語学レッスンと語学学習の秘訣――私の教え子に思いを馳せる
はじめに
2022年より、個人の仕事として語学レッスン(とりわけスペイン語の語学レッスン)をしている。この仕事と私の経歴(学歴)に関する詳しい自己紹介は次より参照できる。この投稿を簡潔に述べると次の通りである。
語学レッスンの内容と教え子に思いを馳せる
現在、語学学習と語学レッスンはありふれている。これほど語学学習がSNSを通じて誰にでも開かれている時代は、きっと、今が最先端である。SNSを通じて、「ネイティブが言う文」を知ることができるし「話せるようになる」語学学習が繰り広げられている。また、「AI chat GPTを活用した語学学習術」も私達に開かれた。これまで、限られていた語学学校という大きな単位が消滅し、SNSを通じた小さな共同体で、語学講師も語学学習者も「革新的な」語学学習を求めるようになった。
これまで語学講師としての筆者が意識してきたいくつかのことを目録的に挙げる。これは語学学習者でもあった私自身の意識でもあった。
上記の意識はこれまでの語学レッスンに反映されていたと思う。次から、私の下でスペイン語レッスンに取り組んだ教え子の声を書き留める。
2022年12月:社会人にスペイン語レッスンを担当。その際、スペイン語の文法の一つ、再帰動詞に関する文法の解説授業であった。私は、スペイン語レッスンにおいて言語学的な知見を踏まえて文法を分かりやすく「画期的に」教えるように心がけた。
2022年9月から2023年3月に担当した大学非常勤講師へのスペイン語レッスンでは、一つひとつ「画期的で」「分かりやすい」文法の説明を心がけた。もちろん、スペイン語の会話の時間を「フリートーク」として設けた。とりわけこの時期の筆者は、「モチベーション」に強いこだわりを持っていた。この点は次の受講生の声から垣間見れる。
さて、この当時の語学講師の筆者の課題とは何だっただろうか。係る問いは、今だったらどのような指導をするだろうかということ。このことは、語学指導に携わる者として、また語学学習に励む者として理想の語学学習法を顧(かえり)みることとなる。
「ひたすら会話をしよう」と謳う語学講師は多い。しかし、アウトプットはインプットをし続けた先の漏れであって、豊富なインプットのないところにアウトプット、つまりインプットの漏れはない。この際、インプットというのはやはり単語力のことである。結局、語彙力である。
これも先述の「ひたすら会話をしよう」ということへの疑問を投げかける。インプットのないところにアウトプットはない。優良な語学書あるいは文法書を音読させ、さらには暗唱をさせる授業をすること。個人的に、私はイタリア語の文法学習でイタリア語の「遠過去」が苦手である。これを克服するために、私は遠過去の文法の音読、さらには暗唱をした。この暗唱を、実際の会話で単語を入れ替えて話せばいい。暗唱指導と暗唱学習の重要性については、黒田龍之助の言葉を参照。
一般的に、多くの語学講師が確認テストをしていない。解説して、「なにか質問はありますか」という問いかけで終わらせてしまう。
一つ、筆者の試論として、語学学習者は自分の学習についてよく知らないということを述べたい。これを仮に語学学習者の非当事者性と呼んでみよう。そして語学講師の専門性に言及したい。したがって、語学学習の定着に際して、当事者に質問するのではなく、語学教育の専門家である講師が確認テストをすること、そこに責任を持つこと(responsibilityは、一方的に責任を押し付けるということではなく、respondという応答することの応答可能性を意味する。これは國分功一郎の議論を念頭に置いている)。
実際の語学指導は難しい。2024年9月に元スペイン語学科の学生にワーキングホリデーに向けたスペイン語指導をした。その時の振り返りシートには、音読と暗唱を多くこなすことの重要性を認識しつつも、会話をすることの難しさに直面していた。(しかし、4日間という少ない期間でのスペイン語レッスンだったので、より良く授業をすることができた。
結論
ひとは常に変わる。というか、変わってしまう。語学学習で話せなかったスペイン語が話せるようになることも、私は変わってしまうことの一つの例である。一方で、そんな簡単に一つの言語を話せるようにはならない。だから変わるためには、ある一定の時間とともに身につける学びに身を捧げることが大切である。
ここでは語学講師の筆者の立場から、これまでの教え子に思いを馳せながら、より良い語学指導について考えた。このことは同時に、学習者にとってより良い学習とは何かという問いと実践にも繋がる。
これまでの投稿については、次を参照。
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