夏のくいだおれ
私が10代の頃、8月31日は夏休み最終日で夏が終わる日だった。9月1日は秋の始まりで新学期のスタート日だったと思う。今は8月下旬から新学期は始まるし、9月になっても全然涼しくならず夏のままだ。台風は来るくせに。
それでもスーパーは9月になるとカレールーの棚にシチューのルーが幅を利かせてくるし、雑貨屋には金木犀の香りのグッズが並ぶ。今が秋なのか夏の延長戦なのかよくわらないが、もし、既に秋なら今年の夏、私は何をしただろうか。
8月は「呉冷麺と広島つけ麺をたべたい」というだけの理由で仕事終わりに広島へ行った。事前にチケットやホテルも手配をしており、気まぐれで行ったわけではなかったが、仕事終わりに新幹線に飛び乗るときの開放感がとんでもなく良かった。夕方の新幹線は四方八方からビールを開ける音が聞こえてくる。下戸な私は少し悔しい。
広島の滞在時間は24時間ほどの間に冷麺→居酒屋→つけ麺→つけ麺というこれでもかと食べ、お土産としても購入した。
1日目の夜は大学の同期の誕生日を祝うという名目ながら、私がたべたい呉冷麺居酒屋へ。呉冷麺もさることながら、「がんす」というさつま揚げのイトコみたいな食べ物が美味しかった。
広島2日目はひとりでつけ麺やバッケンモーツァルトでお茶をしつつ、本通りを何往復もして色々なお店に立ち寄った。中でもふらっと入った卸のうつわやさんは全国各地のうつわが集まっているようでとにかく品揃えが豊富。食べることから派生してうつわを集めるのが好きな私は当然テンションがあがり、かなりの時間物色をした。帰りの新幹線まで5時間くらいあるのに、かさばる丼とお皿を入れたリュックはしっかり肩にダメージをくらわした。
これ以上は動きたくない、と判断し早めに広島駅へ。早めの夕食と称し、ばくだんやを食べた。お土産では見たことがない気がするごまだれでのつけ麺は美味しかった。すべての欲望を満たし、後は帰るだけ。
だったのだが、新幹線がトラブルで運転再開まで車内で結果的に80分ほど待つことになった。周りには乗換の兼ね合いもあるようで、文句を言っている人もいた。私は車内アナウンスを聞きながら「ばくだんや普通サイズ、もしくはあと1食いけたかもな〜」と考えていた。そんな後悔も束の間。暴飲暴食後の眠気に襲われ、あっという間に時間は過ぎていた。これが本当のくいだおれだなとしょうもないことを思っていたら、新幹線は動き出した。