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作業療法士の学生さん、学生のうちに触れてもらいたいことがあるから一緒に考えよ

私、理学療法士ですが年に2回ほど作業療法士の学生さんの授業を担当しています。今日は、医療の正しさと社会の正しさとその人の正しさとあなたの正しさって何だろうねってワークを色んな社会課題と言われているモノコトを考えてもらいながら授業をしてきました。

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今日は18時から21時過ぎまで作業療法士(OT)さんの養成校の授業を担当させていただく日だったんですけど、僕は理学療法士(PT)なんですがOTの授業をもう10年ぐらい毎年何回か担当させてもらっているんです。
 
今日は地域作業療法学にという授業で、国家試験を3か月後に控えた4年生の授業でした。
 
どうしても学生のうちに頭の隅っこに入れておいてもらいたいことがあるのです。ということで、みんなにも議論してもらって、アウトプットが欲しかったのでワークを中心行いました。
 
OTの就職先としては病院の他に特別支援学校や精神領域、児童相談所などPTと比べると多岐にわたるんですが、施設とかそういうところに入ってしまうと、どうしても目の前の利用者さんとか患者さんに対して一生懸命になるがゆえに、周りが見えなくなってくることが起こるんですね。これは専門職の特徴だと思っています。
 
若い頃は特にそうだと思うんですけども、その目の前にいる人だけに専門性を提供しても、リハの良いところは出せないと思っていて、そうではなくて、目の前の患者さんの課題が何で起こっているのかなという、その本質を探る視点で見てほしいという思いで授業内容を組み立ててみました。
 
どんなワークだったかというと、医療の正しさや社会的な正しさ、その人の正しさ、患者や利用者の家族の正しさ、あなたの自身の正しさって何だろうねってことを考えるワークです。これらを、地域にあるさまざまな社会課題と言われているものを考えて、みんなで覗きこみながら価値観を共有していくことで、それぞれの正しさを考えてみようって感じの内容をお届け。
 
まずは自分が考える社会の課題みたいなところを出してもらったんですが、僕の中では1つポイントがあって、医療の課題ではないところを出してほしいなと思っていました。そしてら、みなさんさすがですね。OTの視点って僕はすごく好きで、まさにその視点から社会を見てくれていました。自分たちの領域の高齢や孤立の問題もありましたが、それ以外にモビリティの問題だったり、情報格差の問題、障害者差別の問題など、とても面白い視点で考えてくれたんです。
 
さらに、それらにはどんな社会的な背景があるんだろうということを議論してもらいながら、医療や企業、行政などそれぞれの立場ではどのように対策をしているのかを考えてもらいました。最終的には自分たちだったら、どのようなことを取り組むかを考えてもらいプレゼンしてもらうという内容のワークでした。
 
1コマ1時間半の2コマ3時間で、かなり内容盛り沢山にしてしまったのでちょっと不安はあったのですが、さすが社医学の学生さん。ちなみに社医学は日本でもっとも歴史のあるリハ養成校で入学試験の難易度かなり高い学校です。ということもあって、とてもスマートでユニークな学生が多いんですよね。盛り盛りのワークも難なくこなしてくれました。

 
教室を回ってワークの様子を覗いていたのですが、それぞれが自分の考えをしっかり主張できているし、それに対してメンバーも否定しないような関わりが出来ていました。ワークを行う上での心理的安全性に配慮するということも、僕が言わなくてもすでに出来ていたのは本当にすごいなって思いました。
 
最近は企業向けの研修を担当させていただくことが多いのですが、自分の考えというより、会社が思う課題やメディアが言っているような課題をそれっぽく話をする人が多いなという印象です。そうではなく、社医学の学生たちは自分の意思を出せていたんですよね。
 
先生に尋ねると、普段からみんなでの議論を場をつくっていて、今日みたいなワークには慣れていると言っていました。僕が学生の頃は、「国家試験に合格するためのカリキュラム」といった感じの内容で、このような場はなかったんです。
 
教員の先生や事務の方たちの学生への関わり方もいい感じで、授業前は職員室的なところで待機しているんですが、何人かの学生が入れ替わり立ち替わり話にくるんですよ。その対応や距離感がいい感じだなーと思って昨日も見ていました。もちろん教員によるとは思いますが、さすがだなと感じた場面の1つでしたね。
 
僕も到着がギリギリになってしまい、資料の準備などで事務の方をバタバタさせてしまったんですが、全く問題ないですよーって感じてすごく心地よい対応をして下さるんです。毎回そんな感じで関わっていただけるので、気持ちよく授業をさせていただいています。来月は2年生の授業があるので、今から楽しみです。
  
学生さんには、それぞれの立場の正しさを覗いてもらうことで、OTとして現場に出た時に目の前の人たちじゃなくて、その後ろにはどんな人たちがいるんだろうってことを意識してもらえたら嬉しいです。目の前の1人の人の幸せをつくった時に、その後ろにいる誰が不幸せになるんだろうってことを考えながらリハをしてもらいたいな。そして、その不幸せも様々あって、自分たちの領域だけではとてもじゃないけどカバーできない。だからこそ、社会にある課題とその背景を知っておいてもらいたいなと思って、今日はこんな授業にしました。
 
では、今日はこの辺で。

*サムネイルの写真はしげを撮影。


社会デザインの可能性を、多彩な視点から拡げていくためのメディア、ブルーブラックマガジンさん。かすやが連載担当していますので読んでね。

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