鶴澤奏さん ピアノリサイタル'22
ソノリテからデビューアルバム「An die Musik」をリリースした鶴澤奏さんが、11月25日(金)に約1年ぶりの日本でのリサイタルをけやきホールにて開催します。
今年も素敵なプログラムを用意してくれました。チラシには、リサイタルに寄せた鶴澤さんの思いが裏面に記されています。
音楽と向き合うことは、作曲家の心の声に触れることであり、自分の魂の内側を見つめることでもある……これが鶴澤奏の音楽家としての信条です。今回のリサイタルに際し、またインタビューを敢行してみました(訊き手:ソノリテ 内藤 晃)
“ひと”を映し出す音楽
ー 僕は鶴澤さんの音楽に強いシンパシーを感じるのですが、過去の録音を聴いてみると、この数年で劇的に演奏が変わったように思います。
「リー・カムシン先生のひたむきな姿勢に感化されたところが大きいです。先生が音楽と対話される姿を間近で見てきました。演奏家とは、音楽と人のあいだに立つ存在にすぎず、むやみに音楽で自分を表現しようとするのはおこがましい。音楽を通じた旅をみなさんと共有するのがわたしたちの仕事ですから…。それでも、音楽は“ひと”を映し出すんです」
「バンクーバーに来てから、とあるホームパーティーでMark Ainleyさんと知り合いました。おびただしい数の往年の演奏家のレコードを収集されていて、The Piano FilesというYouTubeチャンネルを運営されたり、ディヌ・リパッティ協会を主宰されたりしています。彼と交流させていただくなかで、Evlyn Howard Jones(1877-1951)やBruce Hungerford(1922-77)など、素晴らしい演奏家をたくさん教わりました。心動かされる音楽に出会うと、なにかに衝き動かされるように音楽を求めるようになります。そして、音そのもの以上に、その演奏にあらわれた“ひと”に惹かれるようになりました。音楽の楽しみ方が変わり、純粋に音楽が好きになったのは、バンクーバーに来てからです」
ー “ひと”が演奏にあらわれるって、どういうことでしょう?
「演奏で、何かをしようという欲が前に出てしまうと、瞬間的には“おぉっ!”となっても、そもそも音楽の文脈の辻褄がどこか合わなくなって、作品の世界に連れて行ってもらえなくなる感覚がわたしにはあります。音楽に無理を強いていない演奏が好きですね。そういう演奏に触れると、“耳で音を聴く”という関係を超えて、心が音楽の世界に連れて行かれる。そのときはじめて、その世界を案内してくれている“ひと”の存在とか人柄が伝わってくるんだと思います」
ー 鶴澤さんの音楽もまさにそのような音楽ですね!
「そうありたいと願っています。コンサートには、CDのトラックを選んで聴く時とは違う、時間の経過とともに深まる感動があります。素敵な小説や映画のように、心が物語とシンクロしていくような感覚を、コンサートで共有できれば嬉しいです」
↑昨年12月13日のリサイタルの記録映像より
鶴澤奏ピアノリサイタル
2022年11月25日(金)19:00開演 古賀政男音楽博物館けやきホール
一般2,500円 学生1,500円
チケットお取り扱い:イープラス
J.S.バッハ: 平均律クラヴィーア曲集 第1巻より 前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV852
シューベルト: ピアノ・ソナタ 第16番 イ短調 D 845
シューベルト: 即興曲集 D899より 第1番 ハ短調
シューベルト(リスト編) 万霊節の連祷
リスト: 詩的で宗教的な調べより 3.孤独の中の神の祝福
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