
【10周年】 AKIND創業前物語・その3
今回で、AKIND創業前のストーリーは最後となります。創業するきっかけは「AKIND」という名前とそのコンセプト。今回はそんな、ブランディング・ファームらしい誕生エピソードを綴ります。
ネーミングとロゴデザインから誕生したAKIND
「三方よし」ってええやん!
AKIND創業者の岩野と森江は、ブータン王国の旅(前回の記事)から戻ってからも、前職のCIAというブランド・コンサルティング会社で多忙な日々を送っていました。
2012年の年末にかかった頃の夜中、僕たち二人は渋谷のカフェで食事をしながら、「35歳が迫ってきたけど、このままでいいんだろうか?」と言う青臭い話をしていました。その頃、少しづつ仕事の経験が蓄積され、二人だけで担当するプロジェクトが徐々に増えてきた時期でした。二人で手がけたえほんバスプロジェクト(前々回の記事)やブータンの旅で考えていたことを振り返りながら、「僕たちが身につけたブランディングやプロジェクトマネジメントのスキルは、もっと社会に役立てることができるのではないか?」。関西人で一人っ子という似た境遇を持った僕たちは、「関西にいる両親が歳をとっていく中、このまま東京に居続けるべきなんだろうか?」など、お互いのもやもやを話し合っていました。
その時、「なんか、東京だけで仕事をやっているのは、カッコ悪いかもね。関西に帰ると、地域のポテンシャルを生かせてないのが、もったいなく感じるよね。ここは反骨精神持って、関西に戻って、ブランディングの会社を創業してみるのもいいかもね」と、あまり起業家タイプでない二人が冗談混じりで、「もしかしたら?」という可能性をお互いに確かめ出しました。

この時期、岩野が海外のビジネス書だけでなく、日本の経営者の本を読み出した頃で、「100年以上続老舗企業が多い日本の秘密は、”三方よし”っていうコンセプトにあるような気がするんだよね」と森江に投げかけ。「”三方よし”は、ブータンでも話し合っていた日本だからこそできることにもつながるし、社会を豊かにするためのブランディングにもつながるかもね」と森江が語り出しました。
ちょっとした会話の中から、“三方よし”と言う言葉に何かを感じた岩野がパソコンを立ち上げ、黙りながら手を動かし始め、「こんなんどうかな?」。パソコンの画面には、“商”をマークに“AKIND”と言うネーミングを配置したロゴデザイン。「商人(あきんど)にOne-of-a-kind(唯一無二)と言う意味を掛け合わせて、AKIND」。森江くんが、「ええやん、会社つくろう!」と即答してくれ、思いつきで”AKIND”が産声を上げました。

副業しながら資金を貯め、創業へ
僕たちは、「勤めていた会社に迷惑はかけたくないし、飛ぶ鳥は跡を濁したくない」というスタンスを大切に、1年後に会社を辞めることを会社に伝えることにしました。そして、「1年の間に副業を再開させ、会社設立の資金を用意し、起業前にアメリカを一緒に巡るための視察資金も貯めること」を即断し、AKIND起業の準備が始まりました。
2014年に入ってから、東京と神戸の間を飛行機で移動しながら、会社の設立準備を進めていました。会社設立に向けて、神戸R不動産の小泉さんと出会い、ちょうどシェアオフィスを検討している頃だと聞き、「ぜひ、入居させてください!」と即決(僕たちはKITANOMADの2組目の入居者で、1組目は建築家の今津さん、3組目は編集者の安田さん)。創業前から、仙台の居酒屋、鹿児島のファームショップ、大阪のハラール対応のお土産ブランド開発などの案件を受注し、神戸空港から全国の地方へと飛び回りながら、会社を退職し、二人でアメリカに旅立ちました。

2〜3週間かけて、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ポートランド、ニューヨークを巡り、各地に住んでいるデザイナーや友人たちと楽しい時間を過ごしました。最新のスポットやリテールを視察し、創業後の仕事に活かせるネタやアイデアを仕込んでいきました。この旅の経験が、後のEAT LOCAL KOBEやFARM CIRCUSなどのプロジェクトに役立ったと記憶しています。
そんなこんなで、バタバタしながら、2014年2月20日に登記を済ませ、神戸の北野坂に新しくできたシェアオフィスのKITANOMADの一角にスペースを借りて、株式会社AKINDが神戸の地で誕生しました。

おわりに
AKINDの創業前から創業までの話にお付き合いいただき、ありがとうございました。何のアテもなく、勢いだけの裸一貫で創業した僕たち。気づけば、今年で10周年を迎えることができました。これからも、初心を忘れることなく、一期一会を大切に精進していきたいと思います。

<この記事を書いた人>
岩野 翼 | Tasuku Iwano
株式会社AKIND 代表取締役 CEO / 神戸在住 / 二児の父
英国のBrunel University ブランディング&デザイン戦略修士課程修了。2014年に「百年続く、三方よしの商いを共につくる」ことを目指し、株式会社AKINDを神戸の地にて創業。組織と地域に“前向きな変化を生み出す”ブランディングファームとして、対話型組織開発やデザイン思考のアプローチを組み合わせたブランドマネジメントを実践している。
主なプロジェクトは、Peach Aviation株式会社のブランドマネジメント、経済産業省のMVV策定、ANAグループのビジョン策定、道の駅FARM CIRCUSのブランド開発、都市ブランド戦略「食都神戸」の策定、神戸ウォーターフロントのエリアブランディングなど。