インプット奴隷合宿を開催したら、合唱会が始まって全員卒業した件について。(加筆修正版)
2024年1月、僕は頭を抱えていた。長野県の山奥で。
インプット奴隷合宿を開催したはずなのに、どうして皆、歌を歌っているんだ……!?
※この記事は「ゆる言語学ラジオ非公式 Advent Calendar 2024」に参加しています。前の記事はお蘭さんの「マイクラゆサD鯖の車窓から」です。次の記事はたなぱんださんの「不覚にも堀元見の言葉に泣かされた、あの夜のこと」です。
1.はじまり
いきなり動画から始まってしまい申し訳ない。これは僕がインプット奴隷合宿を開催した際に撮った映像だ。合唱している曲は「旅立ちの日に」。そのBメロである。
ピンとこない人もいるかもしれないが、
の曲、と言われればわかるだろう。言わずと知れた名曲で、これを歌わねば卒業は出来ないと言われている。逆にこれを歌ってしまうと卒業してしまう、みたいなところもある。いやないか。
なぜ長野県の山奥でみんな揃って卒業する羽目になったのか。これには訳がある。順を追って話そう。
始まりはそう、2023年の夏のこと。
公式インプット奴隷合宿への参加
ゆる言語学ラジオのお二人が、サポーターの皆さんを集めてインプット奴隷合宿を開催しているのはご存知だろうか。サポーターコミュニティ内で参加者募集がかかり、年一回開催されている催しである。第一回は2022年に開催され、その内容はYoutubeにもアップロードされていた。あの竹刀でケツをブッ叩かれる水野さんのサムネが印象的な回だ。
僕は第一回には参加できなかったが、北海道で開催された第二回には運よく参加できた。そこで気づいてしまったのだ。
こ、このイベント、超おもれ~~~!!!ということに。
どこがおもれ~のか?参加したことのない人もこの記事を読んでいるだろうから、ちゃんと説明しておこう。
まず旅行ができる。これが楽しい。次にスピーカーのお二人と実際に合って話ができる、どころか2泊3日一緒である。たいへん喜ばしい。ゆっくり読書もできる。同好の士と繋がれる。気の合う友人もできる。最高である。来世はこれだけやって暮らしていたい。
ゆる言語学ラジオという文脈を共有する友人ができたこと、そして彼らと語りあえたことは、何にも代えがたい幸福だった。夢のような三日間を終え、僕は胸いっぱいのしあわせを抱えて帰路についた。
帰宅後
合宿を終え、家に帰って風呂から上がったあと、僕はベッドでゴロつきながら思い出に浸っていた。といっても、「おもれ~!」「またいきて~!」ぐらいのことしか考えてはいなかったが。
さて、いやしかし、ここに大きな分かれ道があった。
おもれ〜!と感じた。これは参加者全員にいえることだろう。またいきて~!と強く思った。これも、もれなく全員に当てはまるだろう。そして多くの参加者は、次の年の奴隷合宿に向けて、数日間の有給を残しておこうと密かに決意したはずだ。
話はこれで終わりである。本来ならば。
だが、僕は思ってしまったのだ。自分でもできるのでは、と。幸いながら僕には、学生という自由な身分と、ありあまる時間と、いくばくかのイベント開催経験があった。それらが僕にささやいた。「ほら、開催できるんじゃない?奴隷合宿!」と。
奴隷合宿を自分で開催する。思いついてしまえば、これほど甘美な響きを湛えた一文はない。できるかも、いや絶対に開催する、そう心の中で思った。
思ってしまったなら、もうやるべきことは一つだ。僕は高校時代、プロシュート兄貴に教えを請うた身である。オレたちはな!その辺の居酒屋やTwitterで「開催しよっかな~」「こんなのやりた~い」と口だけ達者で何も行動しない負け犬どもとはわけが違うんだからな。「絶対に開催する」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は始まっているんだッ!
体はもう動いていた。PCを立ち上げ、Notionを開く。非公式インプット奴隷合宿のしおり、と素早く題名に打ち込んだ。あとは思いつくままに、湧き上がるアイデアのままに、頭の中のすべてを書き込んでいくだけ。
そして、僕が主催の非公式インプット奴隷合宿は始まったのだった。
2.いざ、開催準備
さて、導入は若干エモめのテイストでお送りしたが、この調子が続くのもここまでである。なぜなら、ここからは七転八倒、波乱万丈、悲喜交々の開催準備レポートをお送りするからだ。
2-0.何をきめる?
さて、インプット奴隷合宿の開催準備、なんだかんだとやることがあるが、ここでは大きく三つにわけて紹介しよう。
ずばり、面子、場所、時期のみっつだ。
2-1.公募, or NOT 公募, that is the question.
