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地域言語/方言絵本のリスト

こんにちは、国立国語研究所/人間文化研究機構の横山晶子です。この記事は Advent Calendar 2024 言語学な人々 の企画です。

自分で手を挙げておきながら、期日がだいぶ過ぎての執筆になってしまいました・・・!すみません。

2025年3月16日に、国立国語研究所で消滅危機言語のフォーラム(NINJALフォーラム)が開かれます。

そこで「方言絵本の図書館」というスペースを企画していて、夜な夜な日本の地域言語/方言絵本を検索する毎日を送っているので、この記事ではその絵本のリストを作りたいと思います。

図書館企画と言うことで、今は「紙で読める」「購入できる」ものを集めています。まだ読んでいない絵本が殆どなので、紹介は後日追記していきます。

もし読んでくださった方で、「こんな地域言語(方言)の絵本があるよ」という方は、ぜひ教えて下さい☺ このリストはどんどん増えていく気概です!

アイヌ語

アイヌ文化や、アイヌの神話を元にした絵本は数多くありますが、アイヌ語の絵本で、紙で読めるものはそれほど多くありません。

私が見つけたもので、市販されているのは、知里幸恵さん・知里むつみさんの『銀のしずく降る降る』という本でした。アイヌのの神謡集から絵本化されたもので、アイヌ語(ローマ字表記、カタカナ表記)と日本語が併記されていて、子どもでも読むことができるそうです。

知里 幸惠 (著), 知里 むつみ (訳)(1993)『銀のしずく降る降る: 知里幸恵「アイヌ神謡集」より (郷土の研究 1)』

また、絵本ではないですが、言わずと知れた漫画『ゴールデン・カムイ』もアイヌ語が登場する漫画として有名です。

野田サトル(2015)『ゴールデンカムイ』(1-31)(集英社)

デジタル版ですと、「アイヌ民族文化財団」のホームページにたくさんの絵本が掲載されています。

東北エリア

青森

北彰介、太田大八(2018)『なんげえはなしっこしかへがな』
津軽弁で書かれた昔話6編が収められた絵本

秋田

斎藤隆介、滝平二郎(1976)『八郎』(福音館書店)
大男八郎と、秋田県の八郎潟の由来を物語った絵本

山形

ロブ・ハドソン (著), ダニエル・カール (翻訳)(2020)『ちちゃこいやつ』(マイクロマガジン社)
お腹を空かせた狼が、ほら穴のなかの“ちちゃこい”いきものをおびき出そうと、あの手この手でがんばる…。全編山形弁で訳した絵本

宮城

jugo(2023)『4コマ 仙台弁こけし 仙台宮城 方言まるわかりBOOK』(小学館)
仙台弁を話すご当地キャラクター「仙台弁こけし」の4コマ漫画が104本収録。監修は東北大学の小林隆先生

関東・甲信越

長野

菊池日出夫(2018)『まなつのかわ』(福音館書店)
夏の子どもたちの日常が豊かに描かれています。作者の出身地である長野県佐久方言が登場します。菊池日出夫さんは、他にも『のらっ子』絵本シリーズで方言を登場するそうです。

岐阜

岸 武雄・梶山俊夫(1974)『あおほろくの川だいこ』(ポプラ社)

群馬

星川 ひろ子, 星川 治雄 (2015)『竹と僕とおじいちゃん』
おじいちゃんに竹とりに連れていってもらい、竹の役割を教わる写真絵本。登場するおじいちゃんが群馬弁で話しています。

東京

ふくだのぞみ(2024)『いよっ!えどっこだねぇ』(理論社)
ハチマキをまくと「江戸っ子」になっちゃう主人公。チャキチャキの江戸弁を話しています。

松岡きの(2022)『ハンケな島ことば』(星雲社)
八丈島で暮らす人々や生きものたちの様子を、八丈ことばとともに紹介した絵本

東海北陸

愛知

丸山誠司(2020)『ノブーナガ』(絵本館)
コテコテの尾張弁のノブーナガが登場します

石川(能登)

大石可久也(2024)『あさいち』(福音館書店)
「輪島朝市」の活気ある風景を描いた絵本。復興への思いを込めて復刊されました。

富山

室井滋,長谷川義史(2015)『チンチンボンボさん』(絵本館)

近畿

大阪

ジョン・クラッセン (著), 長谷川義史 (訳)『どこいったん』(クレヨンハウス)

マイク・セイラ―(著),いまえよしとも(訳)(1980)『ぼちぼちいこか』(偕成社)
何をやってもうまくいかないかばさんの大阪弁にほっこり。小さい子でも楽しめます。

京都

つるたようこ(2020)『御伽草子「酒呑童子」より やさいのおにたいじ』(福音館書店)

中国四国

岡山

おかもとひでよ・おおよどながら『ほんまのかあちゃん岡山県備前のことば』(おおよど漫画制作所)
おおよどながらさんの、47都道府県で方言絵本を作るプロジェクトの岡山版。他に14冊の方言絵本が公開されているそうです!

