【本来の自分を取り戻すアーユルヴェーダ】スリランカ長期滞在型ホテル Tagiru.のパンチャカルマ2週間。
2023年3月、私はスリランカにある長期滞在型アーユルヴェーダホテル Tagiru.にゲストとして3週間滞在して人生初のパンチャカルマを受けました。そしてその後、9月からTagiru.チームに初の日本人スタッフとしてジョイン。スリランカでホテル運営に関わって1年になります。
この「ゲスト」と「スタッフ」の両視点から、本場スリランカのアーユルヴェーダとアーユルヴェーダホテルについて語ることは私にしかできないことだと思い、私が現地にいて感じる現代におけるアーユルヴェータの活かし方、日々スタッフとして取り組んでいること、感じていること、ゲストの変化などなどを綴ってみることにします。
今回は、Tagiru.が2週間滞在を推奨する理由と、わたし的おすすめの過ごし方について。
この記事は、Tagiru.滞在を具体的に検討している方、滞在の予約をしている方、そして現在滞在している方に向けて、参考にしてもらうことでアーユルヴェーダ滞在がより深く価値ある時間になればと思い、私の体験を中心にまとめました。
Tagiru.での時間。
「2週間」。
忙しい日々を過ごしている人にとって、2週間の休みを取ることは中々勇気がいることだと思う。ましてやその休暇を、「スリランカまで行って、アーユルヴェーダだけに使うってどうなんだろう?」と考えてしまうことも。
でも、ここに来れば「2週間滞在を推奨している理由」がよくわかる。
実のところわたしも、去年2月にTagiru.を知って最初に問い合わせをした時は、「ほんとに2週間もいるのかな?」と思って10日間での予約を考えていた。でもオーナーの修司さんに「10日と14日では感じ方がだいぶ違いますよ!時間があるならできるだけゆっくり滞在することをおすすめします。」と言われ、「確かにせっかくならちゃんとアーユルヴェーダに取り組みたいし、効果も感じたい。」と思い直し2週間の滞在を予約。結果的に滞在中に1週間延長することにして(たまたま部屋が空いててラッキーだった!)トータル3週間滞在した。
ゲストとして滞在し、今はスタッフとしてTagiruに滞在するゲストを見ている中で思うのは、日常から離れて本場スリランカで2週間のパンチャカルマを受けるという体験は、間違いなく今後の人生への投資になるということ。実際にゲストから「これまでの人生で最も良いお金の使い方でした。」と伝えてもらうことも多い。
とはいえ、どれだけ事前に説明されても「10日と14日でどれくらい体感値が違うのか?」を想像するのは難しいし、逆に実際に来てみないと「本当に2週間必要だった」とは思えないのも確か。でもゲストが口を揃えて、「推奨2週間としている意味がよくわかりました。」と言ってくれるのも事実。
だから騙されたと思って人生に一度は、長すぎるかな?と感じるくらいのお休みを取って、心とカラダとじっくり向き合う旅を。日々頑張る自分へのギフトとして、日常から離れて「本来の自分を取り戻す」時間を贈るのはどうだろう。
ここに来るのに必要な持ち物は、ちょっとの勇気と時間だけ。
なぜ2週間必要?
