
【奄美大島で視覚障がい者の母と広告制作会社をやりながら暮らす話】⑤同行援護というサービス
前回はこちら。
前回は、加計呂麻島から奄美大島に引っ越してきてよかったと思う理由についてお話しました。
前回では触れられなかったのですが、その中でも特に大きな理由、現在、母がお願いしている同行援護についてのお話をしていきたいと思います。
同行援護とは
同行援護は障害者総合支援法に基づき、視覚障害者等の方々の外出する際、同行援護従業者が同行し、移動に必要な情報の提供や移動の援護、その他に外出のとき必要となる援助を行う居宅系サービスです。
本サービスの対象者は、視覚障害のある方々を対象としており、外出先での情報提供・代読・代筆などの支援、身体的な介助の支援が必要な場合はこれらの支援も行います。
つまり、視覚障がい者の方が外出する際に同行してくださる方をお願いできるサービスです。
所得と障害の程度によりますが、基準に当てはまれば月に何時間など人によって決まりがありますが無料でお願いできることも多いようです。
母も知らなかった同行援護というサービス
実は母も私も、奄美大島に引っ越すまで、この同行援護というサービスを知りませんでした。
母は、東京時代は、見えている時から住んでいた場所にいて、症状がそれほど進行していなかったので、見えにくいながらも一人で行動できるところも多かったというのがまずあります。
あと、母からすれば父、私からすれば祖父の介護を母もしていたので外に出る機会があまりなかったこと、母の姉、私からしたら叔母と一緒に仕事をしていたので、見えにくくて困っている部分は叔母がフォローしてくれていたのもありました。
私が同行援護というサービスを知ったのは、母が島に来ることが決まった1年ほど前。視覚障がいを持つ知人に教えていただいて、このサービスを知りました。
なぜ、視覚障がい者の外出の際に同行援護が必要なのか
なぜ、外出の際に同行者が必要なのか、見えている人間には、見えていない、見えにくい人間の不便さがわかりにくいものです。
ここで、母の例をあげて、見えにくい人間の外出時の不便さを説明しますね。
・パッケージが同じ形のものの味の違いがわからない
例えばカップラーメンなど、拡大鏡を使ってよく目を凝らしてみないと、しょうゆ味なのかカレー味なのかシーフードなのかがよくわかりません。
今日、これが食べたい、と思って購入したものが食べたいものと味が違っていた、って地味にショックじゃないですか?
命に関わるものではないですが、私は特に食いしん坊なので、凹むと思います。
・賞味期限がわからない
賞味期限の記載は大抵小さい文字でされているもの。まず、いつまでに食べればいいのかがわからないです。
・調理法がわからない
冷凍食品などレンジ調理なのか、フライパン調理なのか、何分温めればいいのかがわかりません。
・文字を書くことができない
外出時に文字を書く必要性が出てきたとき、例えば、レストランでの待ち時間の時に名前を記入するなどがかなり難しいです。
・メニューが読めない
レストランに入った時、メニューがわかりません。拡大鏡を使えばわかるところもあるようですが、かなり時間がかかります。
・券売機が使えない
ラーメン店など券売機システムのお店だとボタンに書いてある文字が小さいもの。後ろに人が並んでいることも多いので、うろたえていると人に迷惑がかかりそうで、母はしばらくラーメンを外で食べるのを避けていました。
・信号が変わったかどうかがわからない
母の場合は、周りに人がいたら変わったんだな、と思って判断していたようです。
・周囲と色が似ている看板や車がわからない
日が暮れてきたころに見るタクシーの青い看板、暗くなってきた時に来る黒い車がよくわからないそうです。
など、見えている人間からは頭ではわかるものの、実際に身近になってみないと想像がつかない日常的な不便があるということを、私は母との暮らしの中で、実感しているところです。
そういった、視覚障がいのある方の外出上での不便さを解消するのが、同行援護です。
同行援護を受けやすい点も奄美大島に引っ越してきてよかった理由のひとつ
同行援護は同行援護従業者養成研修を受けた方ができるもので、自治体の健康・障害関連の部署から社会福祉協議会などにつないでもらい、そこからサービスを受ける資格があるかなどの審査を経て、利用できるようになります。
加計呂麻島から奄美大島に引っ越してきてよかったと思っている理由に、やはり加計呂麻島より奄美大島のほうが人口が多い分、同行援護のサービスが充実している、という理由もありました。
実際、現在の母は月に何回か同行援護のサービスを利用しています。母には私以外に島在住の知人がいません。

ファストフードのメニューも読みにくいそう。
同行援護を担当してくださる方に島のあれこれを教えてもらいながら、病院に行ったり、歯医者に行ったり、買い物をしたり、ランチをするのがとても楽しいようです。
同行援護というサービスについてお話をしていたらわりと文字数が長く……。
次回は、中途視覚障がいという言葉についてお話したいと思います。
こちらの記事はstand.fmにて、私自身が読み上げているものとAI音声読み上げ機能で作成した音声を配信しています。
母と暮らすようになって、音声読み上げ機能を使うことも増えたので、こういった機能はぜひ進化してほしいところ!
私自身の声での番組はこちら。
AI音声読み上げ機能での番組はこちら。
【今日のつぶやき】
考えてみればそりゃそうだよね、という目の見える人間にとっては当たり前のことが難しくなるのが視覚に障がいを持つということなんだな、と私も母との暮らしで学んでいます。最近はAI読み上げサービスも含め、いろんな機能が充実してきているのでそちらにも期待したいところです。
Header photo by nobuaki
いいなと思ったら応援しよう!
