見出し画像

報告と共に数珠を渡しに ~第61話 パラグライダーで墜落 そして入院~

退院した翌日の話です。

数珠を渡すというか返すためにとあるお寺へ行きました。

ちょっと前からの話になります。
墜落事故にあうちょっと前から、ある和尚のYouTubeを見るようになっていました。和尚が仏教の視点から人生の悩み相談をしているチャンネルです。人生の歩み方、学び、そういったことが沢山つまっていて、とても共感したというか勉強になるのでよく見ていました。

チャンネルを見つけた頃は、自分の人生としても新たなステップというか、色々と変えていきたいと思っていた頃だったので余計に刺さったのだと思います。

そんな時におきた墜落事故。
病室では改めて自分の人生を振り返り、これからのことを考えていくようになるのは当然ですよね。そのチャンネルを見る機会も自然と増えました。というか、かなり見ました。見るたびに迷い、涙し、それでもなんとか奮起して前に進もうとしてきました。

それはもちろん退院後も続いていきます。

実はその和尚のお寺は今自分の住んでいるところから車で1時間ほどの所にあるんです。当然行ってみようと思います。

近くを通ったときに寄ったりもしましたが、多くはいろんなことが辛くなってしまった時、迷ったり悩んだ時に足を運ぶことように。

退院後、思うように進めない自分。
お寺でお祈りしている時に悔しさや不甲斐なさが込み上げてきて、感情が高ぶってしまうことも。
そんなときは隅のベンチで涙することもありました。

そんな時に、そのお寺のお坊さんのAさんが声をかけてくださったんです。
優しく、ゆっくり、私の話を聞いてくれました。

事故のこと。
そこからなんとか這い上がろうとしていること。
でも全然思うようにいかないこと。

感情のままに話ました。
私が話し終わるとAさんは励ましの言葉と一緒に数珠をくれました。

そして
「あなたが一番祈っていることをこの数珠に込めてください。」
と言われました。

その言葉を言われた時にすぐに思い浮かんだことは一つでした。

「この後予定している抜釘手術がうまくいきますように。」

このタイミングで望むことや願い事なんて山のようにあります。でも数珠に願うのはそれ一つでした。なぜなら、手術だけは自分の力で変えられることではないから。

幸運にも後遺症が最小限ですんだ私は、医師からはちゃんとリハビリをすれば95%以上体は戻ると言われていました。つまり、自分がリハビリをしっかりやるかで差がうまれます。自分次第です。

フリーランスフォトグラファーとして多くの仕事を事故で失いましたが、それも私がどう動くかで結果は大きく変わります。そう、これも自分次第です。

私が望む多くのことは自分次第で変えられることばかりです。もちろん簡単な道のりではない。運の要素もあるでしょう。でも、まずは自分が行動するか。やることをやっていくか。そこにかかっています。全部自分で変えられることなんです。

でも手術だけはうまくいくかどうかは自分ではどうにも変えられない。もちろん抜釘手術は難しいものではないので、十中八九うまくいきます。でも、リスクがゼロなわけではない。もしものことがあるかもしれない。だからこそ、手術の成功は願うしかありません。なのでその願いを数珠に託しました。

「手術以外のことは自分でなんとかする。いい方向に行けるように必死にもがいていく。だから、手術だけは、、、お願いします。」

ある意味では自分への約束だったのかもしれないなと思います。

そんな出来事の後もそのお寺へはちょくちょく足を運んでいました。Aさんが私を見つけてくださって、声をかけてくれることもありました。(私を見つけてくださるのはなぜか私が泣いている時ばかりという不思議現象はありました笑)

数珠をくださってから時が経ち、予定通り手術をしました。
手術は無事成功しました。

数珠が願いを叶えてくれました。

その報告をAさんにするために退院翌日にお寺へ行きました。
無事にAさんに会うことができて、報告することができました。

数珠をお返ししたいと伝えたところ、数珠自体はずっと持っていていいものだと返答がきました。

次の願いを込めてもいい。
身につけていなくても大切に保管しておくだけでもいい。
数珠というのはそういうものだとのことでした。

でも自分としてはAさんがくれた数珠はその役目を果たしてくれたものであり、ここからの道は自分の力で進んでいくべきものだと思っています。
なのでそのことを伝えて、数珠をAさんに渡しました。

深く挨拶をして、お寺を後に。

ここらはすべて自分次第。
まだまだ苦しいことは沢山あるけれど、何とか進んでいこう。

改めて、そう思った一日でした。

いいなと思ったら応援しよう!

前島聡夫/空飛ぶ写真家
フォローしてくれたら喜びます。サポートしてくれたらもっと喜びます!