雑感39:V字回復の経営―2年で会社を変えられますか

「太陽産業の役員室で開かれた経営会議は、上期の業績不振にもかかわらず、役員たちに危機感がまったく見られない。かつての花形企業も今は成長が鈍化し、マスコミには叩かれ、学生の人気も失せている。このままでは長い会社の歴史が終わる―― そう判断した香川五郎社長は決意を固め、まず役員人事で大なたを振るったのだったが…」
本書のストーリーは、事業再建を専門にするコンサルタントである三枝が、過去にかかわった日本企業5社の事業改革を題材にしたもの。ストーリーはノンフィションとフィクションの間、つまり5社での体験を素材に、どの企業にもあてはまる「経営改革のモデル・ストーリー」を構成したものである。

本書はフィクションであるが、それを感じさせない強烈なリアリティーを放っている。改革のもと、社内に生じる政治力学、葛藤、抵抗勢力とのかけ引きといった細部が徹底して描きだされているのだ。著者はストーリーの進行に合わせて組織硬直化の「症状」を分析したり、改革の「要諦」をまとめたりして、逐一処方箋を示していく。

ストーリーは、現実の直視と分析、先導者の組織化、改革コンセプトの共有、戦略の意思決定、改革シナリオの現場への落とし込み…という改革のモデルパターンをたどって進む。自ら改革すべき企業の代表取締役となり、リスクと利害を共にするコンサルティングスタイルを取る三枝ならではの経験と知識がストーリーの中に凝縮されている。

本書は、経営改革のシミュレーションとして他に類を見ないテキストである。けっきょく、「太陽産業」は各役割を担うリーダーが機能し、8年ぶりの年間黒字決算を達成するのだが、ここに日本企業再生のシナリオがあるような気がしてならない。(棚上 勉)

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・・・と、amazonの紹介文を載せたら概ね紹介は終わってしまうのだが、いやはやそれにしてもすごい本であった。この本に出合えて良かったというべきか。

自身の世間知らずを恥じるというか、このような理知的で論理的で、かつ情熱的な経営コンサル・経営者が日本にいるのか・・・、というのが率直な感想であった。

弊社にこのような人材がいようか?(反語)

本作はコマツの子会社をモデルにしているようなのですが、この、大手メーカーの日本式経営の行く末・・・モチベーションが下がるところまで下がった腐敗しきった子会社というのが妙にピンと来てしまうというか、弊社界隈でも非常に身近なものであって、私自身がなんとかなく頭の中で仮説を立ててはもやもやしていた再生・立て直しの方法論を、この本はきれいに整理して述べてくれたというか、「ああそういうことだったのか!」という具合であった。

当然のことながら企業の再生は独りよがり、一部の頭のいい人の自己完結、経営者の自己陶酔ではいけない。従業員に伝わってなんぼの世界であり、すなわち従業員に伝わるようなレベルで、平易であって、シンプルな理論構築であって、従業員に圧倒的に身に染みるレベルで内省させ、奮起を促すものでないとダメ。トップだけちょこちょこ小細工をしても無意味なのである。

これって言われてみれば当然の話で、野球は9人のスポーツだし、運動会の棒倒しも、一人だけすごい強いやつがいても勝てない。要は団体戦なのである。棒倒しやるにしても、やっぱチームみんな殺気立ってた方が強いでしょう、たぶん。

「棒倒し」って今の時代もあるんだろうか??

話が行ったり来たりしてしまうが、やはり猛烈に身に染みる反省論の必要性、これを経営コンサルの方(著者)がしっかりと書かれていたのは私自身非常に心の支えになった。

世の中(というか弊社?)の経営は、近視眼的な、短期的な、取って付けたような小手先の施策が多すぎではないか?

そういうったものはことごとく見透かされ、意義を失い、手段が目的と化し、曖昧なまま終わっているような。

「強烈な反省」→「勝ち戦のシナリオ作成」→「具体的アクションプラン」

・・・と書かれていたかな。たぶん違うけど、この一連の流れをまるで会社を自分の運命のように照らし、考え、練り込み、作り込めた時、企業の再生はようやくスタート地点に立てるのだなあと思った。というか反省の深堀って頭を使うし、時間もかかる。ここをしっかりやらないと。

急がば回れか。急がば回ってもいいが、徹夜で高速で回ってこい、という感じなのだろう、きっと。そんなに悠長なこと言ってるんじゃないと。

うーん、頑張ろう。

著者の三枝先生、大学の大先輩のようである。

私はなぜ貴重な大学4年間を、大盛のラーメンをたくさん食べることだけに専念してしまったのであろうか。

この後悔は死ぬ前で消えないことであろう。

しかし立川のラーメン二郎の味は無類である。

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