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界のカケラ 〜61〜

 「ようやく見つかったから連れていくね」

 聞き覚えのある声に耳を傾けると、ゆいちゃんの声だった。姿はまだ見えないが近くに来ていることはわかった。ようやく「お姉ちゃん」とやらが見つかったらしい。これでようやく状況を打開できる安心感で、つい欠伸が出てしまった。

 「うん、待ってるね」

 意識の世界だから距離は関係なく、時間もかからずにくるのだろうなと予想できた。たった数時間で意識の世界のことを学習して慣れてしまった自分が怖くなった。これが一次的ではなくて、この先一生続いていくことを何となく感じとった。

 「お待たせ! ようやく『お姉ちゃん』を探すことができたから連れてきたよ」

 「ありがとう! これで市ヶ谷さんが変わってくれると良いんだけどね。もう私の力じゃ心を開かせることはできなくて、諦めかけていたところだったよ」

 「遅くなちゃったね。でもやりとりはかおるちゃんの意識を通して知っていたから大丈夫。それじゃあ、紹介するね」

 あれ?また私の名前を出した。教えていないのに。ここはきちんと聞いたほうが良いのだろうか。いや、今はそれどころではない。今は市ヶ谷さんのことが先決だ。自分の名前を知っているかを聞くのは後でもできる。

 「うん。紹介して」
 
 「あの人が話していた『お姉ちゃん』の深鈴さん」

 「はじめまして、深鈴さん。私は四条と申します。この度は市ヶ谷さんのために申し訳ありません」

 「はじめまして、四条さん。市ヶ谷さん、いえ、徹くんのことでご迷惑をおかけしてしまったようで、こちらこそ申し訳ありません」

 魂なのか意識体なのかわからないが、「お姉ちゃん」は品の良い肩下まである黒髪のロングヘアーの女性だった。目鼻立ちがはっきりしていて左の首筋に黒子があった。自分の意見をはっきり言うような印象だが、話すときの優しい感じは子供に好かれやすいだろうと思った。

 「深鈴さんはね、もう他の人に生まれ変わっていたから探すのに時間がかかっちゃった」

 「生まれ変わっていた? やっぱり輪廻転生ってあるんだね」

 「うん、あるよ。私もそうだもん。何度も何度も生まれ変わって、いろんなことを学んだり、やれなかったことをやったりしていくんだよ。人が生きている世界での良いことも悪いことも両方やっていくんだ」

 「そうなんだ。市ヶ谷さんの様子をみると、小学校低学年くらいの出来事みたいだから、二、三十年は経っているから生まれ変わっていてもおかしくはないよね」

 「そうだよ。生まれ変わる年数は魂によっても違うけどね。早い人は早いし、遅い人は遅い。もう生まれ変わらないのもいるしね」

 「そうなんだ・・・」

 私は普通に突拍子のないことを会話していたが、私たちが生きている世界とは別に、それ以上の大きなことを知ってしまったことに言葉が出なくなってしまった。

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akira
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