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アメリカの著名VCが考えるカメラの未来―カメラは「撮る」から「見る」へ―

はじめまして。遅ればせながらnoteを開設し、その投稿一発目です。

普段のネット上の生息地はTwitterなのですが、Twitterは発信物の流れるスピードが速いなということと、改めて文字数を費やして考えてみたいテーマについてはブログ的に残していくことが大切なんじゃないかなと思いました。

また、普段仕事でリサーチ結果はさまざまな場で発表しているので、ここではそれにいたる気付きだったり、発表したものについてのコメンタリーを載せるような使い方をしていきたいなと思っています。主に、SNSなどの利用動向、トレンドや生活者の価値観について、マーケティング的な話題、エンタテインメント界隈の話題などがメインになると思うので、ぜひお付き合いいただければ幸いです。

アメリカの著名VCが考えるカメラの未来

アメリカには、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)という著名なVC(Venture Capital)がありますね。2人の創業者、マーク・アンドリーセンとベン・ホロウィッツの名前から取られているのですが、面白いのが通称「a16z」と呼ばれているところ。これはAndreessen Horowitzのはじめの文字とおわりの文字がaとzで、それを挟む文字数が16であることから来ているそうな。それでいくと僕は「a8o」となりますね(どこかで使おうかな)。

で、そのテック系の企業に投資を行うa16zにてパートナーを務めるBenedict Evans氏は、インターネット関連のテクノロジー全般への造詣が深いのですが、公式サイトに寄せていたコラム(February 06, 2019)に面白いことが書いてあったので、今回はそれを訳出しつつ、タイトルにも冠している「カメラの未来」について考えてみます。

Benedict Evans氏は、大きく分けてこのコラムで下記のようなことを言っています。

(1)現代では機械学習(マシンラーニング)がコンピュータービジョンの進化に大きな影響を与えている。つまり、私たちがラップトップやスマートフォンを使って写真や動画を見たり撮ったりするプロセスの中には、抜きがたくコンピューターの力添えがあるということ。

(2)AppleのiPhoneのポートレートモード、GoogleのPixelの夜景モードが素晴らしいのは、それぞれカメラというハードウェアの進歩だけでなく、それを美しく処理するソフトウェアの進化が大きく貢献している。

(3)その進化は、目の前のものを綺麗な写真として保存するためだけに使われるのではなく、それが何を映しているのかという意味を解析し、撮影者はなぜそれを撮ったのかという意図を勘案してくれるようになるステージまで到達する。

2点目までは日々の生活において納得度の高い論点です。問題となるのがこの3点目ですね。こうした技術をAppleやGoogleが実装すれば、例えばカレンダーやマップ、検索機能といった諸機能と連携して、写真をメモ代わりに使う私たちにとって、より便利な生活が実現されるきっかけとなります。

もちろん、こういう話になるとプライバシーはどうなるんだというツッコミが次の瞬間には飛んでくるし、Benedict Evans氏もそれについてはちゃんと言及しています。が、より重要な論点としては、こういうことのような気もしています。

In a sense, these questions are also brand questions. We know that Shazam only does recorded music. Amazon’s app got a better match for the Krushchev book, linking not a modern reprint as Google did but a second-hand copy of the exact edition with the same cover. But, it failed totally on the lamp and the vase, even though they’re both for sale on Amazon. Do I have different expectations of Amazon?

現実的に見ると、上記のようにいくつかのサービス事業者がしのぎを削っているわけで、ひとつの企業が生活者のデータをすべて囲い込むとは思えないということ。そして、名前が挙げられているように、いまShazamによって音楽の領域で出来ていること――アプリを立ち上げて曲を聞かせれば曲名を教えてくれる――が、機械学習の力を借りたカメラによって可能になっていくのです。

カメラは「撮る」ためのものから「見る」ためのものへ

僕は生活者の間でのビジュアルコミュニケーションに注目し、その視点からSNSの動向を分析しています。その成果をまとめた書籍も上梓していますが、そこでもこうした進化を念頭に、これからカメラは「撮る」ものではなく「見る」ためのものになっていくんだと論じました。

著書でも触れていますが、僕が知る限りでも、FacebookやSnapchatなどのビジュアルコミュニケーション中心のSNS運営企業はカメラによる物体認識とそこでの広告重ね合わせ技術を研究して技術パテントを取得するなどの動きを見せています。今後数年でそうした機能は実際に私たちが触れるようなレベルで実用化されるでしょう。

カメラは自分が見たものを記録したりそれを誰かにシェアするために「撮る」ものから、それを使って目の前の風景や世界をよりリッチに「見る」ものになっていく。このような「撮る」から「見る」へのシフトが、ユーザー間のコミュニケーションやブランドと生活者のつながりのあり方をどう変えていくのか、ぜひ注目していかなければと思っているのです。

※私たちの視覚がコンピュータービジョンの力を借りて、融合的にこれまでにない知覚を可能にしていくこと。これは落合陽一さん的な「デジタルネイチャー」のテーマにも連なっていくでしょう(文字数の都合でこのテーマはまた今後)

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