「2泊3日程度で体験はできませんか?」と問い合わせをもらうことがある。
そもそもアーユルヴェーダの本場インドやスリランカでは、1ヶ月ほどじっくりと時間をかけて行うのがパンチャカルマ(浄化療法)。準備と回復に十分な時間が必要なので、Tagiru.では推奨滞在2週間とお伝えしている。最低滞在日数はオンシーズンは10日、オフシーズンでも8日。それはただの「お試し」ではなく、しっかりとアーユルヴェーダの本質を滞在全部から味わって未来に繋げて欲しいから。(※滞在が8日間以下となる場合は、パンチャカルマにおける最も本格的な施術「クリーニング」は行えず、あくまで次の長期滞在を見据えた、体験的なプログラムとなるので予めご理解ください)
パンチャカルマは、大きくこの4ステップで行う。
それぞれのプロセスを少し噛いて説明すると、
改めて、これは「治療」であるということ。
インド・スリランカでは、アーユルヴェーダはれっきとした医療。ドクターがコンサルテーションで脈診を行い、その人の体質、現在の状況によってベストな過ごし方(トリートメント、薬、食事)をオーダーメイドで処方する。だからこの滞在は、本来の自分に整えていくための、ある種の"入院"だと考えてみてほしい。ただ、いわゆる私たちが「入院」と聞いてイメージする、無機質な真っ白い壁や天井を見つめながら、点滴に繋がれ、味気ない病院食と共に過ごす西洋医療の入院とは全く違う。(わたしの父親は長年病気で入院していて、いつも辛そうで嫌がっていたし、その姿を見ている家族としてもとても心苦しかった。)
病気じゃなくても、なにかしらの不調を抱えていたり、心身ともにリラックしたい、たまっているものをデトックスして、頭や体や心の重い感じをスッキリさせたい。そんな願いや目的に対して治療を行なう。
日常から切り離して、スリランカの自然とゆるやかな空気に癒され、アーユルヴェーダの力を借りてじっくりと自分をほどいていく。それはとても優しくて格別な時間となる。カラダや心を癒すのにこういう選択肢があったんだ、こんな場所があったんだ、とわたしは目から鱗が落ちた。
ドクターのコンサルテーション
1日4回のトリートメント
1日2回の薬
1日3食のドーシャ別の食事
トリートメントの他にも毎朝のヨガがあったり、瞑想、アーユルヴェーダ料理教室やミュージックセラピーなどのアクティビティもある。朝昼晩と3食きっちり決まった時間にごはんを食べて、4回のトリートメントを受けていたら、意外とあっという間に1日が過ぎる。規則正しいスケジュールとトリートメントの効果もあって自然と眠くなるので、私はほぼ毎日夜22時前には寝て、朝5時半には目が覚める日々だった。(こちらに来て働いている今も、そのルーティーンは変わらない。)
参考までに2週間の一般的な滞在スケジュールはこちら。
いちばんの鍵は、ただ委ねること。
14日間の滞在の場合、先ほど伝えた4つのステップのうち、Preparation(準備)〜Pacifying(バランスする)までを基本的には行う。パンチャカルマにおいて、Nourishing(日常への回復)を促していくためにも、何もしない、ぼーっとする時間が心身のデトックス、体力回復、そして帰国後の反動が起きないためにとても重要だということを、私も身をもって感じた。
まさに海を眺めて、風を感じて、ただなにもしないぼーっとする時間がここでの醍醐味。
・・・とはいえ2週間もゆっくりしたことがない人にとっては、「暇だな。」と感じることもあると思う。普段、常にカレンダーの予定を埋めていないと不安になる人、分刻みでタスクをこなすことが毎日の当たり前になっている人にとって、きっと「ぼーっとしてください。」が一番難しい。
スタッフとして働く今は、初日のドクターコンサルに私も通訳として同席して、その人の生まれ持った体質や現在の状態をドクターと共に把握していているけど、数日経つとゲストの過ごし方に変化が出てくるのがとても面白い。たとえば、ヴァータ体質の人はじっとしているのが苦手ですぐ動きたがるし、ピッタ体質の人は予定を完璧に組みたがる。(ピッタヴァータ体質の私がまさにそれ!笑)
