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22世紀を「夢」からデザインする

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論の授業の第2回(4月19日)レポートをまとめました。

今回は、パーソンズ美術大学を修了され、デザインを通じた研究・実践・教育に従事されている岩渕 正樹さんにご講演いただきました。

プロフィール

東京大学工学部、同大学院学際情報学府修了後、IBMDesignでの社会人経験を経て、2018年より渡米、2020年5月にパーソンズ美術大学修了。現在はNYを拠点に、Transition Design等の社会規模の文化・ビジョンのデザインに向けた学際的な研究・論文発表(Pivot Conf., 2020)、「STEM」教育領域のスタートアップTeknikioにてデザインディレクター、東北大学工学部客員准教授など、デザインを通じた研究から実践まで幅広い領域において活躍。

興味深いと感じた活動

[Designship2020] リアリティをデザインせよ - 2020年代のスペキュラティヴ・デザインのP4に記載されている「研究者・実践者・教育者」という活動のラベルが岩渕さんのご活躍されていらっしゃる場です。

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「実践者」

Breathing Chair
岩渕さんの作品の中で、Breathing Chair(徐々に膨らんできて人間が長時間座れないようになる椅子)が印象に残っています。
「人間中心」ではなく「プロダクト中心」に人間の行動変容を促す点が興味深いアプローチだと感じました。

「アンチ・ユーザー中心設計」をテーマにした、「オブジェクト中心設計」という考え方のもと、モノが人をデザインする、という考え方ですね。長く座っていると、徐々に椅子が膨らんできて、立つしかなくなってしまう。人間に判断を任せるのではなく、「生きている椅子」というモノによって人が正しく導かれるという考え方です。
ユーザー中心設計の”逆”をゆく。スペキュラティブデザインとその次:デザイナー・岩渕正樹さん より引用

Design Director @Teknikio
岩渕さんは「STEM」教育の領域のスタートアップ「Teknikio」のデザインディレクターをされていらっしゃいます。

いわゆる「STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)」教育に触れだすタイミングではメカなどの男の子が好むようなものが多いので、ジェンダーニュートラルなものづくりを小中学生ができるようにしていくスタートアップです。

Tekniverseでは強い想い【「STEM」がジェンダーニュートラルであるべき】の理念が明確であり、プロダクト開発におけるピボットでもビジョンがあることで、ビジョンに向かうよう修正していくアプローチをしています。

「研究者・教育者」

Social Dreaming
Social Dreamingは人類の「夢」を一緒に叶えていくアプローチです。他の人と「夢」を共有する、心理学的アプローチも掛け合わせながら「夢」の実現を目指します。

21世紀にこそ「夢」が必要であり、今や人類の「夢」は「希望」に成り下がってしまったのでは?と言われています。現在見えている課題や利益のみに目を向けていくのではなく、個人のビジョン・勇気・野望やより良い未来に焦点をあて、新しい未来にとどまらずに文化を創っていこうとするアプローチです。

Through Design
前述した「夢」を可能にするのがデザインです。延長線上にあるものを描くのは単なるAspectであり夢を可能にするアプローチではなく、スペキュラティヴ・デザインにあるように「人間がどうなっているか」の未来を見据えて考える事が「夢」を叶えるアプローチとなります。

参考:スペキュラティヴ・デザインについて
問題を解決するのではなく、未来に意識を向けて問題提起を行うもの

スペキュラティヴ・デザインの事例
Shenu: Hydrolemic System 
「荒廃した未来の世界における水筒」がテーマとなっています。人工臓器「Shenu」は人工臓器を人体に取り入れ、生命維持に必要な最低限のキャンディーを摂取することで1日32ミリリットルの水分で生活できるというものです。100年以上先の荒廃した地球を想定しており、安全に飲める水の量が限られた世界で人間が生き残るためのアイデアとして考えられたものです。

「夢」を実現するために -「共創」から「共脳」へ-
たくさんのアイデアを出すのではなく、国籍や年齢、専門性(経済学・心理学・人類学など)を横断する「超」学際的な専門家の集団の全員で時間をかけて結晶化させていきます。

ドリーマーが世界をつくる -「夢」をどう現実的に落とすのか?-
UberのPrincipal designerのプレゼンテーション動画においては、ドライバーの雇用への貢献、Uber Eats、Uber Elevateまで幅広く触れられており、Uberによる「移動」のみでなく、は町づくりの視点から考えています。

「夢」の町づくりから事業をデザインし、事業を通じて「夢」の種まきをしていると言える事例です。

スペキュラティヴ・デザインとアートの違い
スペキュラティヴ・デザインは最後には人間に戻ってくる(未来の人間が描かれる、プロダクトに結びつく)ものと捉えていて、ファインアート(特に美術館等で展示すること)の先に目的があり、特別なスキルがあるアートではなく、ビジネスの延長にあるものと捉えていらっしゃるとの事でした。

感じたこと

「夢」を起点にあり得る未来を想像してデザインするというアプローチに心が踊りました。予測可能な延長線の未来すらもない不確実性の高い世界において、今一度、ライト兄弟が描いた「人間が空を飛ぶ」というような実現できなさそうな「夢」を描く事が社会をより面白く、非連続的な前進へと繋げていくのではないでしょうか。

また、企業と個人のあり方が多様化し、一元的な評価や価値観でその善し悪しを測れなくなっている世界においては一層「夢」が重要になると感じました。企業の評価指標や個人のライフプラン等の何らかの評価や価値観によって善良が決まるのではなくなる事で、企業や個人自体が主体的に「夢」を描く事が重要になり、その「夢」の総量が社会の現実になると考えています。

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