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カリスマの伝授するノウハウに食いつく凡人の末路~たとえばPTAの場合~

ネットに落ちてる『ノウハウ』は、モザイクかかったアダルトビデオのようなもの

 Twitterあたりにさくっと書かれた
『これさえあればうまくいく! 運営ノウハウ五カ条』
みたいなものは、モザイクかかったアダルトビデオと同じです。経験があれば「ああ、あのことか」とわかるし「そう、そう!」と、バーチャル意気投合して読めますよ。でも、未経験者が参考にして実践するって、かなーり危険じゃないですか。

 たとえばですね、こんなのがあったとします。

≪任意団体 これさえあればうまくいく! 運営5カ条≫
① 参加のハードルを下げる
② 自由に意見を言える雰囲気づくり
③ プライバシーの尊重
④ 会計の見える化
⑤ 意義や役目を押し付けない

 そうですね! いいですね!
 だけど実際どうしろと?
 ①~⑤に異を唱える人って、本邦の義務教育経験者ならそんなに多くはないと思うんですよ。
 でもね、例えば②とか、理想はどうあれ現実として実際問題どうやるのって話です。さらっと書かれていますけど、これを実現している会議を、皆さん経験したことありますか。え、ないの?

全ての乳首がピンク色というわけではない

 モザイクがかかったアダルトビデオがありますよね。あれはあれで大変オツだと思うんですけど、こと肝心なエリアに関していうなれば、ある程度事前に知識がないと、そこが実際どうなってるのか、あれ見ただけじゃわからないじゃないですか。
 経験者ならほぼほぼ想像つきますが、未経験者は見えそうで見えないその部分を想像で補うしかないわけです。別ルートからピンク色だという情報を入手して、パッチワークの妄想に熱き血潮をたぎらせるまではいいのです。ただ、想像と戯れる頻度程度が度を超すと、いよいよの段になって「ドドメ色だと思わなかった!」と腹を立てたりするのです。

エンタメをお手本と勘違いしてはいけない

 もっと言えば、経験豊富な人ならば、こういう部位は個人差が非常に大きく、一つとして同じ形状のものはないことを知っています。全ての相手に同じことして同じ満足するわけないということも(多分何度か痛い目をみて)骨身にしみているわけです。
 経験の浅い者ほどアダルトビデオの真似をして「これでいいのだ」となりがちです。あの女優さんはあんなに悦んでいたのに、このやり方が気持ちよくないおまえ何なのみたいな話になるわけです。これ、モザイクの問題か。

勝負は「のれんをくぐる前」

 勝負はのれんをくぐる前って、おまえどんだけ場末のラブホに行きつけてんだというツッコミの受付は終了しました。
 そういう話じゃなくてですね。要するに、蕎麦屋だろうが貸部屋だろうが、誰かと事を成すにおいては、「一緒にここに入ろうね」という合意形成が、いの一番に必要です。
 だがしかし、巷に出回るアダルトビデオには、ほぼ描かれておりません。どうしていきなりベッドの上から話が始まるんですか。なんならいきなり拘束具とか通報案件じゃないですか。きちんと同意書取ってるのかよみたいなことが気になって気になって、わたし、どうしても楽しめないんですよね、ああいうの。いや、わかってますよ、エンタメだって。

 愛好家の皆さんが本当に見るべきは、四角いお重に盛られたお蕎麦のすすり方ではなく(比喩的表現です)、意中の相手と蕎麦屋ののれんをくぐる前までの道のりなのではなかろうか。
 だって、皆さん、「のれんをくぐる前」のリアルをクリアできないからこそバーチャルで済ませてるわけでしょ。夜明けのコーヒー(古典的表現です)したければ、参照すべきはそっちじゃなくて『めぞん一刻』とかではないか。
 まあ、五代君は一回目はうまくいかないんだけども、そこも含めて「案外そんなもんだよね」と学習するって大事です。甘くて苦い道程ですよ。

やっぱエンタメも好き

 と長年思っていたのですが(40年ぐらいそう思っていた)、先月だったか、そこそこリア充な知人から「僕も見ますよ、たまにですけど」という貴重な証言を得た。なんで?と聞いたら「んー、見たいから」とか言われてしまった。心の中のやらかい場所は、案外ガードが固かった。

 そうか、そういうものなのか。と思って、わたしもいま一度その醍醐味を味わおうと試みたわけです。
 30作品ぐらい試したが、やっぱりどうにも無理だった。まずねー、長いのが無理。同じ動作やせりふが繰り返されるのが無理。どの出演者もとてもおきれいなのですが、どうしてみんな顔が似てるの。いや、それはおそらくわたしの観察が足りてないだけか。
 ただ、これらは単にわたし向けではないだけで、それぞれみんな優れたエンタメなのだということも非常によくわかりました。
 というわけで、以下、試したジャンルとその感想を列挙しますね。え、要らない? では、端折ります。

リアルはいつも地味に寄り添う

 どなただったかアダルト監督が、エッセイで「本当のセックスはそんなにアクロバティックなものじゃない」と書いていた。カリスマ男優・女優ご夫妻の夫婦生活を収めた作品は、体をぴったりくっつけ合って、ささやいたり微笑んだりする静かな静かな営みである、と。
 何それ、素敵。ひょっとして文部科学省制作なのかしら。日Pマークつけたらいいのに(公益社団法人日本PTA協議会推薦商品の例)。