人それぞれ体質や状況が違うので一概にはいえないし、「滞在中の過ごし方は自由である」という大前提の上で、自分の思考・行動の癖や日頃の当たり前を少し手放して、「ただ流れに身を任せて、委ねる。」それがとても難しくて、勇気がいることなのかもしれないな、と思った。
例えば、寝る時間や朝のルーティン、デジタルデバイスとの距離感、カフェインやアルコールの習慣、毎日何気なく、もはや無意識にやっている普段のあれこれを一定期間手放すこと。おやすみすること。
ひとつひとつを少し手放して、ただTagiru.に流れる時間に身を委ねる。
少しずつ緊張がほぐれ、日に日にリラックスして深く誘われていく様子が表情から垣間見えてくる。環境の変化、日常とは全く違う時間の使い方、生活ルーティーン、食べ物の違い・・・それに対して、「いろいろ思うことはあるけど、まずは信じて委ねてみよう。」と思えるかどうか。日々変化する自分の心とカラダを観察して、あまり頭で考え過ぎず、感じることを優先できるかどうか、なのかも。
よりリラックスして、深いところまでデトックスするには。
そして、Tagiru.に来て数日が経つと、「せっかく来たんだから、何かしなきゃ!」という気持ちが浮かんでくることがある。本を読まなきゃ!瞑想しなきゃ!時間できたし観光に行きたい!スリランカの街も見てみたい!と、色々詰め込みたくなる欲張りな精神が生まれたりもする。
ただ深いデトックスのためには、心と体がリラックスしていることが重要で、色々考えすぎていたり、あれもこれもと頭がいっぱいになったり動き回っているとそっちにエネルギーが使われてデトックスが十分にやりれないことも。
例えば出かけて「楽しい」と感じることは、それら全てがアーユルヴェーダトリートメント中には刺激になったりする。トゥクトゥクで風に当たること、街のノイズ、目新しい景色、強い日差しの中で歩くこと・・・せっかく整い始めたドーシャがまた乱れることも多い。
ちなみにわたしは初のTagiru.滞在中、パンチャカルマが一通り完了する2週間は一歩も外に出ずホテル内に留まって過ごした。本を読んだり、内省したり、書き物をしたり、ただ海を眺めたり。シロダーラなどの効果なのか夢と現実の間を漂うような日も多く、むしろ「出かけたい」という気が全く起こらず、ずーーっと凪のような状態が心地よかった。PCやSNSは開く気にすらならなかった。(滞在中はデジタルデトックスしようと最初から決めていた。)
「考える」というよりも「感じる」時間を過ごす中で、たくさんのインスピレーションが湧いたし、自分の本音にも気づけた。2週間を過ぎた頃から少し出かけたいなという気持ちやエネルギーがたぎってくる感覚があって、最後の数日は街に出かけたけど、一気にヴァータが上がったことが自分でもよくわかった。ホテルに留まってただただ静かな時間を過ごしたことが、自分にとってはとても良い過ごし方だったと振り返って何度も思う。
まさに日常から離れたノイズの少ないここだからできる"暇な時間"が精神を整えてくれて、「今、自分にとってなにが一番大事なことか。」を考える機会にもなった。
あと、「ちゃんとやらなきゃ。」と、真面目に考えすぎたり、周りを気にしすぎるのもあまり良くない気がする。誰かとの比較の中ではなく、自分の「個性」や「反応」に目を向けるのがアーユルヴェーダ。ドクターがしっかりコンサルしてお薬やトリートメント内容を考えてくれているので、そこに身を委ねて、あとは「観察する」のがいい。普段では気にも留めなかったり、意識を向けないような些細な変化に気づけるようになってくる。意思を持って休みをとって、時間もお金も投資してスリランカまで来た。Tagiru.に来た。もうそれだけでハナマル◎
滞在中は何かを残そう、手に入れようと必死になるよりも、流れに委ねて過ごすことで最後にふわっと記憶に残ったものを未来に持ち帰る、くらいの心持ちがいいのかもしれない。ぼーっとしながら、「何もしてない自分」に罪悪感を感じちゃったら、そっと手放して海に優しく流してみて。
実際に私が滞在中どんな風に過ごしていたかと、その時々に感じた変化はこんな感じ。
