医者である前におばさんでありたい。
娘さんは涙をこすりながら、何かを吹っ切るように笑った。
「お母さん、がんになる前に先生に会いたかったって。」
数年前に私が担当した患者さんの娘さんが会いにきてくれた。患者さんが亡くなって2週間ほど経った、暑い夏の日だった。
「先生~会いに来たよ。」
当時の患者さんの顔が浮かぶ。
娘さんは続けた。
「でもね、『先生に会えたから病気も悪くない』とも言ってた。ありがとうね。」
私は恐縮と感謝を伝えたが、同時に違和感をおぼえた。医師になって15年、微力ながらがん治療を行