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●●さんへ 東京・上野 黒田記念館    《湖畔》 黒田清輝作 2通目


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前回は2階の特別室の前まで来ましたね、これまでは黒田記念館の建物自体を話してきましたが、これからはあなたの好きな、日本近代洋画の父、と呼ばれている黒田清輝の代表作を見て行きたいと思っています。



教科書に掲載! 《湖畔》

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《湖畔》 黒田清輝 1897年 重要文化財 東京国立博物館蔵

部屋に入ると左側の壁に、今日の目的の《湖畔》がありました。モデルは、後に黒田清輝の妻になる照子。彼女によると、作品完成のこの年、一緒に箱根に避暑にきて、1ヶ月ほどかけてこの作品を描いたそうです。

作者は日本の、夏の高原の湿った空気を描きたかったと思います。手前の左側に、浴衣を着て、うちわを持った女性を配置し、日本の夏ということを物語っています。湖の水平線をモデルの目の高さに置いて、視線を遠くの木々から湖面へと自然に誘導。湖面は淡い色彩で描かれ、日本ならではの夏の暑さの中、気持ち良い、涼しい風が洗いたてのコットンのゆかたの胸元へと吹いてくるのを感じられます。改めて見て、油絵というより、日本画の印象があります。日本ならではの洋画ですね。


謎多き大作 《智・感・情》

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《智・感・情》黒田清輝作 1899年 重要文化財 東京国立博物館蔵

部屋の正面にはこの3枚組の絵が置かれています。実はこの作品が一番僕には気に入りました、それなので最後にまたゆっくりと見に来たいと思いますので、次の便りにまとめて載せたいと思っています。

黒田清輝、日本再発見の作品 《舞妓》

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《舞妓》黒田清輝作 1893年 重要文化財 東京国立博物館蔵

部屋の右側の壁に2つ作品があるのですが、向かって左側にこの《舞妓》が、右側に次に紹介する《読書》が飾られています。

これは、黒田清輝が10年間のフランス留学から帰国後、最初に描いた作品だとされています。モデルの左側には窓が開きはなたれ、鴨川の流れが見えます。10年間もフランスに行って、帰って来てすぐ京都に行ったら、それはそれは興味深い事ばかりですよね。

僕の特に好みなのが、舞妓の人物表現です。スナップショットみたいに描かれています。モデルの舞妓は当時、縄手にあった小野亭の舞妓「小ゑん」とされているらしいのですが、彼女の人間性や感情などがうまく描かれていて、典型的な祇園の舞妓の絵とは全く違いますよね。人形のように可愛いという表現ではなく、生身の人間として美しく描かれています。それから、この作品には、舞妓という職業についている彼女達への偏見といったものが何もない。明治の頃ですからそんなことがあってもおかしくないと思うのですが、本当に人間性が素直に表現されていると思います。

それから、構図の点では。主人公の右側に何かを伝えにきた少女の全身を描かず、トリミングしたことで、向かって右側の画面の外から、入って来たという動きが感じられ、臨場感がアップしています。

色彩的にも、舞妓の半襟、髪飾りなどのポイントに赤が使われていますが、その補色関係にある緑系の色を、彼女が座る座布団に使用しています。

フランス画壇デビュー作 《読書》

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《読書》黒田清輝作 1891年 東京国立博物館蔵

特別室、向かって右側の壁、先ほどの《舞妓》の隣に展示してあります。

この作品は1891年、ソシエテ・デ・ザルティスト・フランセというサロンに入選したらしいです、これこそ本当に知らんけど、という情報ですね。

部屋の中で。窓のブラインドから差し込む光の中で女性が読書をしています。柔らかな印象を与えているのは、そのモデルの読書への集中さによる可愛さですかね? 赤いシャツは黒田がわざわざパリから取り寄せて作らせたものらしいですよ。

ということで、このモデルとなったマリア・ビヨーという女性ですが、この女性とはモデル以上の存在だという言い方を、この黒田記念館の作品紹介でしてあるんですが、どういうことでしょうか?  

というのもフランス時代の友人が彼女のことをモデル以上の付き合いだとという証言をしているみたいです。これこそ本当に知らんけど、ですね。

黒田記念室

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2階の特別室の反対側に大きな部屋があり、黒田記念室と名付けられています、今日は花の作品が中央にありました。

入り口の扉の上の飾りを見ればわかるように、こちらが本当に大切な部屋とされていたようですね。早速入って見ましょう。

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こんな感じで作品が並べられています。

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部屋の左すみにおいてありました。黒田清輝が使用していたイーゼルみたいです。

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天井に注目すると、先ほど訪れた部屋にはなかった装飾が、壁や天井にあります。この部屋は大切だったんですね。

素敵な小部屋 資料室

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黒田記念室の脇には、こんな素敵な部屋がありました。中にあるソファで昼寝をしたい欲望を抑えるのがやっとです。

というわけで、また特別室に戻って《智・感・情》を見る前に、ここには上島珈琲店が入っているのでお茶でもしましようか?

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お茶でもしたら、また次の投稿で《智・感・情》を見たいと思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました。



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