ARPUが低いSaaS、パートナー企業は売ってくれるのか?
こんにちはパートナーサクセス株式会社COOの秋國(@akikuni2316)です!
日々多く、アライアンス・パートナービジネスについてご相談を頂きますので、定期的にテーマとしてまとめていきたいと思います。
本日のテーマ
結論
最初に結論を申し上げると、単価は関係なくTAM・市場規模が全てです。
外部商材を多く取り扱う仕入れ担当者・MD(マーチャンダイザー)とお話しているとこのようなコメントを頂きます。
「短期的に売れるものではなく、長期的に市場を作っていけるプロダクト・商材を取り扱うことに意義がある」
外部企業とタッグを組んで一緒に市場を育てていくって理想ですよね。
いままで私が経験した市場についていくつか説明していきます。
サイバーセキュリティ市場
私は過去に10年間、ITセキュリティメーカーにいました。
これからセキュリティ商材を取り扱おうと考えているパートナー企業には、自社製品の説明は程々に、今後の市場規模・市場成長性を訴求して中長期でのビジネスアライアンスを提案していました。
今思うとサイバーセキュリティはTAMがほんとに広くて、訴求ポイントはいくらでもあって、提案し易い市場だったなと思います。その分競合も多いわけですが。
サイバーセキュリティ市場は群雄割拠のレッドオーシャンです。
多くのSIerなどがセキュリティ分野の商材を取り扱ってました。しかしサイバーセキュリティ分野は6兆円を超える市場規模と堅調な成長率があり、非常に有望な市場です。当然、プレイヤーの新陳代謝も激しく、常に新しい情報にアンテナを張っていないといけません。
すでに大きな市場があるにも関わらず、更なる拡大が見込めるので、パートナー企業の多くが常に新商材を探していました。
こちらは総務省が提出しているサイバーセキュリティの動向です。
6兆円も市場規模があるので、商材単価もピンキリです。
ちなみに私が提案していたSaaSで一番安いのはARPU100円です。ボリュームディスカウントによっては数十円でした。
複数のSaaSを組み合わせて提案しますし、企業規模に応じてID数が増加しますので、案件規模としてACV1,000万円超になることもあります。
ビジネスチャット市場
18年頃に2年ほどChatworkに在籍しておりましてアライアンスを担当していました。当時はパートナー企業に提案していても「ビジネスチャット?」という状態でしたが、ちょうどビジネスチャットのプレイヤーも増えてきていたので「戦国時代」とも呼ばれていました。
当時のパートナー企業への提案は、基本的に市場成長性を訴求していました。端的に言うとこんな感じでした。
「今後成長する市場なので”今”取り扱わない機会損失になりますよ。」
結果的にビジネスチャットの市場規模は大きくなっています。
HRTechは市場成長性がすごい
HRTechベンダーの多くはパートナー戦略を展開しています。それだけ多くのパートナー企業からの問い合わせも増えてきています。
記事を拝見しても、HR領域の各セグメントで市場が拡大していくのがわかります。
パートナー企業の多くは取り扱う商材の市場規模を見ています。
どれだけ素晴らしい商品でも提案先が限定的だったりすると、直販で終わらせたほうが早いです。
パートナー企業の視点は?
市場規模・成長性が重要と言いましたが、次にパートナー企業は何を商品選定の軸にしているのかですが、これは顧客属性です。
業種:自社顧客の業種に合致するか
職種:情シス向け、営業向け、どのような職種のリードが多いか
エリア:強いエリアはどこか
規模:SMB・エンプラどこに売れるか
ベンダーがどれだけ素晴らしい提案をしても、なんかパートナー企業の担当者がしっくりきていないときは、上記4項目の顧客視点が抜けているからです。
パートナー企業の担当者はプロダクト説明を受けているときに「これは自社のどの顧客ドメインに刺さりそうか」とざっと考え始めています。
例えば、既存顧客が1,000社でサービス提案先の顧客が300社であれば初年度で10%クロージングが可能か?だったら20〜30社が初年度目標かな。
みたいな感じで考えていますので、提案するベンダー側もこの視点でディスカッションするとお互いの期待値が擦り合ってきます。
失敗する場合はベンダーがひたすら機能説明と有名な事例の話をして終わる場合です。
あるベンダーさんがが東京の素晴らしい事例をもとに地方開拓をした話を地方のパートナー企業から聞いたことがあるのですが「100名以上の企業規模の導入事例を地方で持ってきても、そもそも100名以上の企業が少ないから50〜70名規模の導入事例を業種ごとに持ってきてもらわないとイメージわかない」と言ってました。
これはベンダーとパートナーでの顧客イメージがミスマッチしていたので、交渉がうまく進まなかったようでした。
ARPU1,000円未満の事例
冒頭の「ARPUが低いSaaSは〜」という話ですが、そこはTAM・市場規模が大事と言いました。
利益が大きく見込めたとしても提案先がない、市場成長が見込めなければ売れません。
そこで低単価でもパートナービジネスが成功している実際の事例を上げていきます。
LINE WORKS
LINE WORKSを運営するワークスモバイルジャパン社は22年9月にARR100億突破を公開しています。
以前弊社もインタビューさせていただきましたが、9割をパートナービジネスで構成されており、かつ、再販(卸売)モデルを中心に行っています。
プライシングがスタンダード450円からです。
更にここから再販(卸売)なのでトップラインは当然定価より下がります。
そのビジネスモデルにおいて、ARRが100億突破していることが何よりの証明です。
kintone
サイボウズ社はパートナービジネスで110億円のボリュームがあります。
サイボウズ株式会社 2022年12⽉期 決算・事業説明会 2023年2⽉22⽇
ポイントは、両社ともにARPUは低いが、IDによる従量課金なので、ID数が稼げるSMB以上であればARPAが高くなります。パートナー企業はSMBを中心に提案していくことが多く、自ずと案件規模も大きくなります。
直販でのARPAとパートナー経由のARPAを比較するとパートナー経由のほうが案件規模が大きくなることが多い傾向です。
パートナー企業にはARPUより市場規模を!
自社のプライシングはあまり気にする必要はなく、市場として存在するのか、今後の拡大余地が見込めるのかが一番重要なポイントになります。
市場規模や成長性を訴求できるようにパートナー企業との交渉を進めていきましょう!
最後に、パートナーサクセス社では仲間を募集しています!
パートナービジネス領域を一緒に盛り上げていただける方お待ちしています!