「デザインとは何か」
真実に基づき、美を携えながら、善を問う
デザインとは「創造的倫理学」である
今回は、東京藝術大学 美術学部デザイン科の藤崎圭一郎教授の講演を振り返る。
冒頭の問いと答えは、藤崎先生による「真善美」の概念。何かをデザインする場合、社会と自身の倫理規範と照らし合わせて、アウトプットをする。
大量破壊兵器や環境汚染を促進するようなモノ・コトは、その目的が効率的に達成できようとも、形が美しくあっても、そもそも作り出すべきではないとのこと。
講演の冒頭、AK-47というライフルの画像がスライドに登場した。
ちょうどロシアがウクライナに侵攻したタイミングもあり、兵器の画像に一瞬会場に緊張感が走った。
AK-47は、過酷な環境でも使用できる耐久性を持ち、世に出て70年以上形を変えずに出回っている、武器としては優秀かつシンプルなつくりで、少年兵でも使えてしまう。
はたしてこれは、良いデザインと言えるのだろうか?それはなぜ?
ところで、この「善を問うケース」は、何も兵器に限ったことではなく、日々使うモノやサービスの中にも潜んでいる。
「スマホ脳」(アンディッシュ・ハンセン著 新潮新書)では、脳科学に基づき、SNSのイイネ機能や、エンドレススクロール機能が人間の脳を刺激し、依存しやすい仕組みになっていると言及している。ヒトの脳は、承認欲求や新しいものを追い求めるように、DNAに組み込まれてる。
街中を観察していると、いかにスマホを眺めている人が多いことか。電車に乗車している全員がスマホを見ている、ということも珍しくはない。
斬新さや、利益追求が先行し、新開発の機能が人間の行動をどう変えるか、というところまでは重要視していなかったと筆者は想像している。
最近になって、イイネ機能やエンドレススクロールに対する開発者の懺悔が吐露されたり、「前回閲覧からのアップデートはここまで」とエンドレススクロールを抑止する機能が追加されていたりする。
デザインしたものが人の行動に及ぼす影響をシュミレーションし、真善美に寄り添うことができるか、という観点は、常に気を付けたい。