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空を進む
翌る日
彼はドアを叩いた
私は叩かれたドアを開けた
そこには美しい目を持つ短髪の小柄だが肉付きの良い青年が立っていた
私は湿気を含んだ小さな宿に彼を招き入れた
彼の心もまた湿っていた
変わりたいと言う彼
変わるために来たという彼
兄がいるからここに来たと
仕事がないなら移動しようか悩んでいると
勝手すればいい
一体何日間同じことで悩んでいるのか
そんな自分を変えたいのではないのか
変わりたいならこの瞬間に変わればいいじゃないか
決めろ
兄が来ていたから自分も来たという彼
それは自分を変えることなのか
誰かが作った道を歩くことで
自らの道を拓いたと錯覚することはやめてくれ
それは選択であって自由ではない
空に標を置いて
新たな高原を進み続けるものよ
其の暗闇に神の光が射さんことを
彼は兄の元へ向かった
自由のあるとこに薄寒い風が吹く
私は彼を遠ざけたかっただけなのだ
自分で標を突き立てられる人間になりたい
願望は同じだったはずだ
足場のない空を進む