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9年越しの約束と再会、の話

2020年6月1日、SpaceXは商用有人宇宙飛行を世界で初めて成功させました。宇宙開発はもはや「官」だけでなく、「官と民」の時代になったことを感じさせる、まさにエポックメイキングな出来事でした。

打ち上げ成功の瞬間、ロケット第一段の着陸、打ち上げ中の船内、Crew Dragonのスラスタ噴射、ISSへのドッキング、そして、Crew Dragonのハッチが開き宇宙飛行士がISSへ入る瞬間。どこを切り取っても歴史に残る映像でしょう。リアルタイムで時代が変わる瞬間を目の当たりにできたこと、また同時代に同業者として宇宙に携われていることを誇りに思っています。

ところで、みなさん、Crew Dragonに搭乗していたボブ・ベンケン(Bob Behnken) 氏とダグ・ハーリー氏(Doug Hurley)が入ってきたISSのドアの上に星条旗があったのに気づきましたか?今回はこの旗にまつわるお話です。

背景画像引用:NASA

SpaceXと星条旗

今回の出来事は、9年前から決まっていたのかもしれません。

今から9年前の2011年、最後のスペースシャトル・アトランティス号が打ち上げられました。最後のミッションとなったSTS-135では、ある特別な星条旗がISSに持ち込まれます。その旗は、1981年のスペースシャトル初飛行であるSTS-1で宇宙空間を飛行したものでした。

そしてその特別な星条旗は、さらに特別な意味を持つことになりました。「次にアメリカの国土から打ち上げられた宇宙船に乗って宇宙飛行士が取りに来るまで掲示する」というNASAの声明により、ISSのドアに掲示されることになったのです。これにより、宇宙を舞台にした壮大な旗とり合戦がスタートしました。

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画像引用:NASA


最後のスペースシャトル・アトランティス号の帰還直前の2011年7月11日、SpaceXは"SpaceX commencing flag capture sequence"とツイートし、この旗とり合戦に名乗りを上げます。

2011年当時、SpaceXはまだ、ブルー・オリジンやシエラネバダ・コーポレーションなどの他の民間宇宙企業と横並びの状態であり、現在のような確固たる地位を築いているわけではありませんでした。それにも関わらず、SpaceXは旗とりを宣言したのです。

そして、それから9年後の2020年、SpaceXは宣言通り、ついに民間として初の商用有人飛行を成功させたのです。

星条旗は、約束通り、SpaceXによって地上へ持ち帰られます。これには、ただ旗を持ち帰るというだけではなく、もっと大きな意味合いがあります。それは、今まで「官」が担ってきた宇宙・地上間の宇宙飛行士の輸送が、ついに「民」主導へと引き継がれれるという、いわばバトンが引き継がれることを意味しているのです。もっとも、SpaceXにとっては、すでに9年前から決まっていたことなのかもしれませんが。

ダグと星条旗

星条旗は、Demo-2のパイロットであるダグ・ハーレー氏とボブ・ベンケン氏によって、地上へと持ち帰られます。皆さんは、ダグ・ハーレー氏とこの星条旗に特別な関係があることをご存知でしょうか。

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画像引用:NASA

この写真には、最後のスペースシャトル・アトランティス号でISSに持ち込まれた星条旗とSTS-135のメンバーが写っています。

左上の白髪の男性がどなたかお判りでしょうか?そうです。今回のDemo-2のパイロットであるダグ・ハーレー氏です。彼は最後のスペースシャトルにパイロットとして搭乗していました。最後のスペースシャトルでISSに旗を持ち込んだ張本人が、9年ぶりにその星条旗と再会し、最初の民間有人宇宙船であるCrew Dragonで旗を持ち帰ることになるのです。

このような粋なアサインをしたNASAと、それを実現してくれたSpaceXに、鳥肌が止まりません。"Congratulations, SpaceX"!!!

まとめ

今回は、ISS内の星条旗にまつわる話を紹介いたしました。ダグ・ハーレー氏によって持ち込まれた星条旗は、再びダグ・ハーレー氏によって地球へ戻り、SpaceXの手に渡ることになります。

SpaceXは今、月や火星への有人宇宙飛行を計画しています。もしかしたら、この宇宙旅行好きの星条旗は、月や火星まで旅行するかもしれません。官・民が本気で月・火星を目指している今、その日はそう遠くないでしょう。

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あきまる@宇宙の研究者
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