地域におけるブランドマネジメントの進め方
ここ数回は、地域ブランドのアプローチについて書かせていただいていました。特に「地域での協業を推進するブランディング」について、読者の反応が良かったので、今回は地域における協業を踏まえたブランドマネジメントの進め方についてもう少し深堀をしてみたいと思います。
地域におけるブランドマネジメントの進め方
コレクティブ・インパクトのおさらい
「地域での協業を推進するブランディング」の記事の中で、協業ブランディングにおいて、ソーシャルイノベーションの領域で注目されている、コレクティブ・インパクトのような高度なモデルを取り入れる可能性について触れました。
コレクティブ・インパクトとは、スタンフォード大学が発行する専門誌 Stanford Social Innovation Reviewで、John KaniaとMark Kramerの共著による論文が発表された考え方です。具体的には、「異なるセクターから集まった重要なプレーヤーたちのグループが、特定の社会課題の解決のため、共通のアジェンダに対して行うコミットメント」と定義されています。今回はこのアプローチを段階的なフェーズに分けて、詳しくみていきたいと思います。
コレクティブ・インパクトのための3つのフェーズ
書籍スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー「コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装」の中で、「コレクティブ・インパクトの実装に向けて」という記事があります。この記事の中では、世界各地で実践されてきたコレクティブ・インパクトの事例を研究し、その成功要因を紐解いています。コレクティブ・インパクトの実践知を得るには良記事ですので、ぜひおすすめします。この記事の中で、コレクティブ・インパクトを実践する過程として3つのフェーズについて解説しています。
フェーズ1:活動の立ち上げ
初めのフェーズでは、活動自体の立ち上げをテーマにしています。重要なのは、地域ですでに活動している主要プレーヤーの状況や取り組みを把握することから始めること。そして、共通のアジェンダにつながるような、社会課題に関するデータを整えること。最も重要と言っても過言でないのが、地域での多様なステークホルダーの巻き込みを牽引できる影響力のある招集者たちの参画。記事の中でも地域で変化生み出す取り組みを持続させていくためには、問題解決に情熱を注ぎつつ、自分の視点を押し付けずに他のステークホルダーが自ら答えを出しように促すファシリタティブなリーダーの重要性が語られています。
フェーズ2:インパクトに向けた組織化
フェーズ2のテーマは、インパクトに向けた組織化です。地域ブランドのプロジェクトが途中で中断してしまう最も大きな要因は、活動を牽引し取りまとめるマネジメント組織がきちんと設立されないことにあります。AKINDでも、その壁にぶつかるプロジェクトで苦い経験をしてきました。組織を構築していくためには、プロジェクトに関わるステークホルダー同士の協業による共通のアジェンダと評価・測定システムの確立が重要となります。企業でいうビジョンや業績評価にあたるものです。このような組織は、地域のさまざまなステークホルダーとの協業から誕生するため、どのように共通言語を設定し、多様な活動を支える組織の基盤の構築にも時間と予算を避けるかが重要です。そして、設定した共通のアジェンダや評価・測定システムに向けて、多数の関係組織の足並みを揃える対話機会の創出や実証実験プログラム
などのプロセスへの着手を実践します。
フェーズ3:活動とインパクトを持続化
最後のフェーズでは、活動とインパクトを持続させるための強固な基盤づくりがテーマとなります。この時点では、すでにブランドに沿ったさまざまなプログラムが具現化しているタイミングとなります。しかし、時間と予算は限られていることが世の常ですので、優先順位の高い分野に対して、協業をフォーカスさせることが重要です。そのためには、実行している多様な取り組みに対する体系的なデータの収集を行い、評価・測定システムによって状況を正しく共有できる環境を整備することが大切です。そして、共通のアジェンダに向けた進捗を確認しながら、積極的に協業を通じた学びを実践し、軌道修正できるような、持続可能なプロセスの整備を進めます。
おわりに
今回は、地域ブランドマネジメントを進める上で、コレクティブ・インパクトのアプローチを参考に長期的なフェーズについて書かせていただきました。次回は、各フェーズごとにもう少し深堀りをしてみたいと思います。