ネコ短歌

増やしたり減らしたりしてます。


神の手で片道切符切られた如く川辺をかける欠けた片耳

ここ居てと甘噛みしてから遠ざかり 春の祭りの子供の身ぶり

それじゃあと鞘へ帰った鉤爪がもうこの傷を忘れてしまった

ひとつ鳴きそろり立ち入る陽だまりは空しつらえし君の寝室

猫にしかわからん差異の査定があって段ボールにはすぐ入るのか

靴箱やランチョンマットやバスタオル あらゆるものが寝具だった

お前のさアクスタなんて作ったらそれだけ残った朝がさまよう

「生まれ変わるんなら猫だな」って人また居たけれどたまどう思う

余らせたカリカリ睨むたまちゃんの水晶体は鏡の扉

はかない泡を割れそうにして猫の目は部屋の明かりを水溜りにする

跳ねたさき花瓶をかわし尾でくるみ かかとにしまう正午の動線

猫共のキュートに対する免疫は形成不能と考えられる

この赤い座布団は猫のため夢をこぼさぬくぼみをつくる

われわれの悩みのふちを撫でてから渦を描いて夢舐める猫

隣から寝息静かに闇夜削れば 胸の迷路を抜ける涼風

三毛猫が前脚こすると甘い音の流れる夢をまた見たいけど

猫の毛につかまりたがる空風のつかれに同情しながら眠り

足あとを残す水気も消す風も 猫の影には触れられんそう

ひとのいう余命をこえてタワーまで とびのれ白い骨と皮の子

花まみれ 散った骸が夕雲へ 我々のきみ残されたまま

猫愛でる人みな可愛い それよりも猫は可愛いこの曼荼羅図

金木犀そよぐ庭から猫が鳴く 透かしブロック覗けば廃屋

どの猫に触れても浮かぶ飼い猫や 飼い猫に触れ想う亡き猫

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