まずは面子の話からしよう。なぜなら、言うまでもなく最も重要な要素だからだ。
さて、PCの前で胡坐をかきながら、どう面子を集めようか、と考えて、まず思いついたのが、公募。
①サポーターコミュニティで募集をかけ、②集まった人と奴隷合宿をやる。簡単な2ステップである。この上なくラク。コミュニティにはいろんな人が大勢いる。運よく予定が合う人や、僕と面識がなくても来てくれる変な人。そんな愉快な仲間たちを集めていけば、間違いなく開催に漕ぎつけられるだろう。
時期・場所・定員を決めて、「〇月〇日までに希望者は挙手お願いします!人数オーバーしたら抽選とかで調整しますゴメンね~~~!」と投稿すれば迅速かつスピーディにメンツが決まるはずだ。
だが、この方法には欠点がある。身も蓋もないことを言うとヤバい人を除外できないのだ。
ほとんどのゆる言語学ラジオのサポーターの皆さんはまともな人だが、たまに、ノリがわからないままコミュニティ入ってきてしまった人がいたりする。そういう人は馴染めずに早晩フェードアウトしてゆくのだが、ごくまれに「ノリはわからないがアクティブにオフ会に参加する人」というタイプがいる。
「ノリがわからない」×「アクティブ」という珍しい性質を併せ持つ♡人が来てしまう確率は極めてゼロに近いが、ゼロではない。ゼロではないとなると、まるでそれが1/2の確率かのように思えてくる。はじめて落下傘で降下したときの板垣先生の心持ちだ。来るか来ぬか、1/2!!!!
普通の人なら気にしない程度の確率だが、僕は一度、それを他のイベントで経験してしまっていた。もう二度と、同じ過ちは繰り返したくなかったのだ。
ならばできることは一つである。信頼できるサポーター全員にDM行脚、これしかない。
60人にDMなんかするもんじゃない。
というわけで信頼できる知り合い全員にDMする日々が始まった。対象はは、「過去のオフ会で直接会っていて、大丈夫だと感じた人」、その全員。ヤバい人を入れないための、唯一の方策だ。
その数およそ60人。この時点で宿のキャパが20人程度と目星がついていたため、多めに見積もって三倍の人数に声をかけた。ただ誘いすぎてしまうと宿のキャパを超えてしまうので、そこにも気を遣う必要があった。誘いすぎず誘わなさすぎずの綱渡り。人数不足とキャパオーバーとのシーソーゲームは人生で初めて経験したが、想像以上にエキサイティングだったとだけ記しておこう。詳細については、脳が記憶の再生を拒否したので省略とする。
DM本文
記憶の再生は無理だったが、お誘いのDMが発掘できたのでここに残しておく。相手の名前やそのほかの固有名詞は伏せてあるのであしからず。
一括送信ではなく、それぞれ個別に文章を考えていたので、とんでもなく時間と労力がかかった。友達にこれを見せたら「これ営業じゃんw」と言われた。これは営業らしい。たいへんにたいへんだったので、もしこれから奴隷合宿を開催しようという人がいるなら、この方法はやめたほうがいい。
DM60連の功名
大変だったが、この方法をとったことで気づけた点もあった。
僕のお誘いに対して、「行くか行かないかはメンツによるかも。誰が来ます?」と聞いてきた人が、一人や二人ではなかったのだ。
このような人たちは、公募ではなかなか来てくれなかっただろう。公募の方が広くアプローチできるような気がするが、実のところ「誰でも来ていいですよ」でアプローチしているのは「公募でも来る人」という狭い層なのだ。
おさそい悲喜こもごも
DMを送り始めて数週間が経った。断られたりOKをもらったりしながら、「ちゃんと出席者管理をしないと大変なことになる」と気付いたのがこの頃である。以下にそのときのNotionのスクショを貼っておく。
さて、上の欄を見ていて、何か気づきはしないだろうか。
そう、「スキーいけないのつら」と言って断った人がいたのだ。
このとき既に宿を押さえていたのだが、そこは長野の山奥だった。そして開催時期も決定していた。年末年始の連休である。つまりウィンタースポーツのシーズンだ。シーズン真っただ中に長野に行ってスキーをしないなんて耐えられない、というわけだ。妥当である。
もう一つ、個人的に面白かったお断りの理由を紹介しておこう。「寒い」である。
曰く「寒いと何もできなくなってしまって宿でずっと寝ることになるので、参加は見送らせてほしい。次回があるならぜひそのときに」とのことだ。なんなら複数人いた。どうやらサポーターの中に小動物が紛れ込んでいたらしい。参加者に冬眠されると困るので、これも妥当である。
なんだかんだあったが、そんなこんなで20人ほどの参加者が集まった。次は、場所選びの話をしよう。
2-2.つまり、山奥にバスでアクセス出来ればいい。
合宿開催地を選ぶ際に考えた条件は、以下の9つ。
値段がリーズナブルなこと。
電車・バスのみでアクセスできる場所にあること。
食事は三食、現地調達できること。
東京と大阪の間にあり、アクセスがそこそこ良いこと。
ただし都会からは離れていること。
10人~20人程度のキャパシティを持つこと。
貸し切りが可能なこと。
全員が読書できるだけのスペースがあること。
インプット奴隷合宿という奇特なイベントへの理解があること。
かなり無茶な要求だ。都会からそこそこ離れたらもうアクセスは悪くなるだろう。
これは無理だ、どこかで妥協しないと。と誰もが思うだろう。今このNoteを読んでいる人は「ここからどうやって宿を決めたのだろう」と気になっているところだろう。僕も話したい。このワガママ条件をすべてクリアする宿を、どうやって見つけたのかを―――!
