探究力には格差が生じる?
高校生へのイノベーション教育と、そこから生まれたアイデアの事業創出を行っているイノベーションクラブ「i.club」の代表、小川悠氏のお話を伺った。
探究学習とは
昨今教育現場では、自らの興味関心や主体性をもとに、世の中に対して自ら問いを生み出し、その答えを模索していく、「探究型学習」が取り入れられている。そしてこの探究型学習は年々世の中でその重要性がクローズアップされるようになってきた。
そしてこれからは、この「探究力」に格差が生じていくだろう、というのが小川氏の考えていることであった。
探究力には体験を
探究力を育むアプローチは、社会学、科学、芸術など多方面からのアプローチで開発されているが、共通しているのは暗記や机上だけでの学問でなく、「体験をする=手と体と脳を動かす」ということがある。
実態を五感で感じる、いろいろな人と直にコミュニケーションを行ったり、自然や現象に直に接したり、実験をしたり、といったことだ。
探究格差とは
しかしながら、こういった体験をする機会を与えられ、できる環境と状況には子供ごとに差があり、それが探究力の格差につながっていく、ということである。それは、住んでいる場所や親の考え方が大きな影響を与えるのであろう。
小川氏は、子供に対して、まずは都会の子供たちを地方に連れていく、地方の子供たちには地元の価値を改めて認識してもらう、というアプローチをとっている。
一方で親世代にも何かできないだろうか、とも思う。そういったことを考えていたら、アート制作における探究的活動をビジネスに適応させる活動をしている人達がいることを知った。
アート思考という言葉のもと、概念的であった思考方法が、ワークショップや企業研修、経営大学院のプログラムへも適用されて、より実践レベルで社会実装が始まっている。
主催側の方に話を聞いたところ、世の中に、アートや探究の意味・意義をしってもらうには、世の中が求めていることにアプローチするのがよいと思っている、ビジネスという領域は常に新しい発想を求めており、そういった意味ではニーズがある大きな領域である、ということであった。
アートのアプローチがビジネスに生きるのであれば、それはそれで良いと思うが、ビジネスに生かす目的でアートや探究力を学ぼうとした人たちが、より深くそれらの意味を感じ取り、感化されて生き方自体をアップデートするということが起きるのではないだろうか。
具体的には、誰かから与えられたミッションではなく、自らビジョンを描いて行動し、既存の枠にとらわれずに仕事を創っていく、それが文化的にも経済的にも成り立つ状態にしていくことだ。なんだかとても、ワクワクする。
自然体験をしにいこう
明日からゴールデンウィーク、外出して自然を体験しに行くにはうってつけだ。時間を気にせず、その瞬間を楽しむことで大人も、自然から新たな発見ができ、探究心を育むことができる。
探究心を阻害する要因は、効率性とか生産性といった概念からくる、ちょっと先の未来を常に意識している「あせり」のような感覚なのではないだろうか。まずはそれを封印してみよう。つまりは、今を生きる、ということに本気になってみる、ということ。