ワクチンに起因する変異株の出現
AKIRAです。
答え合わせをします。
これまでの私の主張
新型コロナウイルスの変異株とワクチンの関係について、私がこれまで言及してきた記事はおおよそ、この3つが主な記事になるかと思います。
このうち、一番上の「1,2回目mRNAワクチン接種に関して」の記事では、以下のようなことを述べたと思います。
mRNAワクチンはスパイクタンパクを作り続けるため、抗原として提供できるタンパクはスパイクのみになります。
↑このサイトでは、これまでの新型コロナウイルスの変異情報が見られるようになっています。
図 NextStrainで新型コロナウイルスにみられるアミノ酸変異の事象確率
このサイトのこの部分(↑ちょっと見にくいですが・・・)を見ていただくと、これはこれまでに見られたウイルス変異株のアミノ酸変異を追っていき、それらの変異の起こりやすさを縦軸にとって、ウイルスゲノムのどの部分がアミノ酸変異を起こしやすいのかを視覚的に表示したものになります。
明らかに背の高い棒が密集している箇所がありませんか?(笑)
言うまでもなく、その部分はスパイクタンパクのアミノ酸配列部位です。
背が高い=変異が起こる確率が高い(バラツキを考慮して標準化してます)ため、高い棒は変異の確率が大きいということになります。
もちろん配列の長さもありますので、絶対的なことは言えませんが、スパイクタンパクがほかのゲノム領域に比べてアミノ酸変異の多い領域であることがわかるかと思います。これだけの変異がなぜスパイクに集中しているのか。
もとからそういう性質だったのか、あるいはワクチンの影響か。
いずれにしても変異の起こりやすい部位をターゲットとしている時点でmRNAワクチンがその役割を果たさないのは分かり切った話だと思いませんか?そんなの、逃避されて終わりですよ。
一言でまとめると、シングルターゲットのmRNAワクチンがコロナウイルスの変異を促した可能性がある、ということです。
今回は、これについての一つの答えとなる報告を見つけましたのでご紹介します。
変異の種類
https://www.cell.com/cell-reports-medicine/fulltext/S2666-3791(24)00621-9
上のリンクがその論文です。Cell誌から出ています。出版は2024年の12月ですので、私が「1,2回目mRNAワクチン接種に関して」の記事を出してからおよそ9か月後ですね。
筆者は私も扱ったNextstrainというサイトを用いて変異株の遷移を示しています。
そして、その変異が出現してくるタイミングとワクチン接種の関係について述べています(Fig1A)。
そして、ここにもある通り、ウイルスの変異に従ってスパイクタンパクにどんな変異があったかを図式化しています(Fig1B-D)。
そして、筆者らはそれぞれのスパイクのバリアント(変異体)をもつシュードウイルスを作製し、ワクチン接種者の血清に含まれる誘導抗体がシュードウイルスを中和するのかを検証しています(Fig1E)。
ここで、皆さんに覚えておいていただきたいのが、コロナウイルスのスパイクの構造に関するお話です。
スパイクにはS1ユニットとS2ユニットという二つのタンパク質が合体した形状をしており、そのS1ユニットの中にはNTDとRBD(Recepter Binding Domain)というタンパク質の構造体が含まれています。
そして、英語の意味からも分かる通り、スパイクに結合する部分はこのRBDであるという過去の知見があります。
変異の例としては、例えば最初の変異体にある「D614G」。
これは、左から数えて614番目にあるアミノ酸(タンパク質はアミノ酸の集合)のアスパラギン酸(D)がグリシン(G)に変異した、という意味になります。
筆者らは、こういったスパイクのパーツにある変異部分を割り出していき、それらが抗体の中和活性やACE2の結合にどのような影響があるかをシュードウイルスを用いて調べたようです。
わかったこと
一つ一つを解説してもいいのですが、記事がすごく長くなりそうなのでかいつまんで解説します。
その1:変異株の変異はスパイクの中でもRBD領域の変異の頻度が高かった。
その2:RBD内の変異は単独の変異(D614Gみたいなやつが一個だけ)だと、中和活性は下がるが、ACE2に対する結合能も下がる。
その3:単独ではなく、複数の変異を組み合わせるとACE2への結合能が上がる。(もちろん中和活性は下がる)単体の変異で同じ現象を示すものもあった。
その4:プライマリ(初めて打つ株)のワクチンからブースター接種(武漢からデルタ株までの間に接種された血清)で中和活性が上がるが、オミクロンの変異を入れたシュードウイルスには効果がなく、ACE2に対する結合能も上がってしまう。
その5:XBB1.5対応のワクチン接種血清だと武漢株に比べて各変異株の抗体減弱は抑えられる。
その6:出てきた順に変異株のACE2の結合能とシュードウイルスの感染性をみると、どちらも上がっている、もしくは上がっている状態が維持されている。
ACE2はコロナウイルスが細胞に感染するときに利用する細胞の受容体です。これとウイルスの結合する能力(結合能)が高ければ感染する能力が高いはず。ということは、ACE2の結合能が高くて中和活性が低いとワクチンによる免疫逃避が起こっている変異であるということになります。
実際には、単独というよりは複数の変異を組み合わせることで感染性を上げる変異が起こっていることが示唆されています。(その3参照)
筆者は言及していませんが、このことがワクチンのスパイク部位における多種の変異を促している証拠になります。(この結果を鑑みると新種のウイルスに対するワクチン接種で変異部位が複数個所誘発される可能性がある)
そして、それは初期の変異株だけでなく、その後に出てくるオミクロンやXBB、JN1といった子孫についても再現が取れている。(その5,6)
これらのことから、私が主張していたワクチンによる変異株の誘発が実際に起こっていたという直接的な傍証になっています。
次回、考察について解説します。
今回の記事は、ここまでです。
長くなりそうですので、一度区切ります。
次回、筆者の考察について掘り下げようと思います。