロテクターも買いました。こちらも様々なメーカーから発売されています。私はバッテリー交換や、SDカード取り出しの邪魔をしない設計を選びました。
ライカQ2、実はお買い得!?
高価なカメラと言っておきながら、お買い得とはこれいかに。理由は3つあります。
(1)ライカQ2はボディ・レンズ一体型であること。
まず、ライカといえば、レンズ交換できる「ライカM」が一般的です。最新の「ライカM11」がボディだけで129万8000円。ここから名玉と言われる専用レンズを買うなら、50万円〜100万円の高価格帯になります。
しかし、ライカQ2はレンズ交換できないものの、付属のレンズ「ズミルックス28mm F1.7 ASPH.」がライカ最高峰の名玉です。広角域なのに歪みが少なく、非常に上質な描写を見せてくれます。
同レベルのM型交換レンズだと、「ズミルックスM 28mm F1.4 ASPH.」(約93万円)が挙げられるため、ライカQ2は約84万円払えばボディだけでなく、同価格帯のレンズが一本おまけで付いてくるとも考えられます。私が持つSONY最高峰のレンズ24mmGM、35mmGMでも約20万円なので、約4倍もするなら、画質は良いに決まってますよね。しかも、こちらはライカQ2ボディと一体化しているため、交換型よりもレンズが小さく、性能が勝る面もあるとか(どこかのライカ社インタビュー記事にありました)。今後、レンズ交換できるライカMを購入したとしても、ライカQ2を手放す必要はありません。ライカM交換レンズは50mm以上をチョイスすれば良いのですから。
(2)私が購入したのが、記者向けの限定モデルのReporterであること。
ライカの良いところは、各世代機種ごとに持ち味があるので新型が出ても値崩れしにくい点です。とくに限定モデルは価値が高い。2023年中にはライカQ3が登場するのは予想できますが、それでも限定モデルの価値は下がりにくいんです。また、ライカQ3は画素数が6000万近くまで上がる可能性がありますが、ISO感度が下がって暗所で撮りにくくなるので、そこまでの画素数は自分に不要です。
それでいて、Reporterはライカだと気づかれにくい控えめな外観を重視。そして、堅牢性に優れています(外装に優れた耐久性で知られるアラミド繊維素材を採用、カメラ本体のマットグリーンカラーの仕上げには耐傷性と耐摩耗性があるペイントを使用、埃や雨の侵入を防ぐ防塵防滴仕様)。壊れにくいことは何よりも重宝します。
(3)クロップ撮影とマクロ撮影ができること。
4730万画素の35mmフルサイズセンサーを採用し、28mm、35mm(約3000万画素)、50mm(約1500万画素)、75mm(約700万画素。※A3サイズプリントの鑑賞でも耐えられる画素数とのこと)と、画角を変えて撮影できます。
そして、通常の最短撮影距離30cmから、レンズの根元を回すだけで最短撮影距離17cmのマクロモードに切り替えられます。これ1本で複数のレンズを兼ねているようなもので、複数のレンズを持っていく必要がありません。
ちなみに4K動画も撮れます。ライカっぽいノスタルジーな雰囲気でした。
実写:光の捉え方、白と黒の描写力が圧巻
ここからは実際に撮影した写真を見ていきましょう。私はSONYユーザーなので、SONYα7RⅤやGMレンズと比べての所感になります。
※ご注意ください。私がいつものSONYで撮影した場合と比べてなので、あくまで個人的な感想です。
大前提として、ライカは柔らかい光の捉え方とレトロチックな色調が持ち味です。「色の諧調に奥行きがある」と表現すればいいのでしょうか。とくに白と黒は優れている印象です。白は淡白にはならず、黒は色潰れしにくく粘りがあります。
スナップ撮影にしても、「ズミルックス28mm F1.7 ASPH.」の描写力がすさまじく高いです。圧倒されるような上品さ、雰囲気まで切り取るような質感は、何を撮っても特別な一枚に感じさせてしまう力があります。
人物撮影においては、自然光や環境光を活かした撮影が最もポテンシャルを発揮できる気がします。ライカQ2もストロボを使うことができないわけではありませんが、SONYと似通った写真にしても意味がない気がしました。LEDライトも使い過ぎてしまうと、ライカっぽく無くなる感じがしました。
野外で際立つ黒の美しさ
モデル:ひのきお(Twitter:@hinokio_q、Instagram:@hinokioq)
ウィッグ:shotac(Twitter:@shotac_)
レフ板も使わずに撮影したのですが、逆光が強くてもフレアが出にくく、黒つぶれがしにくいのはもちろんですが、ここまで人物がかすれずに黒が持ち上がるのは驚嘆でした。同じ条件でSONYを使って撮った場合、解像度が落ちた写真になる気がします。
野外の逆光時にレフ板なしで、これだけ黒が上質に映し出される、決して黒つぶれしない、光が強くても柔らかく捉えてくれるのには脱帽です。
スタジオでも淡白じゃない白の諧調表現
モデル:劉甜(Twitter:@6ten_28、Instagram:6ten_28)
ヘアメイク:Miyako 霊子:@miyako_cheng、Instagram:miyako_reiko)
スタジオ:ショートケーキ(Instagram:@studio_shortcake)
自然光が入るスタジオで白系の衣服を撮影した写真を見てみましょう。こちらもSONYで撮った場合は、綺麗だけど淡白になりがちです。ライカQ2であれば、洋服やスタジオの白い諧調を広く表現してくれるので、味わいのある写真になります。
そして、こちらでも光を柔らかく捉えてくれていたから、スタジオの雰囲気が活かせました。
ちなみに、ライカQ2で撮る時はクロップ撮影しても元データが残るRawがおすすめですが、Jpgのほうが色味は良い印象でした。レタッチする際は、撮って出しである程度方向性が決まるため、強引なアレンジをするとデジタル調の色合いになってしまいました。ライカでしか撮れない絵でもあり、ライカはこういった絵しか撮らない、というメーカーのこだわりがあるのでしょう。
好き嫌いが分かれるとは思いますが、フットワークが軽く、極めて上質な描写力を持つのは間違いありません。一方で、SONYαRⅤと比べるとアシスト機能がほぼないので、撮影する上で不便なことが多いです。光をしっかり捉えた構図作りができないと、ポテンシャルを発揮できないカメラでもあります。私は同じ画角のGRⅢやiPhone Pro14で練習して、ある程度納得いく絵が撮れてから購入を決断した経緯があります。ライカは本当に値段相応の価値があるのか、これからも追いかけて行きます。
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