―――だが僕はすべての条件に合致する宿とたまたま懇意にしていたので何も問題はなかったッッッ!!!
勝ったッ!場所選び編完!
冗談です。ごめんなさい。探し方は書けないので、せめてこの条件にした理由とかを書きます。
費用
お値段は重要だ。参考までに、予約した宿の情報を書いておく。
宿泊費 :2泊で11,000円
食費(外食):一食1,000~2,000円×6食=10,000円ほど
移動費 :東京から片道8,500円、往復17,000円
合計 :50,000円ほど
アクセス
この条件は、第二回公式インプット奴隷合宿で得た学びを活かしたものだ。
北海道の山奥で開催された奴隷合宿。動物がたくさんいてとても楽しかった(この先の林はクマが出るので絶対に立ち入らないでください、みたいな話があった。あと個人的にはクスサンを10頭ほど採集できて非常に満足だった)のだが、いかんせん新千歳空港から車で2時間という距離がネックだった。
2泊3日のレンタカー代を相乗りするサポーターで割り、2時間かけて宿に向かい、2日目の夜ハシャギすぎて3時間しか寝ていない状態で最終日また空港まで2時間運転、というのはなかなか...…いやかなり、本当に厳しかった。人を轢くかと思ったのは後にも先にもこの一度だけである。
人を轢かずに帰宅できる宿をとろう、そう決意した瞬間であった。
食事
これも第二回公式インプット奴隷合宿で得た学びを……と書くと角がギンギンに立ってしまうのでここで弁明させてほしい。僕は最高の合宿体験であった公式インプット奴隷合宿in北海道が抱えていた、ごくわずかなボトルネックを修正しているに過ぎない。僕の奴隷合宿の原体験は間違いなく、北の大地で過ごしたあの2泊3日である。
さて、気を取り直して食事の話をしよう。
食料の現地調達ができない山奥で合宿を開催してしまうと、シンプルに自炊の時間で読書時間が圧迫される。自炊もとても楽しいのだが、インプットを重視するなら近くにレストランがある宿か、食事を出してくれる宿を選ぶのがよい。
またゆる言語学ラジオの名誉のためここに明記しておくが、2024年の公式合宿はバス送迎付き食事付きの宿で開催されていた。ありがとうゆる言語学ラジオ!大好きだぜ!
余談
なお、1~9の条件をクリアするお宿は、熱海のあたりが多いらしい。友人に聞いた話なので確証に欠けるが、これから開催したいが場所に悩んでいる、というひとは参考になるかもしれない。
2-3.とりあえず三連休で
開催日時に関しては、三連休だと社会人のサポーターも有給がとりやすいのでそうした。以上!
3.いざ開催!
そんなこんなで面子・場所・時期が確定し、開催の運びとなった。
こまごました話は書いても面白くないので、それはまたいつか。ここには結果だけ記しておく。
僕が開催した奴隷合宿は好評につき第3回を今年秋に終え、第4回も決定した。持続可能性はこれで示せたはずなので、今後開催したいという人はこのNoteに記した手法を参考にするといいかもしれない。
あとは合宿本番の思い出話をすることにしよう。ぜんぶ余談なので読まなくてOK。サビは終わり。それではいってみよう!
4.合宿のおもいで四方山話
お宿ではじまる合唱会
冒頭のこの動画の話をするのを忘れていた。
いや話もなにも、お宿にピアノがあって、ピアニストのサポーターがいて、合唱経験があるサポーターも何故か5人ぐらいいて、気づいたら合唱が始まって、終わって、全員で卒業していた。
何を言っているのかわからねーと思うがおれもわからねー。オイお前そろそろジョジョのパクリやめろおもんないぞ!次!
トリコのない回を語るサポーター
トリコのない回「最終回で暴走したトリコを小松が泣きながら調理して食べるシーン」について語るサポーターもいた。いやどういうことやねん。次!
