小杉湯行ってきました。銭湯で天に召される…?【後編】
銭湯で初めての体感…
熱く火照り、額から汗が出る。視界がぼやけて、いくつか考え事を思い浮かべる。
数分後には、水風呂に肩を沈める。
銭湯をなめていた、のかもしれない。
小杉湯は、僕の銭湯のイメージを超えてきた。
まさか、銭湯で天に召されるほどの快感を知ることになるなんて。
まだ寒さが残る3月だっていうのに、水風呂がこんなに気持ち良く感じられるなんて。
狭いからこそ生まれるコミュニケーション?
脱衣所のロッカーにも当然のことかのように、イラストが書かれている。
バスタオルはIKEUCHI ORGANICという愛媛県は今治で作られたもの。大きくてふかふかだ。
レンタルのタオルは一枚一枚、小杉湯のスタッフさんが洗濯している。
ふむ、こんなに高価そうなタオルを自分たちで洗っているとなると、大変な作業なんだろうな、と銭湯の価格設定にも頷ける。460円は高いと思えるかもしれないが、ここまでの全てのこだわりを見ると、払うのには一切躊躇しない。
裸になり、手ぶらで浴室へと向かう。入口を開け、右手にあるケロリンの桶と椅子を持って、カラン(体を洗うところ)へ。カランのところには共用のシャンプー、コンディショナー、ボディーソープ、洗顔用の泡、そして固形石鹸があった。
浴室は思っていたよりも狭く、カランの数もイメージより少なかった。僕がいっている鳥取の銭湯は、種類こそ少ないが、大きさは小杉湯の1.5倍はある。
実際の小杉湯はこんな感じ(図解)
湯槽もだいたい5人が一気に入れるかどうか、といったところ。別の浴槽から誰かが上がれば、お互いを気にしつつ、あいた浴槽に向かう人あり。44℃の熱湯から上がって冷水風呂に向かうものあり。
僕が水風呂から熱湯に向かったときも、おじさんと会釈を交わし、交代する形で入る。
はたから見ていれば、これはコミュニケーションには見えないのだろうけど、この微妙な空気で相手を察する、というのは日本人独特のコミュニケーション方法とも言えるかもしれない。
44℃の湯で茹でられた僕は、そんなことを考えていた。
お湯に目移りするなんて
小杉湯に来て驚いたのは、お湯の種類の多さだ。図解にもある通り、4種類ものお風呂が楽しめる。
40℃と優しめなミルク風呂。
日替わりで違う種類のお湯が楽しめる「熱湯」。
10つのジェットで全身をほぐせる「ジェットバス」。
そして、湯船じゃないけど小杉湯の目玉、水風呂。
と、選びたい放題で目移りしてしまう。
その中でも群を抜いていたのは、水風呂と湯船に交互に浸かる「交互浴」だ。
はじめ、間違えて水風呂に入ったときは、信じられなかった。しかし、一度お湯に浸かってから水風呂に戻ると、
(めっちゃ気持ちいい…)
喉元に少しずつヒンヤリとした感覚が。
(こんなの初めてなんだが…)
熱い湯に入ってぼーっとしていたときとは反対に、頭が一気に冴える感じがした。
交互浴を2、3度繰り返す頃には、水の冷たさにも慣れて、交互浴の虜になっていた。ぜひ小杉湯に行く機会があれば(安全な範囲で)試して見てほしい。オススメだ。
さらに小杉湯では、コーヒー風呂、ビール風呂、すだち風呂、など、様々なイベント風呂を開催している。次のイベントにも注目だ。小杉湯から目が話せない。
(ビール風呂行きたかった感…)
これが東京の銭湯のスダンダードなのか、と思い、先の『銭湯図解』をみると…
・東京の銭湯にはサウナがあるのがスタンダード
・露天風呂も多い
ということらしい。
銭湯図解によれば、銭湯と食事処が一緒になったところもあるみたいで、そちらにも足を運んでみたい。
入ってから、休憩して、帰るまでが銭湯…
上がり湯をして、脱衣所に向かう。待ちに待ったIKEUCHI ORGANICのバスタオル。
(ふかふかであったかい…こんなタオルあるのか…)
これを40円でレンタルしてるなんて。しかも全部スタッフさんが洗濯してるなんて。小杉湯の資金繰りは大丈夫なのだろうか、と少し心配になる。
脱衣所にもアメニティがしっかり置いてある。(ボディークリームとか綿棒とか)
「大きな手間と多くのお金がかかっているんだろう」
小杉湯のお客さんファーストの姿勢が伝わってきて感動する。小杉湯はイラストや、アメニティなど全ての面でお客さんを楽しませられるコンテンツにするのがうまいな、と思った。そのお客さんはその姿勢に惹かれて、お金を払いたくなる。このコンテンツかの要素は地方観光地でも取り入れられる要素が多いと感じた。
着替えを終え、待合室に戻る。バスタオルを返しに番台へ行き、チャキチャキなお姉さんと言葉を交わす。
フルーツオレを買い、お姉さんのいう通り、待合室で「ゆっくり」とする。
お風呂から上がった人は、それぞれに、おもいおもいの飲み物を手に、マンガを読む人、ぼーっとする人、すぐ帰る人、note用に感想をメモする人。その様相は全くといっていいほど違うものの、それぞれが自分の「ゆっくり」を探しにきたのだろう。そこは同じなのだ。
小杉湯は、地域に根ざし、誰が来ても迎え入れてくれる。どんな暮らしの人もくるだけで肯定されるような、暖かさ、多様性と寛容性のある場所だ。
高いけど、本当は安い
「460円。高い…」
小杉湯の入浴料だ。初めて聞いたときはそう思った。
(東京の入浴料金は460円統一)
「鳥取なら200円あれば入れるぞ。なんてぼったくりだ」と。
その考えは、湯に浸かることで、汗となって額に表れ(噴出し、水蒸気と一緒に天井に向かって散っていき、)湯を出るときには、上がり湯でさっぱりと洗いながされていた。
アメニティは値段にかかわらず品質の高いものを使う。バスタオルはスタッフが洗濯。そこら中に銭湯に関するイラストがある。番頭さんの応対がいい。ゆっくり休める場所がある。
「これは460円払う価値あるなぁ。」
帰る頃にはそう思っていた。小杉湯。なんて恐ろしい。
「帰りたくないなぁ」
名残惜しいものの、そろそろ暗くなるので家路に着く。
こんなにリラックスできたのは、いつぶりだろうか。心も身体もほぐされた。
「東京に来るときは、また来たいなぁ」
そう心で呟きながら、小杉湯をあとにした。
皆さんも高円寺周辺に行くことがあれば、ぜひ一度お立ち寄りを…
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