ルネサスエレクトロニクス 2023年12月期+2024年2Qまでの業績
ルネサスエレクトロニクスの沿概
設立経緯は、正直に申し上げますと、総合電機メーカー(日立、三菱、NEC)のお荷物となった半導体部門を手放す手立てとしてシナリオが実行されたまでのことです。手始めに、2002年にNECが汎用DRAMを除く半導体事業を分社化し、ロジック半導体の専用に取り扱うNECエレクトロニクスが設立されました。ちなみに汎用DRAM事業は、日立製作所のDRAM事業と統合し、最終的には三菱のDRAM事業も合流し、当時日本メモリ会社と囃されたエルピーダメモリが設立されました。後に、エルピーダの運営も頓挫したことから、法的整理状態に陥り、米社マイクロンに買収されてマイクロンメモリジャパンとなっています。2003年に日立製作所と三菱電機の半導体事業(パワー半導体を除く)が分社して、統合してルネサステクノロジが設立されました。ルネサステクノロジでは、世界に先駆けて12インチラインを茨城県ひたちなか市に立ち上げましたが、その業績も思わしくない状況から、2010年に低業績に苦しんでいたNECエレクトロニクスと、その打開策として合併による規模拡大を目指した形で統合し、ルネサスエレクトロニクスが設立されました。即ち、ルネサスエレクトロニクスは、日立製作所と三菱電機、NECのロジック半導体事業を統合して、悪く申し上げると寄せ集めて出来た企業でした。
業績が思わしくない中で更に追い打ちをかけたのが、2011年の東日本大震災でした。主力工場である茨城県ひたちなか市の那珂工場が被災しました。この工場被災、生産停止は、日本の自動車生産にも大きな影響を及ぼしたことから、工場の復活を諦めることは決して許されない状況から、業績の苦しい中でも4桁億円が投下されました。この大きな出血を伴った工場の復元にも係わらず、その後も業績の低迷は続き、2011年には第一回目のリストラが行われ、1,500人にも達する人員が応募しました。
人員推移を示しますが、実際には、リストラの公表された削減人員の倍以上の人員が減少しています。このリストラだけでは、業績を改善するには至らず、2013年に官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)の傘下に入ることが決断され、国家的な半導体事業の維持の判断の下に、生き残るために工場の集約や人員削減による合理化で経営再建を進めました。2014年には追加のリストラが断行され、800人程度が会社を去りました。ルネサスエレクトロニクスは、日立、三菱、NECの3社が統合してできた企業ですので、国内工場は各地に点在しており生産という面でも、製品のポートフォリオという意味でも重なりが多く、事業の効率は決して良くありませんでした。そのため拠点の統廃合と製品の集約が進められました。工場の統廃合は、周到に計画され、2019年には、所有の工場を半減し、更にこれに伴い、従業員の3割が同社を去らざるを得ないこととなりました。統合当時、NECエレクトロニクスとルネサステクノロジの売り上げは、合わせて一兆円に迫る総額でしたが、社員数も4万6千人を超えていましたが、統廃合の結果、その売り上げは、半分程度にシュリンクされ、人員削減の結果として社員が2万人を切る状況となっていました。
この流れを断ち切る大きな一手として、積極的な大型企業買収が開始されました。2017年には、電源制御IC、パワーマネジメントデバイスに強みを持つ米国のIntersil社を、約3200億円を投じて買収しました。当時の売り上げで、600億円程度の企業でした。これに続けて2019年にRF、高性能タイミング、メモリインターフェイス、リアルタイム・インターコネクト、オプティカル・インターコネクトの製品群を持つ米国IDT社を、約7300億円で買収しました。会社の発表によると買収完了後9カ月で100種類ほどのシナジー効果が期待できる提案が行われたという情報もありましたが、実際のところは分かりません。何故なら、2020年にはコロナパンデミックが始まり、半導体製品の市場も大きな影響を受けることになりましたので。
そしてコロナ禍ではありましたが、2021年には低電力のミックスドシグナル、コンフィギュラブル・ミックスドシグナル(CMIC)に加えWi-FiおよびBluetooth等のコネクティビティ技術に強みを持つ英国Dialog社見を約6200億円で買収しました。Dialog社の2020年の売上は13.76億USドルであり、高成長を続ける欧州の半導体市場で、一つの足掛かりを加えた形となりました。
売り上げ推移
以上の経緯を受けた上で、ルネサスエレクトロニクスの売り上げ及び売上総利益の推移をまとめました。年間の売り上げ推移を、次に示します。
この様に、業績が2022年12月期に15,027億円の最高売上を達成し、売上総利益8,530億円の各最大値を記録しました。この翌年2023年12月期には、前年より少し売上高が減少しましたが、14,967憶円を達成し、売上総利益8,343億円を達成しています。売上総利益率は、55.7%を達成しており、好調を維持している様にも見えますが、一方、伸び悩みとの見方もできます。
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