突然始まるNANA読書会
お宿にNANAという漫画が置いてあったのだが、参加したサポーターのうち半数弱がそれにドハマリし、飲み会もそこそこに夜中まで読みあかしていた。僕は触れなかったので全く内容を知らないのだが、どうやらスキンヘッドがめちゃくちゃいい男らしい。読んだ人は全員「私はこいつに抱かれた」と言っていた。何言うてんねん。次!
ゼンレスゾーンゼロのキャラデザが革新的って話
僕がゼンレスゾーンゼロ(3Dアクションのソシャゲ)をプレイしていたところ、ゲーム系エンジニアのサポーターが声をかけてくれた。即興ゲームさんぽである。激アツだ。
曰く、この「リナ」というキャラクターがロングスカートを履いていることがすごいらしい。
まず、ロングスカートというのは「キャラクターが歩く際にめちゃくちゃ邪魔になるパーツ」らしい。歩く際には脚が動く。ゲーム空間では「ものとものがぶつかる」という計算は基本的に行われないので、「動いた脚がスカートを貫通してしまう」という事象が簡単に発生する。そのためロングスカートのキャラクターは基本的に実装されないそうだ。理由は面倒だから。
だが、このキャラクターは「歩かない」ということでその問題を解決している。宙を舞うというキャラクター設定をすることで、ロングスカートという「本当はやりたいが皆避けている表現」を貫き通しているのだ。天晴れ、ゼンゼロ。
いや何の話や。長いわ!ロングスカートだけに!次!
HIKAKINのオープニングとニャンちゅうって一緒なんですよね
ちなみにそのエンジニアの彼が帰りのバスで言っていたことだが、
彼「スロートベースっていうボイパの技術があって。HIKAKINのオープニングとニャンちゅうって一緒なんですよね」
僕「はあ」
彼「BUN-BUN HELLOニャンちゅうだに゛ゃあ゛ん!!!」
僕「!!?!?!?」
普通に上手いのなんやねん!次!
集合写真のポーズ
最後に集合写真を撮ろうとなって、何かふさわしいポーズはないかと考えた結果、みんなで堀元さんのポーズをやることになった。おなじみのフレミングの右手のポーズである。
ゆる言語学ラジオという共通項をもつ僕らにふさわしいポーズだ!と一同大盛り上がりで写真撮影をした。忘れられない思い出である。いや全員そろって変なポーズで変顔するから宿の人ちょっと引いとったわ!次!
ミリしら麻雀
一ミリも麻雀を知らないサポーターを4人集め、ミリしら麻雀が開催された。結果は見ての通り。
終わりである。
優勝は中央にそびえたつピラミッドみたいな構造物こと「題名:人口ピラミッド」だそう。やかましわ。
いや、待ってほしい。これは第一回ミリしら麻雀「ルール無用で好きにやっていいよ編」なので、開始早々牌を使った建築ゲームと化してしまった。
その後開催されたのが第二回ミリしら麻雀「経験者が初めの状態だけ作るからそっから頑張れ編」である。これはかなりいい勝負になった。なにせ初めの一声が「ロン!」「チー!」「ハーマイオニー!」である。終わりだ終わり。
その後も「西」二枚を墓地に送って「東」を一枚召喚したり、シールドトリガーで脱落したデュエリストの席に新しいデュエリストを座らせたりしながらゲームは進んでいき、最終的に「新究極封印神(ネオエクゾディア)」と「ブルーアイズホワイトドラゴン」が召喚され大暴れしていた。ちょっと待て。
ちなみにエグゾディアとブルーアイズが大暴れしてるのを眺めていたちゃんとしたボドゲ勢のサポーターが「これルールおかしいよ!ゲームバランス考えて!ほんとに大丈夫!?ちゃんと作りなって!」とぶち切れていた。怒るとこそこかい。
思い出話はこれで終わりである。駄文に付き合ってくれた皆様に感謝を。
さいごに
改めて、ここまで目を通してくれた皆様、本当にありがとうございます。師走のあなたの時間を少しでも頂戴できたことに、心からの感謝を。これからますます寒くなってまいりますが、お体にお気をつけて。良いクリスマスをお過ごしください。
じゃあまた!バイビ~!
追伸
これを書いている途中に偶然、積読チャンネルの「イベントはなぜ失敗するのか?」を見てしまって胃が痛い。本当に胃が痛い。みなさん、僕がやったインプット奴隷合宿がどれぐらいカスか採点してみてください。
他の主催者の記事
北海道で開催されたインプット奴隷合宿もあり、そちらの運営手記も公開されている。あわせて読むと幹事の性格差が味わえるのでおすすめ。
以前の記事
以前僕が書いた記事はこちら。ひどいタイトルですが、中身はちゃんと医学の話をしています。今回の記事と同じテイストの文が読みたいという方におすすめ。