島根

おおよどながら・なかやまさとこ『ほんとのおかあちゃん 島根県出雲のことば』(おおよど漫画製作所)
47都道府県で方言絵本を作るプロジェクトの島根版。

香川

脇明子、脇和子(1993)『あたごの浦-讃岐のおはなし』(福音館書店)
香川県(讃岐地方)に伝わる民話をもとにした、月夜の海辺で行われる魚たちの宴会を描いた絵本です

高知

西村繁男(1979)『にちよういち』(童心社)
高知市の伝統的な日曜市の風俗を描いた絵本

九州

長崎

太田大八(1992)『だいちゃんとうみ』
夏休み、海辺に住むいとこのうちに遊びに行っただいちゃん。作者が子ども時代を過ごした長崎県大村湾が舞台になっているそうです。

福岡

よしながこうたく(2008)『給食番長』(長崎出版)
給食が大嫌いなクラスの「番長」とその仲間たちが、給食をボイコットするところから始まるユーモアたっぷりの物語。

博多弁(福岡県香椎のことば)の訳が全ページにあるバイリンガル絵本。子どもたちも表紙だけで「面白そう!」と大興奮でした。

方言推し的には、博多弁の読み聞かせ音声も聞きたいな~と思います。著者のブログに、他方言での読み聞かせ動画やテキストもアップされています。

給食番長シリーズは、他にも『宿題ファイター』『交通安全大王』『おそうじ隊長』『飼育係長』『あいさつ団長』『ちこく姫』があります!

熊本

木下順二・清水 崑(1959)『かにむかし』(岩波書店)

鹿児島

東川隆太郎・さめしまことえ(2017)『西郷どん!まるごと絵本』(燦燦社)

奄美地方


沖永良部
沖永良部は私の研究地ですので、がっつり紹介させてくださいね!

松村雪枝、田中美保子、山本史、横山晶子(2022)『塩一升の運』(ひつじ書房)
竹一本の運と塩一升の運を授けられた男女の運命を描いた、沖永良部島に古くから伝わる昔話。沖永良部島内の2方言(国頭、上平川)と英語、日本語の4言語絵本。沖永良部語の朗読音声、ことばの解説、作家・中脇初枝さんの昔話の解説つき。

横山晶子・山本史(2019)『リズムで覚える島むに絵本 シマノトペ』(言語復興の港)
「わじわじ」「びらびら」・・・沖永良部島のユニークなオノマトペ(擬音語・擬態語)を集めた絵本です。言語の解説付き。

松村雪枝・山田真寛(2016)『みちゃぬふい』(言語復興の港)
沖永良部上平川集落出身の作家・まつむらひかるさんの創作絵本「てぃんがま」シリーズの第1弾です。CD、ことばの解説つき!


田中茉央・松村雪枝・横山晶子・Hara Alina(2023)『きばらぬ むにぐとぅ(洋服のおしゃべり)』(言語復興の港)
「てぃんがまシリーズ」第2弾。ゆきちゃんは、いつもお出かけの時に、鏡とお喋りします。 「はがによー、はがによー、うどぅるくつ くみゃー ゆくゎよ」(鏡よ鏡、どの靴にしたらいいのかな?)上平川方言(ひょーむに)・日本語・英語の3言語絵本です。

小島光貴・松村雪枝・横山晶子・Hara Alina(2023)『はちに ういたぬ ぶっそーげ(鉢植えのハイビスカス)』(言語復興の港)

「てぃんがまシリーズ」第3弾。教室の窓辺に、はち植えのハイビスカスがあります。赤く綺麗に咲くお花のそばで、一枚の葉っぱが役目を終えようとしていました。「なま、さいごぬ しぐとぅ しゅーぬ とぅくるどやー」(今、さいごのお仕事を しているところなのよ) 上平川方言(ひょーむに)・日本語・英語の3言語絵本です

沖縄

沖縄本島

さどやん『うちなーじゃんけん』
さどやんさんの、ウチナーグチ紙芝居絵本シリーズです。紙芝居でも絵本でも使える形が嬉しい。楽しみながらウチナーグチと沖縄の風物が学べます。他にも『うちなーいちむんクイズ』『うちなーまーさむんクイズ』など多数!

しろませいゆう(2017)『まんぐーすぬ プーヒーヤー』(沖縄タイムス)
子ども新聞「ワラビー」で連載中の企画から生まれた絵本

多良間島

野原正子,山本史,下地賀代子(2021)『カンナマルクールクの神 (みる・よむ・きく 南の島ことば絵本—多良間島—) 』(ひつじ書房)
多良間島に生まれた絶世の美少女カンナマルクールクの数奇な人生を描いた、多良間島に古くから伝わる昔話。多良間語の朗読音声とことばの解説、英語訳付き。

竹富島

内盛スミ, 山本史, 中川奈津子(2021)『星砂の話 (みる・よむ・きく 南の島ことば絵本—竹富島—)』(ひつじ書房)
竹富島の真っ白な美しい浜には、星の形をした砂が落ちている。この星砂がなぜ竹富にあるのか、またこれにまつわる儀式をなぜおこなっているのか。竹富島の伝説の絵本。竹富ことばの朗読音声とことばの解説、英語訳付き。

与那国島

與那覇悦子 (著), 山本史 (著), 山田真寛 (著)『ディラブディ (みる・よむ・きく 南の島ことば絵本—与那国島—) 』(ひつじ書房)
おなかをすかせた子どもたちのために、ディラブディは浜に魚を採りに行きました。突いた魚を数えると、なんと360匹! 与那国語の楽しいリズムで読める、愉快な絵本。与那国語の朗読音声とことばの解説、英語訳付き。

#言語学な人々 #Advent Calendar 2024


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