(ちなみに、どうしてもスリランカ観光したい!という人は、Tagiru.滞在の前に行くのがおすすめ。シギリアロックに登ったり、サーフィンしたり、長時間の移動など、体力を使うことはアーユルヴェーダ直後は控えた方がいいので。)
帰ってからの2週間が、特に大事。
「帰ってからすぐにフルスロットルにならないように、ソフトランディングしてくださいね。」とお見送りの際にゲストにはお伝えしていて、これは帰国後の過ごし方がとても大切だから。
2週間かけてしっかりデトックスした後なので、人によってはそのかけた時間の倍くらい(約1ヶ月)はエネルギー回復に時間がかかる。体力や免疫力が落ちているので、人混みをなるべく避けたり、一気に忙しくならないようなスケジュールをあらかじめ組んでおくこともTagiru.での時間の余韻を少しでも延ばすコツ。
私は昨年3月に初めて3週間のパンチャカルマを受けた後、帰国してからがとっても大変だった。(インドで1ヶ月間の瞑想やヨガ、その後スリランカでアーユルヴェーダパンチャカルマ、とかなり特殊な2ヶ月間を過ごしたというのも大きな理由だけど。)日本での日々に馴染むのに2ヶ月くらいかかったかな。
たとえば、わたしはこんなことが起きた。
ゲストの話を聞いていると、こういう変化が起きる人もいる。
ぜひTagiru.での時間を日常に馴染ませて、余韻を味わう数日、数週間を予め見据えて予定の入れ方やスケジュールの工夫をしたり、仕事の調整をしておけると良いのかも。
ただ、そもそもTagiru.での時間はかなり特別なデトックス期間。それを帰国後も完璧に継続するのはさすがに難しい。最終日にはドクターから帰国後の過ごし方へのアドバイスや栄養指導も行うので、まずはそれを読み返しながらできる範囲で続けてみるのがファーストステップ。うまくチューニングできないことや、思いがけない心身の変化もそれはそれで受け入れて、長期的視点でアーユルヴェーダを人生に取り入れてみて。
”人生に「10%」のアーユルヴェーダを。”
Tagiru.代表の伊藤が、よくそう言っている。
わたし自身も手段としてのアーユルヴェーダを自分の人生に取り入れたことで、随分と生きやすくなった。日々自分を観察していると些細なドーシャの乱れに気づくようになる。本来の自分の体質を知ったことで、自分がどんな生活や行動を続けるとバランスを崩しやすくなるかもわかった。病名をつけて診断する西洋医学と違って、健やかに生きるために立ち返る指針が自分の生まれ持った体質(個性)であることが、アーユルヴェーダの面白さ。毎日にちょっとずつ取り入れると、自分の変化を面白がって、無理なくカラダもココロも整えていける。
Tagiru.2つ目のホテルオープンに向けて。
最後に、嬉しいニュースも。
2024年12月Tagiru.2つめのホテル「Tagiru. Maha Ayurveda Resort」がオープンします。9月にクラウドファンディングを行い、おかげさまでたくさんの応援、ご支援をいただいて目標を大幅達成しました。
『もう一度、人生がはじまるホテル』
これが私たちが目指す、世界で唯一無二の場所、Tagiru.の向かう方角。
なぜ2つ目のホテルに挑戦すると決めたのか、そしてその先に描いている未来など、代表の伊藤が想いをたっぷり詰め込んだクラファンページ、ぜひTagiru.にいらっしゃる前に読んでみてもらえると嬉しい。
私もこの1年間、Tagiru.チームに加わり、スリランカで暮らし、ゲストの変化を目の前で見ながら、アーユルヴェーダの深みと魅力、そしてこの場の持つ力や可能性を感じている。現代に生きる私たちにこそ必要な伝統医療を、未来のアーユルヴェーダの在り方を、もっともっと探究し、哲学し、形にしていきたい。
これからTagiru.に来る方たちにとって、この記事が、「本来の自分を取り戻す。」そんなアーユルヴェーダ滞在をしてみよう!と思うきっかけになったら嬉しいです。そして一度滞在した方は、いつでもまたTagiru.に帰ってきてください。「ここがあるからわたしは大丈夫。」そんな風に心の拠り所、帰る場所になれていたらいいな。
いつでも、穏やかなスリランカの風と共にお待ちしています!