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海部公子という生き方

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洋画家、陶芸家であり、「ゴッホの手紙」などの翻訳でも知られる硲伊之助。その弟子であり、硲の精神を受け継ぐ海部公子さんの人生をたどります。
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2022年4月の記事一覧

#16 海部公子という生き方

#16 海部公子という生き方

「家を手放して先生の作品に変えたい」

 その頃の生活は作ることが生活の中心でした。清水喜久男さん(石川県加賀市大聖寺山田町)が窯から上がった物を持って行くと買い取ってくれました。清水さんはある日訪ねてみえて、「作品がほしい」と。当時は中日新聞が熱心にここのことを記事にしてくれていたので、それを読んで興味を持ってくれたようです。大同工業のサラリーマンで、退職後することがなくて退屈してたらしいの。そ

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#15 海部公子という生き方

#15 海部公子という生き方

ここでずっと一緒にやろう

 ここ(石川県加賀市吸坂町)での暮らしを語る上で、HさんとYさんという二人の女性の存在は欠かせません。ここでずっと一緒にやろうと思っていたんだもの。彼女たちのことは私の歴史の中で重いことなのよね。どうして彼女たちとやっていこうと思ったのか、自分でも不思議なんだけど。

 Hさんは軽井沢出身で、父親が硲先生と深い関係がありました。父親は木こりの生活でした。先生が描いた父親

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#14 海部公子という生き方

#14 海部公子という生き方

一刻一刻が真剣勝負

 ヨーロッパに行く前から、こちらの家(山中温泉我谷村から移築した古民家)は住める状態ではありました。でも二階に寝泊まりしていて、昭和38年の豪雪の時かな、まだ建具が入ってなくてむしろを垂らしたりなんかしてて、そしたら掛け布団のすそに雪が積もってたりして(笑)。屋根から出入りしたんだもの、2メートル以上積もっちゃって。外にも出られなくて。だから3時、4時起きで、3~4時間は雪と

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