界のカケラ 〜69〜

 「元の体に帰らなければいけないと思うので、手短に済ませますね。いくつかあるのですが・・・」

 「構いませんよ。肉体本体は寝ている状態ですし、疲れていたからちょうど良い睡眠になってますから」

 おそらく気を使ってくれたのだろう。その配慮に敬意を払いつつも自分の聞きたいことを聞くことにした。
 
 「深鈴さんを引いて逃げた車はその後どうなったのですか?」

 「やっぱり気になりますよね?」

 「ええ。人を轢き殺して逃げるなんて最低の人間ですから」

 「あの後、対向車線を偶然パトカーが走っていて、猛スピードで逃げていくバンパーが凹んだ車を見かけていて、不審に思ったそのパトカーが追跡して検挙して捕まえましたよ。犯人は飲酒運転をしていて、交差点を曲がろうとしたけど、スピードを出しすぎて曲がりきれずに徹くんの方に向かって行ったそうです。誰かを引いた感触があったようで怖くなって逃げたと言っていました」

 「言っていた?」

 「ええ。どんな人が徹くんを怖い目に合わせて、私を轢き殺したのか気になったので。引かれた後に徹くんの無事を確認して死んだ後にすぐに車を追いかけて、警察が捕まえた犯人のそばで聞いていました」

 「それは・・・」

 「信じられないですよね? 私もその時は信じられませんでしたから。気づいたらスイスイと動けていて、いつも見ていたことと同じようにできるんですから」

 「それが魂の感覚なんですね。なかなか信じられないですけど、信じるしかないです」

 「今私たちが話していること自体も他の人にとっては信じられないことですからね。信じてしまったほうがいいです」

 「ですよね。そうだということで納得しておきます。後二つほど聞きたいことがあるのですがいいですか?」

 「ええ。どうぞ」

 残りの質問は全て答えてくれるかどうか不安なものだ。先ほどの質問以上に気を張って聞くことにした。

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akira
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