『ふうせん』
命が、芽吹く。
粛々とくり返される。
小さな、けれども力強いエネルギーの塊が、声もなく、その存在を放つ。
奇跡と呼ぶのなら、この世の全てがソレになる。
忘れているだろう。
忘れているのに。
数の限度を超えて繰り返されてきた奇跡が、硬く閉じた目を、強引にこじ開ける。
手が、頬が、髪が、背中が。
血のつながりなど、取るに足らず、
種の違いなど、言うまでもない。
思い出したなら、もう、忘れることはできない。
全てがソレの集まり。
目にうつるもの、全て。
喜びの涙は、枯れることを知らない。
悲しみも、憎しみも。
存在の否定さえも。
全て。
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