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FASTにおける「ふりかえり」あるいは「検査」・「適応」についての考え方

こんにちは、2024年10月よりログラスのアジャイルコーチとなったおーのAです。まだ慣れません。入社エントリから書きたかったのですが、入社エントリは少し先になりそうです(怠慢)。

今回はログラスの取り組みであるFASTについての初めての記事です。FASTの「ふりかえり」あるいは「検査」・「適応」というテーマで記事を書いてみました。


FASTとは

FASTについてはじめて知る方もいると思いますが、この説明は省略し、WebサイトやFaSTガイドに任せます。私の過去の職場の上司のtuneさんの記事も分かりやすいのでオススメです。

1点だけ、FaSTやFASTが存在している点について補足します。初期はFluid Scaling Technology のだったようですが、今はFluid Adaptive Scaling Technologyと、Adaptiveいう言葉が入ってFASTとなったようです。以後、すべてFASTと記載します。

アジャイルの「ふりかえり」あるいは「検査」・「適応」

本題に入っていきます。

まずは「ふりかえり」です。アジャイルソフトウェア開発宣言では明示的にふりかえりを行うことを原則に置いています。

チームがもっと効率を高めることができるかを定期的に振り返り、
それに基づいて自分たちのやり方を最適に調整します

アジャイルソフトウェア開発宣言・アジャイル宣言の背後にある原則

最近では、アジャイル開発の組織だけではなく、さまざまな組織で「ふりかえり」が行われるようになりましたが、近年のふりかえりの流れを作ったのは間違いなくアジャイル開発やスクラムです。(元を辿るとトヨタ生産方式に行き着くわけではありますが・・・その辺は割愛します)

アジャイル開発の代表格とも言えるスクラムは3本柱として「透明性」「検査」「適応」を持っています。さらに、スクラムのイベントとしてレトロスペクティブ、いわゆるふりかえりのイベントを用意しています。

アジャイルやスクラムではふりかえりを行うことが当然のように定義されています。

FASTには無い「ふりかえり」あるいは「検査」・「適応」

しかし、FASTガイドでは「学」という字が3回出てきますが、検査・適応を促すような仕組みは一切持ち合わせておりません。FASTガイドに出てくる3文を抜き出してみます。

  • 経験を分かち合い、学び合え(FASTの原則)

  • 短い周期でコレクティブはミーティングを開催し、学びを共有し進捗して、プロダクトの状態と現在の状況について共通の理解を得ます。(バリューサイクルの同期の説明)

  • レジリエントに学ぶチームメンバーは協働的な、自己組織化したチームを形成します。

上記のように、FASTにおいてはふりかえりを実施することを明示的に記載しておりません。私としてはこれが気になってしまいました。

FASTの柱「複雑適応系」「Y理論によるガバナンス」

しかし、FASTガイドをよく見ると、「複雑適応系」と「Y理論によるガバナンス」という言葉があります。結論からシンプルに言ってしまうとFASTのコレクティブ(チーム)は仕組みを作らず放っておいても学ぶだろうということです。以下、詳述していきます。

「複雑適応系」とは

「複雑適応系」については書籍マネジメント3.0を全部読むと理解しやすい(?)ように思います。マネジメント3.0から「複雑適応系」についての記述を引用します。

複雑適応系のシステムは、自分たちの環境に適応することができる。例えば、歩くことを学ぶ幼児、抗生物質に耐性を持つようになった細菌の株、交通渋滞を避ける自動車の運転手、ピーナッツバターとジャムのサンドイッチの場所を知る蟻の巣、そして自分たちの顧客が本当に欲しいものに適応するソフトウェアチームである。

マネジメント3.0  - 第3章複雑系の理論 (一部改)

複雑適応系は複雑な環境変化に対して、自ら適応していくシステムのことです。同セクションで、スクラムについても言及しています。

スクラムは、手法、あるいは定義されたプロセス、手順の集まりではない。それは、オープンな開発フレームワークである。そのルールは、振る舞いへの制約であり、その制約が複雑適応系を知性のある状態へと自己組織化させる振る舞いへの制約である。

マネジメント3.0  - 第3章複雑系の理論 - 引用元

スクラムにおいては人間の持ちうる知性をもって、制約を与えるものとしています。知性を持って明示的にレトロスペクティブというイベントの制約を課しています。逆に言えば複雑適応系であるということはすなわち、制約が無くとも自然と適応していくでしょう、ということを意味しています。

「Y理論によるガバナンス」とは

Y理論もマネジメント3.0に記載があったので、ここから引用していきます。
X理論・Y理論はダグラス・マクレガー教授によるモチベーションのモデルです。

X理論は、人々は一般的に働きたがらないと述べる。X理論は、お金、マネジメントの統制、そしてよく知られたあめとむちが非飛地に仕事をさせる最善の方法だと述べる。
-中略-
Y理論の部分は、人々が自らの心理的、物理的な職務を楽しみ、そして仕事は遊びと同じぐらい自然なことであると仮定している。

マネジメント3.0  - 第5章 人々をどのように元気づけるか

X理論は外発的モチベーション、Y理論は内発的モチベーションと説明することが分かりやすいかと思います。つまり、「Y理論によるガバナンス」とは、人の内発的動機づけによって組織が機能することを前提とした組織づくりを行うことです。

FASTはふりかえりはない、しかし、自らの動機づけにより適応していく

ということで、先述の通り、FASTでは仕組みを作らず放っておいても学ぶだろうということを期待されているようです。改めて、非常に高い自律性が求められる仕組みであると感じました。
スクラムの制約の中で生きていた私としてはレトロスペクティブのようなイベントが無いことに非常に違和感がありましたが、「複雑適応系」と「Y理論によるガバナンス」でスッキリしました。

ログラスとFASTとふりかえり

少しだけ、今回の記事の観点でのログラスとの関わりにも触れておきたいと思います。

現時点では2週間に一回のふりかえりを実施

なお、ログラスではFASTミーティングの他にふりかえりの時間を設けています。現在は2週間に1回実施しています。経緯までは把握していませんが、やはりログラスもスクラムと共に成長してきた組織であるので、私と同じように必要性を感じていたのではないかと思います。
今後、ログラスがふりかえりについてどのような取り組みをしていくか模索しているところではありますが、「複雑適応系」や「Y理論によるガバナンス」を重視していっそのことイベント自体を排除するということもありなのかも知れません(試しに振り切ってみたい)。

ログラスにFASTがフィットしているかの理由でもありそうな「複雑適応系」「Y理論によるガバナンス」

ログラスのバリューにはFeed Forword/But We Goがありますが、ログラスではバリューが非常に良く浸透しています。まだ私は入社まもないですが、バリューが日常に溢れていることを実感しています。バリューがあることで開発組織全体が複雑適応系となって自ら環境に適応する力の源泉となっているように思います。

まとめ:真の自律的な組織にはふりかえりのイベントは用意しませんというスタンスのFAST

今回はFASTにおける「ふりかえり」について書きました。

ログラスでは今まさに同時多発的にふりかえりというイベントを適応させていこうという動きが見られています。まさに複雑適応系だと思います。すごいです。

ということで、ログラスのFASTはこれからもっと成長を見せていくと信じています。FASTのみならず、自律的な組織に興味ある方はログラスにぜひお声がけください!!

最後までお読みいただきありがとうございました!!!!

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