ありがとうの返し方 "Gracias a ti"

店に入って、アボガドをカウンターに置いて値段を聞く。

お金を払って商品を受け取ってお礼を伝える。

「gracias」ありがとう。

「a ti」あなたにね、と返事が返ってくる。


カフェで遅い昼ご飯を食べる。
スープとたっぷりの野菜と少しのお肉。
agua(水)と呼ばれる、その時々のフルーツやお米を使った飲み物がなみなみと注がれたピッチャー。

ご自由にどうぞのトルティーヤ。

お店を出るときに「gracias」と声をかける。
“たっぷりの優しくておいしいご飯をありがとう”
「a ti」と背中に声がかかる。To you. あなたにね。


何年も前にスペイン語の授業をとったとき、Graciasに対して返す言葉は De nadaと教わった。

De Nada なにもしていないわ。なんてことはないわ。とても謙虚な返しだと思った。

(調べてみると、日本語の「どういたしまして」も、「なにもしていませんよ」と、ありがとうを穏やかに打ち消す言葉らしい)


ここでは、あなたにありがとう、と返す。


アパートの管理人さんに相談事をする。
迷子になって人に道をきく。

Graciasと伝えると、A tiと返ってくる。

あなたこそ(それを買ってくれてありがとう)
あなたこそ(うちのみせで食べてくれてありがとう)
あなたこそ(住んでくれてありがとう)
あなたこそ(私に聞いてくれてありがとう)

A tiの後の後に残る静かな余韻、
括弧の中に何が含まれているのかを
不思議な気持ちで想像するけれど、
もしかしたら、ただ「あなたにありがとう」なのかもしれない。

自分に向けられるありがとうの返しを
A tiと変えてからそう考えるようになった。

あ・てぃ 

さりげなく添えられる2音の言葉が
日々繰り返され、繰り返す度に、
優しい気持ちになることに気づく。

ありがとう。
あなたにね。

ありがとう。
あなたにね。


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