句会ライブ in 寝屋川市立市民会館
昨日、夏井組長の句会ライブに初めて行ってきました。組長がすごいのは、お客さんと会話しながら面白くなる方向へ話をひっぱっていってくれるところ。鬼のように当意即妙です。もう、むちゃくちゃ笑わせていただきました! 上沼恵美子の代わりにクギズケ!の司会よゆうで出来はると思います。
「いつき組の中にかたまって俳句を研究してるややこしいグループがいて、独特な空気をかもしだしている。だまっていても誰がグループの人間か私にはわかる。そのオーラがむんむん出ている」
という意味のことを仰っていて(この言葉通りではもちろんないです)、私はそのグループの一員ではないですがすみません、死ぬほど笑かせていただきました。だいたい他の方が言うとエッというような内容でも、組長が言うと様になるんです。
わたし最初、NHK俳句や俳句ポストで類想や凡句を名前付きで全国にさらすのをエエッいいの?怒られないの?と吃驚したんです。句会ではよくあるのかもしれませんが、全国に、だし。でも慣れてくると、これがないと物足りない(笑)。名前さらされたくないからがんばろうって思える。こういう動機は邪道なのかもしれないけど、仕事でも「間違ったら恥ずかしいからしっかりマスターしよう」が一番上達する。私はそうだった。凡句でも全国放送されるの嬉しい、という方も中にはいらっしゃるかもしれませんね。
駅から会場へ行く間に一句できたので、それを出そうと思っていたら「テーマを決めてやります」とのこと。で、玄関の写真で一句、になってしまった。でも、これがスリリングでおもしろい。即詠を大切にされているのですね。
特選七句は無記名状態で、みんなの拍手の大きさで一位を決めます。私が入れたのは押見げばげばさんの句でした。
判捺すか否か暮春のドアひらく 押見げばげば
げばげばさんはあちこちの媒体に句とお名前が載っている有名な方です。私は「家を売る押印」と読みました。家を売るのってなかなかの勇気が要ること。署名はした。しかし印を捺してしまったらもう後戻りできない。生まれ育った家が他人の手に渡る。ドアが開く、待ってくれない。時間が迫る。捺さねばいけないのはわかっているが、ふんぎりがつかない。季語「暮春」に迷う気持ちが出ていて巧い。
げばげばさんのお話によるとご友人の借金とのことでしたが、この方は解説も上手でした。そう、みなさん評もすごく上手で、評を聞いてから改めて句を読むともっとよい句に見えたりして、句作だけでなく評をうまく語れるようにもなりたい。
げばげばさんのXでのお言葉ですごく好きなのは「楽しみながら詠もう」。すごく嬉しかったです。句作も歌作も、すべての創作はまさにこれなんだ、と思いました。
開襟の湿布はみ出る父の首 にゃおっく
特選に残ったこの句も好きで、暑いからって開襟したら湿布でちゃってるよお父さん!って、ユーモラス。これ実は作者のお父さんじゃないんです。組長にいじられていた最前列のご夫婦の旦那様の湿布を、にゃおっくさんが後ろの席から見ていて詠まれたとのこと。エエッすごくないですか! ほんとうに、これぞ即興即詠ですよね。
ほか、句を紹介された皆さん、おめでとうございます。
ライブのあと、句集伊月集「鶴」を購入しました。もちろんサイン会にも参加。この前日にも滋賀県大津市で句会ライブされて、選句、サイン会されて、今回みたいにおそらくひとりひとりと丁寧にお話されてます。なのに、疲れをまったくお見せでなかった。組長のお話を聞いていると、お話していると、こちらも元気が出てくるのを昨日はっきり感じました。
「鶴」好きな句がたくさんあるなかでこちら。
小舟より小舟へ露草を手渡す 夏井いつき
恋人から恋人へ露草を、あるいは文を手渡すと考えてもいいけれど、句会ライブの後なので。誰かの句に、別の誰かが評をした。それは青くほのかな露草を手渡すごときうるおいを双方の心に残した。
一本の百合のごとくに戦はぬ 夏井いつき
なんらかと戦わねばならないのだとしたら私は、たとえ一人になっても百合の気高さを失うことなく最後まで戦うのだ。こう読みました。オレンジの鬼百合もありますがここは白い百合、イメージは純粋。好奇心の赴くままに、本音で生きていく、との決意とも取りました。