 交尾って、いろんな意味で、いわば究極のコミュニケーションです。いかなる契約が交わされようとも、あるいはいかなる濃厚な愛の言葉や手厚い経済的支援その他が事前にあろうとも、だからといって「この人だったら絶対大丈夫」という保証には成り得ない。それに基づく『信頼』を交換し合う行為です。

 一対一でもそうなのです。ましてや複数人を相手に想定しているときはなおさら。わたし、常々思うんですよね。3Pとかって多分に精神的な満足が肉体的なそれより勝るものはないかと。だって、接触時間はマンツーマンより相対的に減るのですもの。それでも根強いニーズがあるのは、やっぱり楽しいからだろう。「みんなで事を成し遂げた」というワッショイ感がたまらない。わかる、わかるよ、そういうの。

リアルはいつも地味に寄り添う
(大事なことなので二度言いました)

 あれ、わたし一体何の話をしてるのかしら。
 サマリーします。

(1)ネットや書物でサクッと読めるノウハウはエンタメである
  →万人共通の「これが正しいやり方」はない

(2)現場の人と状況をよく観察する
  →想定と違ってもヘソ曲げない

(3)何かをやろうと思ったら地道な合意形成が大事
  →既存のマニュアル本は、えてしてその説明を端折りがち

(4)楽しいことは続く、広まる、支持される
   →グルーヴ感も時には重要

(5)「うまくいってる状態」は、傍目にはわりと地味
  →耳目を引く華やかな成功事例はエンタメとして楽しむ

 なんと、わたしはこんないいこと書いてきたのか。
 というかこの程度のことはもっと短く書けアタシ。

PTAに水戸黄門の印籠は必要か

 ここでようやくPTA。
 たとえばPTAの場合だと、インターネットや書籍を通じた「これさえやればうまくいく」みたいな虎の巻がちょくちょく出回るわけですよ。書き手本人がそう喧伝することもあれば、フォロワーが勝手に「この人のやり方こそが王道だ」ともてはやしているときもある。
 冒頭、例に挙げた5カ条(あれはわたしが本記事用に適当に作ったダミーですよ、念のため)みたいなものは、意外と書いた本人さんは、ご自身の活動を振り返ってのサマリーだったり、エッセンスを抽出してみただけだったりするのかもしれない。

 どんなにすぐれた理念であれ、方式であれ、それを導入するには「のれんをくぐる前」がある。
 湖底に土砂が堆積するように進めていったのかもしれない。天変地異で一夜にして情勢が変わったということもあるかもしれない。どちらにしても、そのときその場の偶然に色濃く支配されながら、進むしかないのである。

 けれども、読み手というものは、えてしてそうは受け取らない。経験が浅いほど、どこかの誰かのマニュアルを水戸黄門の印籠と誤解する。
 仕方ないよね。
 だって、大変だもんね。

 真に読み手を思うのならば、できれば「これさえやれば」みたいな誤解を与える書き方は、なるべく避けてほしいかな。だけど、これも個人の自由ですからね。これもまた、仕方ないのかな。

 PTAには水戸黄門の印籠が必要なのか、必要じゃないのか。
 個人的にはどっちでもいいけどね。
 最近ではPTAという仮にも任意団体を、教育委員会とか国会とかに訴えて、取り締まってもらいたがる向きがちらほら見えてきましたね。入退会の自由をうたう人たちが、『任意』の意味を法や規則で縛りたがるというのであれば、なかなかに憂鬱です。
 ひかえおろう!この紋所が目に入らぬか!
 ハハァ~~とひれ伏すPとT。
 これをマエノ用語で ”PTA イン・ロー”( in low / in law )という。
 

最後に

 ここまで駄文をお読みいただいた皆様、ありがとうございます。
 トップ写真は、北陸の食文化を彩る海の幸「のどぐろ」です。

 いい人ぶって書いてるけれど、前野さんって腹黒いんでしょう?
 いえ、腹黒ではありません。のどぐろです。

 北陸新幹線開通から早6年が過ぎようとしています。新幹線開業で一気にブレイクした金沢というまちの魅力、その大きな牽引力は豊かな食文化にあります。
 石川県はのどぐろ消費量日本一。ちなみに漁獲量なら鳥取県が日本一。 悪いことは言いません。安くおいしくのどぐろが食べたけりゃ鳥取に行きましょう。
 ついでにいえばズワイガニなら福井がいいです。福井の中でも特に原発のある湾がいい。宿も食事も安くてお得。ウーマンラッシュアワーさんの往年のギャグ、「こんなに原発があるのに夜は真っ暗。電気はどこへ行った!」の面白さが身にしみることでしょう。寒さも骨にしみるけど。
 もっと言うと、富山県のズワイガニは、わたしからすると微妙に肉質が落ちます。富山湾からあっちは紅ズワイが多いですね。紅ズワイ、安いです。子供をカニ食った気にさせるなら、紅ズワイで十分。とはいえ、殻をむく手間は紅ズワイも本ズワイも同じです。お金に余裕のあるアダルトの皆さんは、やっぱり本ズワイを食べましょう。富山の皆さんごめんなさい。

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