【短編小説】おはよう!
あらすじ
本編
小学生の頃からの親友と喧嘩した
口をきいてくれなくなった
原因はわかっている
きっかけは先日の野球観戦だ
その日は「ガープVSバンシン」の試合があった
結果はバンシンが勝利した
私がガープファンで、親友がバンシンファン
私はチームが負けたことで悔しさのあまりつい言ってしまった
「もう、絶交!」と
決して本心ではなかった
翌朝、ぐっすり寝た私は昨日のことなどすっかり忘れて
いつものように高校へ行き
いつものように親友の背中を見つけて声をかけた
「おはよう!」
しかし、その声は受け止められることなく空に消えた…
それからというもの、私から何を言っても
親友に”聞こえ無かったこと”にされてしまうようになった
私はムキになって…挨拶をしまくった
話しかけまくった
声をかけまくった
絶交なんて本心じゃなかったから
野球の結果より大事なのは親友だったから
絶対にまた元の関係に戻りたかったから
ある日、私の様子を見かねたクラスメイトが私を心配する素振りで親友を批判した
「もう良くない?」
「あそこまで無視することないのにねー」
「なんか、かわいそー」
私はその言葉にイラッとした
まるで親友が悪者のような物言だったからだ
悪いのは私なのに
ただ、そんな事情を外野に説明しても仕方がない、とも思った
「ありがとう、でも私と彼女の問題だから、親友のこと悪く言わないで」
「あ、うん…」
もしかしたら、その時の私の顔はちょっと怖かったかもしれない
1人で下校していたある日
バンシンのキャップを仲良くかぶる二人組の少年を見て私は「これだ!」と思った
私はすぐにその足でバンシンのキャップを買いに行き
翌日それをかぶって、親友へいつものように挨拶をした
「おはー、ようっ!」
帽子に加え、私は昨夜研究したバンシンの有名選手のモノマネも披露する
時が止まったようだった
「やりすぎた…」と私は少し後悔した
すると
「だははは!」
親友が吹き出したのだ
「なんか似てる…!くく…でも絶対ディスってるよね?ふざけんなよー、もー!」
私はやっと救われたような、温かい気持ちなる
「でもさ…モノマネするんだったら…もっと本気でやってよね」
そう言って親友はカバンから何やら取り出す
ガープのキャップだった
制服の中にはガープのユニフォームまで着込んでいた
そして、そのまま私に向かって
ガープの有名選手の“モノマネ返し“を超クオリティで真剣に披露したのだ
「だーははははは!」
私も思わず吹き出した
私はもはや自分が何に対して笑っているのかわからなかった
親友の顔やポーズの面白さを起爆剤に
嬉しさと温かさが相まったカオスだけど悪くない感情が体の中で爆発していた
喧嘩していたのも忘れ、叫び声のような笑いで盛り上がるそんな私たちを
周囲のクラスメイトが「ついて行けない」というような遠い目をしながら取り巻いていた